平和外交研究所

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朝鮮半島

2015.08.25

(短文)韓国と北朝鮮の関係緊張‐北京では

 韓国と北朝鮮の緊張が高まっていることに関し、『多維新聞(米国に本拠)』8月22日付は、北朝鮮は、韓国との関係もさることながら、中国との関係を強く考慮しながら行動していると指摘している。韓国と北朝鮮の緊張は中国との三者間の関係のなかで見ていく必要がありそうだ。

 非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発したのは8月4日、韓国国防部は10日に北朝鮮が仕掛けた地雷だと発表した。
 南北高官会談が22日から板門店で行なわれ、25日未明に合意に達した。北朝鮮は韓国が要求していた通り、地雷を仕掛けた件について謝罪(中国の新聞では「遺憾」)した。今回の事件において、韓国側は北朝鮮が仕掛けたことを示す明確な根拠を持っていたようで、かつて北朝鮮から砲撃を受けたり、艦艇が撃沈されたりした時と比べると強く出ていた。北朝鮮による謝罪の要求と並行して、大音声の宣伝放送を再開したのもその表れだった。

 以上は前置きで、『多維新聞』の指摘は以下のことについてである。
 21日、北朝鮮の池在龍在中国大使は緊急の記者会見を開き、韓国が48時間以内に宣伝放送をやめないと軍事行動を起こす、北朝鮮軍は準戦時状態に入ったと表明した。南北関係が緊張しているときに北京で記者会見を開き、そのように重大な発表をするのは異例である(注 北朝鮮は通常通り朝鮮中央通信を通して発表できた)。
 しかも、この記者会見は外国記者だけに案内されたので、中国の記者は誰も出席しなかった。
 中国記者だけでなく、北朝鮮は中国政府に対してもこの発表について事前に通報しなかったらしい。ロシアには明らかに事前通報していた。中国政府はつんぼ桟敷に置かれたのだ。当然中国政府は怒った。21日に中国政府が出したコメントの言葉の強さが中国の気持ちを表していた。
 今回の南北間の緊張に際して、北朝鮮は中国を強く意識して振る舞っていた。北京で韓国との関係に関する重要発表を行なう前日(20日)の午後、金正恩第1書記が政府の要人を集め協議(指示?)し、韓国に向け砲撃したのは、その日の午前中に、朴槿恵大統領が9月3日の抗日戦争勝利記念行事に参列することを韓国が発表したからである。金正恩は韓国と中国の関係進展を不快視して、中国には横を向きながら怒鳴ったのだ。
 北朝鮮は中国に対し、中国は北朝鮮を冷淡に扱おうとしても結局巻き込まれることになる、現在中国は北朝鮮を軽視しているが、北朝鮮だって中国を無視できると言いたかったのだろう。

 北朝鮮は地雷を仕掛けたこともそうだが、南北会談を持ちかけたり、「南韓」といつもの言い方と違って「大韓民国」と正式名で韓国を呼んだが、次の機会にはまた元の呼称に戻ったり、「異例の(奇妙な?)」記者会見をしたりしており、一貫した方針がうかがわれない。

2015.08.10

(短評)70年談話有識者懇談会の報告書‐韓国関係部分の記述には問題がある

 8月6日提出された報告書の中の日韓関係に関する記述には問題がある。
 
 安倍首相は第1回の会合で、議論し検討すべき問題として「20世紀の世界と日本の歩みをどう考えるか。私たちが20世紀の経験から汲むべき教訓は何か」をはじめいくつかのポイントを示した。いずれも非常に大きなテーマであり、半年程度の議論で結論を出すのは困難なのかもしれない。
 
 韓国との最近の関係に関する部分は、他の部分と違って、韓国のみならず日本自身の行動を客観的に観察し、事実に即して議論する姿勢が薄弱であり、筆者の主観的理解をあたかも客観的なこととして描写している。
 一つ例を挙げると、朴槿恵大統領については、「李明博政権下で傷ついた日韓関係の修復に取り組むどころか、政権発足当初から心情に基づいた対日外交を推し進め、歴史認識において日本からの歩みよりがなければ二国間関係を前進させない考えを明確にしている」と記載している。
 しかし、「日本からの歩みよりがなければ二国間関係を前進させない考えを明確にしている」のは事実でないだろう。同大統領は日本の指導者が歴史問題を直視することを求めており、そうでないかぎり首脳会談に応じないという態度であり、それは私もかたくなだと思うが、「日本側からの歩みよりがなければ二国間関係を前進させない」と言っていないし、そのような考えでもない。たとえば、安倍首相が日韓の首脳会談で歴史問題についても話し合おうという態度を表明すれば、朴槿恵大統領は会談に応じるだろう。かりに応じなければ、「日本側は歴史問題を直視している。話し合いを拒否しているのは韓国側だ」と堂々主張できる。
 報告書には金大中大統領に対する積極的な見方が示されているが、同大統領が前向きの姿勢を取れたのは小渕首相が率直に歴史問題を語り、「我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのおわびを述べた」からである。このように物事は両面から見ていくことが重要であるが、朴槿恵大統領の描写についてはこの視点が全く欠けている。
 朴槿恵大統領は、「心情を前面に出し、これまでになく厳しい対日姿勢を持つ」と言うのも皮相的な見方だ。彼女は「心情」で歴史問題を語っているのではない。それは彼女の「信念」だからだ。彼女は原理主義に近いと思うことがあるが、そのような姿勢は彼女の生きざまであり、日本との関係に限ったことでない。たとえば、朴槿恵大統領は盧武鉉大統領についても実に厳しい態度で接したことが彼女の自叙伝に出てくる。そのような姿勢の人物が大統領にふさわしいか議論はありうる。しかし、朴槿恵氏を選んだのは韓国人だ。日本人は、強い信念を持つ朴槿恵大統領を冷静に観察・分析すべきだ。
 懇談会の報告書には、他にも、「韓国人が、日韓基本条約を平然と覆そうと試みる」「いかに日本側が努力し、その時の韓国政府がこれを評価しても、将来の韓国政府が日本側の過去の取組を否定するという歴史が繰り返されるのではないかという指摘が出るのも当然である」「韓国政府が歴史認識問題において「ゴールポスト」を動かしてきた」などの不適切表現がある。
 最後の引用は取り上げるほどのことはない、表現だけの問題かもしれないが、米国でも条約を署名しながら批准しないことがあり、それは米国としての「ゴールポスト」を動かしたのではないか。それと韓国の場合とはどう違うのか明確にできるだろうか。
 総じて、韓国関係の記述は一方的だと思う。

2015.06.22

日韓国交正常化50周年 両国関係を改善しよう

 今年は日韓国交正常化が実現して50周年、両国で慶祝行事が行われる。
 両国間の歴史においてはさまざまな困難があり、日本による韓国併合は今日に至るも負の影響を残している。村山首相以来日本の歴代首相は、植民地支配によって韓国の人々に多大の苦痛と損害を与えたことを直視し、痛切な反省と心からのお詫びを表明してきた。
 日韓両国は大きな努力を払って困難を克服し、関係を改善してきた。たとえば、韓国の対日差別的文化政策の撤廃により日韓間の文化交流は飛躍的に発展した。これにより両国民が得た利益は計り知れない。今後も両国間の交流をさらに深め、相互理解を増進し、協力しあう分野を拡大していきたい。
 しかし、ここ数年、両国の関係は歴史問題などのために落ち込み、『朝日新聞』と韓国の『東亜日報』の共同世論調査によると、関係が良好でないと思っている人は日本で86%、韓国では90%と異常な高さに上っている。安倍首相と朴槿恵大統領の首脳会談が一度も実現していないことはそのような状況にある両国関係を象徴している。

 この度国交正常化50周年が両国で慶祝されるに際して、両首脳が別々にではあるが、日韓両国の大使館で開催される行事に出席することとなった。これは大きな前進である。
 韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相はすでに来日して岸田外相と、さらに安倍首相とも会談している。外相会談では日本の産業革命遺産の世界遺産への登録について双方が歩み寄って合意に達し、また、百済の歴史遺跡の登録に両国が協力することを約すなど、大きな成果を上げた。
 一方、両国間にはなお解決すべき問題がある。韓国側は、日本の、とくに安倍首相の歴史に向き合う姿勢を問題視している。
 一方、韓国側には政治と司法の両方にまたがる問題がある。その一つの例が産経新聞記者の裁判であり、韓国政府の取った措置は報道の自由を妨げるのではないか。
 また、韓国政府は、朴槿恵政権が成立する以前であったが、慰安婦問題に関し韓国の憲法裁判所が下した決定に促され、それまでの態度を変えて日本政府に国家補償を求めるようになった。
 これらは行政府だけの責任でなく、司法にまたがる問題であることは分かるが、憲法裁判所の決定だからと言って韓国政府が従来の見解を変えることは日本として受け入れられない。当然のことであるが、両国は日韓基本条約および請求権協定で決定したことを尊重する義務があり、韓国側が日本側の解釈に同意できないのであれば、同協定3条に明記されている方法で、つまり仲裁により解決を図る必要がある。
 日韓両国政府が関係改善に動き出し、一歩どころか二歩も前進しているときにこんなことを言い出さなくてもよいと思われるかもしれないが、両国間の関係がさらに進展することを願うからこそ指摘しておきたい。
 安倍首相と朴槿恵大統領には首脳会談を実現してほしい。そのために、安倍首相から、前提条件を付けず、歴史問題も含め両国間のあらゆる問題について話し合う用意があることを伝えるのが望ましい。
 朴槿恵大統領は歴史問題について結果が出ることが先決などと言わないでほしい。
 個人の信条はともかく、国家の指導者として議論し、お互いに確かめ合い、疑問を呈し、誤解があればその解消を図るべきであり、それは安倍首相も朴槿恵大統領もできるはずである。

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