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2016.02.16

(短評)ミュンヘン安全保障会議での尖閣諸島および北朝鮮・中国・米国関係についての議論

 毎年この季節にドイツのミュンヘンで「安全保障会議」(MSC)という民間主催の国際シンポジウムが開かれる。各国の閣僚級が出席することが多いが首相の場合もある。経済問題が主のスイス・ダボス会議のほうがより有名だが、MSCは安全保障に関する最高の意見交換の場である。かつては欧米とロシアの関係に関心が集まっていたが、最近は中国が注目されており、今年は「中国と国際秩序」について特別セッションが設けられた。中国からは全国人民代表大会(国会に相当する)外事委員会の傅瑩主任委員(元外務次官)が出席した。

 今年のMSC(第52回 2月13~14日)で特に注目されたのは次の3つの議論だ。
 第1は、南シナ海での中国の行動に関し、日本から出席した黄川田外務大臣政務官と傅瑩元外務次官との応酬である。報道では、黄川田政務官が「中国は口では平和を重視すると言いながら、南シナ海では軍事施設を違法に建設するなど、一方的に現状を変更している」との趣旨を述べ、これに対し、傅瑩元外務次官が「日本こそ尖閣諸島を国有化するなど一方的に現状を変更した。尖閣諸島は中国の領土であり、中国が苦境にあるときに盗み取られた」などと黄川田政務官に反撃し、黄川田政務官は「尖閣諸島は日本の固有の領土だ。解決すべき領有権の問題は存在しない。中国側が歴史の修正を試みていると考える」などと反論したと伝えられている。
 第2に、ロシアのメドベージェフ首相がロシアと西側は冷戦時代さながらの対立状況になっていると、シリア問題についての米欧の対応を批判し、これに対しケリー米国務長官が反論した。この議論はMSCとして伝統的な東西対立の議論であった。
 第3に、北朝鮮に対する中国の働きかけについて、コーカー米上院外交委員長は「中国は何の役割も果たしていない」などと中国を厳しく非難したのに対し、傅瑩元外務次官はそれは事実でないと反論した。

 以上3つの議論は、言葉の激しさはともかく、内容的には特に目新しいものではないが、今後のMSCについては注意すべきことがある。
 第1に、中国は今後も大きな話題となるだろう。日本からどのような議論を展開するか予めよく検討しておかなければならない。
 今年の黄川田政務官の発言は事前の準備をうかがわせる面もあったが、今後は、国際司法裁判所での解決を中国は拒否しているが、日本は受けて立つ用意があることを主張すべきだ。これは各国に理解されやすい議論だ。中国が今後も繰り返し主張するであろう「尖閣諸島は日清戦争中に日本が盗取した」との議論は誤りだが、各国からすれば分かりやすい。
 第2に、北朝鮮問題についての傅瑩元外務次官の、「米国は自国の対北朝鮮政策を中国に押し付けている。われわれは米国の役割を演じることはできない。北朝鮮の要求は明らかだ。なぜ米国は北朝鮮に対し、彼らを侵略することはないと言えないのか。米国と北朝鮮が朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換する必要がある。中国は喜んで交渉を手助けする」という趣旨の説明は、分かりやすく、明快に問題の本質を論じている。今後の対北朝鮮政策において米国が考慮すべきことだ。

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