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2013.09.07

G20でのシリア問題

9月6日閉幕したサンクトペテルブルグのG20においてシリア問題は活発に議論されたが、シリアへの軍事攻撃に賛成する意見は増えず、むしろ米国の立場はより困難になったと思われる。
第一に、化学兵器の使用問題についてG20としての結論は出せなかった。このこと自体は大したことでないかもしれないが、議長を務めたプーチン大統領の采配もありG20全体としては軍事介入を支持しないことがプレーアップされた。一方、軍事攻撃を明確に支持した国は、トルコ、カナダ、サウジアラビアおよびフランスだけであった。
第二に、日本、米国、英国、フランスなど11ヵ国はそれでも米国を支持する共同声明を発表した。同声明は、8月21日ダマスカス郊外で起こった化学兵器による攻撃について「シリア政府の責任を示す証拠がある」としたが、さらに「そのような攻撃はシリア政府の化学兵器使用のパターンである」とも付言した(The evidence clearly points to the Syrian government being responsible for the attack, which is part of a pattern of chemical weapons use by the regime.)。
この声明は 、シリア政府軍が化学兵器を使用したとの考えに立っているが、シリア政府がそれを命令したと断定しているのではない。「責任がある」とは、「シリア政府が命令しなくても責任がある」と言っているようにも解される。
「使用のパターン」に言及した追加文言の意味は明確でなく、シリア政府が化学兵器攻撃をしたことを示す直接の証拠が弱いので主張を補強するために用いられたのかもしれない。つまり、「シリア政府がしそうなことだ」と付言したということである。それは推測にすぎないが、このような文言を追加せざるをえなかったことにも、シリア政府が命令したと断定できないもどかしさが表れているように思われる。
第三に、11ヵ国声明は、国連の安保理が2年半の間機能停止の状態に陥り、化学兵器問題に対処できていないことに不満を述べ、これ以上待つことはできないとして、「化学兵器禁止を強化するために米国などが行っている努力を支持する」と、ここは明快に述べているように見えるが、「米国などが行っている努力」とは何かが問題である。米国としても抽象的に評価されるだけでは満足できないであろう。
第四に、「国連の調査団が結果を速やかに提示し、安保理が適切に行動することを求める」としていることは当然である。しかし、国連の調査結果が明らかになるまで米国が軍事攻撃しないという保証はない。2003年のイラク攻撃の場合には国連の調査が行われている最中に米国は行動を開始した。10年前と現在は状況が変わっている。米国の政権も同じでないが、国連の調査結果が出てくるにはなお時間がかかりそうだし、また、出てきても化学兵器を使ったのはシリア政府軍か、それとも反政府軍か明確な結論は期待できない。
第五に、議会の反対により軍事攻撃参加の可能性を封じられた英国のみならず、フランスや、また米国でも軍事攻撃への世論は賛否がほぼ拮抗しており、議会の状況も微妙なようだ。米国議会では委員会レベルでは賛成の結論が出たが、本会議でどうなるか予断は許さないと言われている。G20はこのような各国の世論や議会の状況を反映しているのはないか。
第六に、米国の情報の信頼性がきわめて低下していることが気にかかる。米国は国連とは別に独自に情報収集を行なっており、傍受したシリア政府軍と政府との間の通信からシリア政府軍が化学兵器を使用したことが明らかになったと説明した。政府が証拠があると言っても、各国の国民、したがってまた議会もなかなか信用しないのではないか。発表された情報の信頼性がこれほどまでに低下したのはイラク戦争の際の苦い経験があるからであり、その後遺症は今なお深刻である。



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