平和外交研究所

2016年11月

2016.11.08

(短文)中国「インターネット安全法」の成立

 11月7日、中国の「インターネット安全法」は全国人民代表大会(国会に相当する。全人代)常務委員会で承認され、明年6月1日から施行されることとなった。これについて『明報』紙11月8日付は、「この法律案が提示されて以来、中国で活動する外国企業、人権組織は、この法律は貿易障壁となり、また言論空間を締め付けるとして批判してきた。また、BBC放送は、この法律は国家の団結を損ない、あるいは社会主義制度を覆す恐れのある言論を禁止し、一定の場合には政府がインターネットに介入し切断する根拠を与えると指摘している」との解説を加えている。

 政府に強い権限を付与する具体的な条文としては次のようなものがある。
第53条
問題が発生した場合、政府は調査を行い、インターネットを運営する者に対し、問題個所を削除するよう求めることができる。

第54条
  省級以上の政府はインターネットの安全にかかわる危険が発生した場合、当該インターネットの運営する者の法定代理人または主要責任者に対して話し合いを求めることができる。

第56条
  国家の安全と社会における公共の秩序を維持するため、重大な突発的「社会安全事件」の必要性に応じ、国務院の決定または承認のもとに、特定区域内でインターネット通信に対して制限するなど臨時の措置を講じることができる。

 この法律の成立により、習近平政権の2本の鞭のうち言論統制に関する1本は従来に増して太く、強くなったと見るべきだろう。

2016.11.02

(短文)韓国警備艇と中国漁船の衝突

 10月7日、仁川市の西方の海上で、中国漁船が取り締まりに当たっていた韓国の高速警備艇に体当たりして沈没させる事件が発生した。警備艇に乗っていた隊員は救助された。
 11月1日、やはり仁川沖で、違法操業を取り締まっていた韓国の警備艇5隻が中国漁船に対し機関銃で600~700発銃撃した。警備艇の規模は3千~1千トンであった。韓国側の発表では、違法操業の中国船2隻を拿捕するため警備員が中国船に乗船していたところ、周辺にいた30隻の中国漁船が威嚇してきたので警備員の安全のために警告射撃を行った由。

注 この海域では時折、類似の事件が起こっている。北朝鮮と中国の船が衝突したこともあった。

2016.11.02

(短評)アウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問の訪日

 11月1日から5日まで,アウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問が訪日する。同氏は80年代の半ば、日本に留学していたこともあり日本には親近感を持っているが、日本が軍事政権時代に援助を供与していたことには不満であったと言われている。新政権下のミャンマーをどのように見るべきか。

 訪日は8月末の中国、9月の米国訪問の後となった。それより以前の5月、同最高顧問はラオスを訪問していた。ラオスは今年のASEAN議長国なのでスー・チー最高顧問が最初の訪問先としてラオスを選んだのはごく自然なことだったと思う。
 中国訪問はネピドーで民族和解の大会議、「21世紀パンロン会議」が開催される直前であり、スー・チー氏は多忙だったはずだが、あえて中国を訪問した。一部少数民族はこの会議に参加するのを拒否して武装闘争を続けており、中国との関係が深い彼らを抑えるのに中国の協力を必要としたことが背景にあったと思われる。
 ミャンマーと中国とは地理的、歴史的に関係が深い。しかも南シナ海問題などのためにASEANとの関係増進を重視する中国は、新政権の成立直後に王毅外相を訪問させるなど、ミャンマーを取り込もうとする姿勢が顕著である。去る8月のスー・チー最高顧問の訪中においても中国の積極的な姿勢が目立った。

 ミャンマーの対外関係は国内政治と密接に関係している。ミャンマーでは今でも軍が特権を保持しており、軍の意向に反すると何もできなくなる。新政権としては軍の特権を取り上げたいが、一部とはいえ、政府と対立する少数民族がいる限り、軍に頼らざるを得ない。少数民族はミャンマーの全人口の3割近くを占めており、最大問題だ。
 新政権は、成立後、憲法を改正して軍の特権を廃止しようとしたが、うまくいかなかった。そこでスー・チー氏の父アウン・サン将軍が試みた民族和解の方式である「パンロン会議」を70年ぶりに復活させ、全少数民族の代表が一同に会して協力しあう道を拓こうとした。
 しかし、一部少数民族は依然として政府と対立している。「パンロン会議」は今後も半年に1回程度開催されるそうだが、諸民族の大同団結を実現するにはまだ道は遠い。したがってまた、軍の特権も当分の間は大目に見ざるを得ない。
 アウン・サン・スー・チー最高顧問が率いる新政権による民主的国家の建設計画は、大まかに言ってそのようなバランスの上に成り立っているように見える。今後の重点は経済発展であり、これまで制裁のために出られなかった米国企業もミャンマーに強い関心を示しているそうだ。
 中国は、とくに少数民族地域では一歩も二歩も先に行っているが、環境問題のために現地の反発が強いミッソン・ダムのような矛盾もある。
 日本は今後経済面でのかかわりを深めていくことになるが、政府、軍、少数民族の間の対立関係が妨げにならないよう注意が必要だ。
 

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