平和外交研究所

2021年4月

2021.04.30

中国における言論統制はますます強まる

 中国における言論の統制はますます強化されている。4月25日に米国で開催されたアカデミー賞の授賞式で、中国出身のクロエ・ジャオ監督が、非白人女性としてもアジア系女性としても初となる監督賞を受賞し、彼女の映画「ノマドランド(Nomadland)」が作品賞を獲得した。

 ところが、中国の主要メディアは26日、このことを報道せず、また「ノマドランド」は上映中止になった。ジャオ氏が2013年の米国でのインタビューで、10代に過ごした「中国には至る所にうそがある。逃げられないと思った。家族や自分の出自について反抗的になり、突然、英国に行って学んで自分を見つめ直した」と発言したことが今年の3月問題になったからであるとみられている。

 ジャオ氏が2月末、アカデミー賞の前哨戦である米ゴールデングローブ賞の作品賞と監督賞を受賞した際は、中国共産党の機関紙、人民日報は「女性監督として歴史上2人目」と速報し、中国版ツイッターの微博では「素晴らしい作品」「自由こそ優秀な創作の源泉だ」などと大絶賛だった。1か月そこそこの間にジャオ氏の評価が180度変わったのである。この結果、微博で数千万回のアクセスがあったノマドランドの中国語名「無依之地」にハッシュタグがついたページは開けなくなったという。中国の党・政府は、ジャオ氏に関して好意的に報道することを(事実上)禁止したとみられている。

 中国人の映画監督がアカデミー賞を受賞したことを中国人は誇りに思うはずである。にもかかわらず、その監督がかつて中国を批判したという理由で関連報道を禁止すると、中国のイメージは悪化するのではないか。

 世界保健機関(WHO)は3月30日、新型コロナウイルスの発生源などの解明に向けた調査チームの報告書を公表した。「ウイルスが中国、武漢の研究所から流出した可能性は極めて低い」と結論づけており、中国は「科学的な精神を称賛する」と高く評価した。
 一方、日本やアメリカなど14か国の政府は共同声明を出し、「国際的な専門家による調査が大幅に遅れ、完全なデータやサンプルにアクセスできなかったことに懸念を表明する」とした。
 また、ホワイトハウスのサキ報道官はさらに、「全体像の一部しか捉えておらず不完全だ」としたうえで、中国について「透明性がなく、十分なデータを提供しておらず、協力的だとは言えない」と批判した。

 これら14か国の政府が懸念を表明したのは、声明中に言及されている問題があったからだが、その背景には、WHOに中国政府が影響を及ぼしているというイメージがあったのではないか。
 感染が発生した直後に警報を発した武漢の医師が当局から厳しく処分され、結局死亡した(ただしその前に中国政府は同医師を評価するように転じていた)ことや、有名な女流作家が感染の実情を描こうとして当局からにらまれ、中国での出版をあきらめたことなどは周知の事実である。

 さらに時間をさかのぼるが、1月2日、河北省石家荘市でコロナ患者が発生し、6日から全市で対コロナ対策が実施された。結果は早く出て、2月5日には大型ショッピングセンターも通常の営業に戻ったと中国では報道されたが、国外では、ほんとうにそんな短期間で効果が上がるか疑問視する声も上がった。我々外部には何が真実か、中国当局の発表や中国メディアによる報道しかないが、それに頼ることには躊躇がある。

 この他、新疆ウイグル自治区や香港での人権問題においても、中国は、事実無根であるとか、主権国家として当然の措置だとか強い言葉で反発し、世界の声など聞く耳を持たないと言わんばかりの姿勢であるが、中国以外ではそのとおりだと思う人はほとんどいないだろう。

 中国の党・政府として言論統制を必要とする事情は分からないではないが、強圧的な取り締まりを行って言論を封殺すれば中国人の間で不満がたまり、また諸外国の中国についてのイメージが悪化するなど、その悪影響はブーメランのように跳ね返ってくるのではないか。

2021.04.22

日米首脳会談

ザページに「「台湾」明記に中国の反発は抑制的 内在する日米の立場の違い」を寄稿しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6cfbd475eda547db09598a8661234f06a9a27a6f
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2021.04.17

日米首脳会談2021

 菅義偉首相は16日午後(日本時間17日未明)、ホワイトハウスでバイデン米大統領と初の首脳会談を行った。

 今回の会談では、予想通り、中国及び台湾について踏み込んだ意見交換が行われた。会談後の共同声明によれば、中国については、「インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した」。また、「中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した」。つまり、今次会談では、中国についての懸念と中国と協働する必要性の両方が表明されたのであるが、具体的な問題については次の3点が注目された。

1 中国関係

「(米国は)日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認した」。また、「(日米両国は)共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対」した。

「(日米両国は)東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対した」。

「(日米両国は)南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認」した。

「(日米両国は)香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有」した。

2 台湾関係

 「(日米両国は)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促」した。

 日米首脳の合意文書に「台湾」が盛り込まれたのは、日中国交正常化前の1969年に佐藤栄作首相とニクソン大統領が出した共同声明以来であるとのコメントが行われているが、その時と現在では台湾をめぐる客観情勢が大きく違っており、当時は台湾が「中華民国」として、日米両国を含め大多数の国と外交関係を結んでいた。
 
 今回の会談で台湾海峡についての言及が行われたことについては、中国の反応はもちろん、その出方を注視していく必要がある。自信をつけ、わが道を進み、民主主義諸国との厳しい対立も辞さないという姿勢を強めている中国は、今後台湾についてどのような動きに出てくるか、展開いかんでは極めて危険な状態になりうる。
そんな中、日本としては、米国の同盟国として、また民主主義国の一員として、中国との関係のかじ取りは今後いっそう困難になる可能性がある。今回の首脳会談はそのような新しい国際的展開への一歩ではないかと思われる。

3 北朝鮮関係

「日米両国は、北朝鮮に対し、国連安保理決議の下での義務に従うことを求めつつ、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認するとともに、国際社会による同決議の完全な履行を求めた」。「日米両国は、(中略)北朝鮮の核及びミサイル計画に関連する危険に対処するため、互いに、そして、他のパートナーとも協働する」。「バイデン大統領は、拉致問題の即時解決への米国のコミットメントを再確認した」。

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