平和外交研究所

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2020.06.11

国会におけるテレワーク導入の勧め

 新型コロナウイルスによる感染問題のため日本国民の勤務環境は大きく変化した。特にテレワークの導入は各界、各職場で行われ、国民の生活を変えた。もちろん、人が直接処理する必要がある職種は少なくない。また、パソコンで代替できるといっても、直接会って仕事をするのとは大違いなので、テレワークがどの程度有効か疑問もあったが、実際に利用してみるとかなりのことができることがわかった。

 これからヒントを得たのだが、国会の審議にもテレワークを導入してはどうか。必要性というか、導入されればよくなると思われることは確かにある。

 国会の審議は普通の国民にとってフォローしにくい。不可能に近いといえる。なぜならば、時間が長く、国会議員や職業として関係している人たち、たとえばメディアの記者以外にはほとんど不可能である。傍聴席もあるが、数は少ないし、長時間傍聴できる人はあまりいないだろう。したがって、国会における質疑応答はメディアを通じて知ることになるが、報道方針はメディアごとに異なるので、報道ぶりについて与野党を問わず不満がある。メディアの側では客観的な報道に努めているが、間接的な情報提供であり限界がある。

 また、そもそも国会での審議は分かりにくい。かりに国会で直接傍聴しても聞いてすぐわかることでない。

 もう一つは国会が年中開かれていないことである。それは法律で決まっており、実質的な理由もあるのだが、国民の立場からすれば国会がいつでも重要問題を審議する状態にあることが望ましい。
 国会は休会中でも必要な場合緊急に会議を開くことができるが、実際には緊急会議を開くべきかについて政党間で意見が分かれ、簡単には結論が出ない。つねに開かれているのとはおおちがいである。

 このような状況にかんがみると、テレワークの導入ができれば、国会の審議を補い、国民との距離を縮めるのに貢献できるのではないか。

 具体的には次のような仕組みにすることが考えられる。
〇国会の審議(質疑応答)をそのままメディアで報道することを排除するのではないが、それでは分かりにくいので、テレワークでは、あらたに、一定のテーマについて各政党が意見を表明、あるいは説明することとする。
〇テーマは国会で取り上げられているような問題である。政党の綱領に記載されているような大きなこと、たとえば「自由」とか「民主」もありうるが、それより、具体的な問題が望ましい。
〇テーマの設定については、全政党が合意するのが理想的である。しかし、それが成立しない場合は、何らかの代替案、たとえば、国民の一定数の署名があればテーマにできるようにする。
〇回答の長さについてもさまざまな考えがありうるが、長すぎると国民には読みにくくなる。短すぎると内容が乏しく、そっけなくなる。そのように考えれば、各政党の判断に任せておいてよい。

 この提案は特定の政党を利するものであってはならない。突飛なアイデアに映るかもしれないが、日本は政治、経済、社会、安全保障などの面で複雑化し、それだけ一般の国民に分かりにくくなっている。質疑が知らず知らずのうちに国民から乖離してしまっていることをぜひ認識し、テレワークの導入を検討してもらいたい。

2020.06.07

経産省の外部委託問題と財務省の役割

新型コロナウイルスによる感染問題で経営危機に陥った中小企業などに最大200万円を配る「持続化給付金」事業の実施に関し、深刻な疑念をもたれる事態が生じている。

持続化給付金は150万社へ支払うとの想定で、4月の第1次補正予算において2兆3176億円が計上された。問題になっているのは、この事業の実施のためコールセンターや全国約400カ所に開く申請サポート会場の運営などのための769億円である。

担当官庁である経産省は手続き業務全体を「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に一括委託したが、同協議会は業務の大半を広告大手の電通に749億円で再委託した。電通はさらに、多くの業務を子会社5社にまかせ、自らは「管理・運営費」として約104億円を手にした。

つまり、手続き業務自体は5つの会社が行うのだが、そのためにあてられるはずの経費から協議会が20億円、電通が約104億円取っており、実際の業務に使われるのは約645億円となっているのだ。なぜそういうことをするのか。経産省が業務を外部に委託するのは分かるが、直接委託すれば約124億円は払わなくてもすむのではないか、と国民が思うのは当然である。

 もちろん、経産省によるこのような業務委託と資金使用の監督が誤っていたと決めつけることはできない。協議会についても電通についても必要性があるかもしれない。しかし、経産省、協議会および電通はその必要性を説明する義務がある。ところが、いずれも説明しておらず、国会で厳しく求められても応じないのである。
 
 経産省の民間委託についてはこのほか、キャッシュレス決済のポイント還元事業で事務局を担当する「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」が、受託費の93%にあたる約316億円で大半の業務を同じ電通などに再委託していたことがわかっている。

 さらに、新型コロナウイルス問題への対策として第1次補正予算に盛り込まれた消費喚起策「Go To キャンペーン事業」について、政府は6月5日、事務局を委託する事業者の公募を中止し、やり直すと発表した。委託費の上限が総事業費の約2割にあたる3095億円と巨額だったことや、手続きをまとめて民間委託することに批判が高まり、見直しを迫られたという。
 
これらの問題については国会などでの審議を通じて真実が解明されることが期待されるが、実は、政府のなかに不適切な予算要求を除去する強力なメカニズムがある。財務省の主計局であり、各省庁から「○○の業務が必要なので○○の予算が必要だ」と要求してくると、そもそも要求された事業が必要か否かの判断はもちろん、単価に至るまで適正か厳密にチェックする。これは外部(国会やメディア)からの真実解明努力とはまるで違う、政府内部における審査であり、ごまかしはきかない。主計局があやしいと思えば要求は退けられる。

 現在問題になっている経産省による事業の外部委託を見ると、財務省による精査が機能しているとは到底思えない。これは深刻な問題である。こんなことが続けば日本国は正しく機能しなくなる。一刻も早く正常な軌道に戻す必要がある。
 
2020.05.20

原爆投下の日を「祝日」にしてはならない

 来年に延期された東京五輪・パラリンピックの関係で、都内の交通混雑を緩和するため祝日をずらす法改正案が政府内で準備中であり、これによれば、原爆が長崎に投下された日である8月9日を祝日とすることになる。この案を自民、公明両党は了承せず、政府に再考を求めたという。

 両党の判断は正しい。原爆が投下されたことにより広島では約14万人、長崎では約7万人の無辜の市民が殺害された。日本人として決して忘れられない悲惨な出来事であり、毎年、原爆が投下された日である8月6日と9日に日本中が犠牲者を慰霊している。この日を「祝日」にするとは狂気の沙汰というほかない。そんなことを内容とする法改正案を作成してはならない。

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