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2015.01.08

青天白日旗の掲揚

台湾の在米国代表処(台北経済文化代表処)が元旦に、台湾の所有する雙橡園(Twin Oaks)で36年ぶりに青天白日旗(「中華民国」の国旗)を掲揚したため、米中間でちょっとした問題となった。
雙橡園(Twin Oaks)は、米国が中華民国と外交関係を維持していた時代の中華民国大使の公邸である。もちろんワシントン特別区内にある。
1979年1月に米国は中華人民共和国と国交を樹立することとなり、そのことを察知した中華民国大使館は、米国の親台湾議員の協力を得て、雙橡園(Twin Oaks)はじめ大使館事務所、武官駐在所など中華民国所有の財産をいったん民間に売却して中華人民共和国政府に強制的に引き渡されるのを防ぎ、その後台湾があらためて買い戻して米国の遺跡として国務省に登録した経緯がある。現在は台北経済文化代表処が台湾の国慶節祝賀会などに利用している。ちなみに、日本にあった「中華民国」の大使館などはすべて中華人民共和国に引き渡された。
元旦の祝賀会で台湾の沈呂巡代表は「中華民国は主権国家であり、外交官として何事をするにも米国にお伺いを立てるということはできない。米台関係は健康な、バランスの取れた関係である。今回の旗の掲揚は内部のことであり、米国政府には事前通報しなかった」などと発言したと台湾の新聞で報道されている。台湾の記者が青天白日旗の掲揚のことを総統府(台湾の内閣、つまり総統)は知っていたかと尋ねたのに対し、沈呂巡代表は「総統府と私の考えはちょっと違っている(隔了一個層級)」と答えたそうだ。
しかし、米中国交樹立に伴い、米国は中華人民共和国政府を承認し、またその旗、いわゆる五星紅旗を認め、青天白日旗は認めないこととした。その立場は今も変わっていない。雙橡園で元旦に青天白日旗を掲揚するのは政治問題になりうる。はたせるかな、中国は米国に対し抗議した。米国政府もこの旗の掲揚は認めないとし、国務省のサキ報道官は「米国政府は事前に知らされていなかった。このような儀式は米国の政策と一致しないし、その儀式に米国政府からは誰も出席していない」と説明した。
それで一件落着となりそうなものであるが、沈呂巡代表はその後も「米国の声明をよく読んでほしい。台湾を批判してはいない」などと強弁している。米国に派遣される台湾の代表はもっとも成功した外交官であるはずだが、それにしては、沈呂巡代表の言動は不可解なくらい思い込みが激しく、また米中台間の微妙な関係に対する配慮を欠くものである。
米台関係は民進党政権時代に落ち込み、馬英九総統になってから関係が改善され、台北経済文化代表処は活動を活発化させてきた。2011年にやはり雙橡園で双十節(台湾の国慶節)レセプションを再開したのは一つのステップであった。今回の青天白日旗掲揚については、総統府は違った考えであったが、沈呂巡代表はその延長線で見ており、大丈夫だと踏んでいたのかもしれない。しかし、それは明らかに判断ミスであったと思われる。

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