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2014.03.07

ウクライナ情勢に対する中国の態度

4日夜、プーチン大統領の「誘いに応じて」習近平主席が電話で会談した。
プーチン大統領が「当面のウクライナ情勢の変化過程およびロシア側の立場と対応措置を通報した」のに対し、習近平主席は「中国側の原則と立場を説明し、ウクライナ情勢が今日の程度に発展したことは、偶然の中に必然的な原因がある。当面、情勢が高度に複雑で、高度に敏感になり、地域情勢と国際全局に関わっている。ロシア側が各方面と協議し、問題の政治的な解決を推進し、地域と世界の平和・安定を維持することができると信じている。中国側は、国際社会による情勢緩和にプラスとなる建議や斡旋の努力を支持していく」と語ったと報道されている(新華網日本語、3月5日)。
中国は、ロシアによるクリミア出兵について、反対しない態度であると一部で報道されたが、この新華社が伝える中国の態度はかなり違っている。中国はロシアを批判しているわけではないが、支持しているのでもなく、基本的に中立である。
同日(習・プーチン会談より後と思われる)国連安保理で中国の劉結一大使は「中国はウクライナ情勢に大きな関心を持っている」とだけ発言したそうである(これも新華社)。
中国は、人権・人道問題などを理由に他国へ介入することに一貫して反対し、主権を尊重すべきだと主張していた。今後もこの方針を維持する、あるいはしなければならないであろうし、そうであれば、ロシアのウクライナへの介入に安易に賛成できないと考えたのは当然である。

日本から見て、中国の態度は次のような点で評価できる。
○国連の内外で中国はこれまでロシアとともに保守的な立場を維持し、たとえばミヤンマー、リビア、シリアなどの場合でも、日本を含む西側諸国が積極的な方策が必要と判断しても反対することが多かったが、今回は違っている。中国がもし、これまでと同様の態度であれば、国連は何もできないが、ウクライナ問題について中国がロシアと違う態度であれば、国連でも解決に向けた行動がとれる可能性が大きくなる。ロシアとしても1国だけで拒否権を行使するのは容易でない。
○地域情勢と国際全局つまり世界全体との関わりを見ている。これは、ロシアに対し米欧との関係に注意しつつ対処することをうながす意味がありうる。
○ロシアに対し、各方面と協議して問題の解決を図るべきだといっており、これはロシアが突出した行動に出るのをけん制する意味合いがある。

もちろん現実は複雑であり、ここに指摘したような意味あいがほんとうに出てくるか分からないが、日本として、中国の態度を積極的に評価していることを示すことができればよいと思う。日本政府がどのように見ているか興味をそそられる。


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