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2013.12.14

ロシアの日本研究者協会年次会議

ロシアの日本研究者協会第6回年次会議が12月12~13日、モスクワで開催された。同研究会の会長はDmitry Streltsov氏、モスクワ国際関係大学(MGIMO)のHead of Afro-Asian Departmentでもある。
形式的には、この会議と別に、日本国際問題研究所とMGIMOが毎年学術交流を行っており、今回の日本研究者協会の会議はそれに合わせて開催された。モスクワではいつもそうしているらしい。
ロシア側の出席者の中には、Alexander Panov元駐日大使、Konstantin Sarkisov日本研究者協会名誉会長なども含まれていた。
日本側の出席者は渡邊啓貴東京外国語大学教授、川西重忠桜美林大学教授、石原直紀立命館大学教授、関山健明治大学准教授、それに国際問題研究所から飯島俊郎副所長、小澤治子新潟国際情報大学教授などであった。

安倍政権に対する注目度は高かった。ロシア側からの発言は概して同政権に好意的であり、「日本はこれまで短期間で首相が交代してきたが、今後は安定した政権になる可能性がある」と期待を込めた発言もあった。
中国の台頭が一つの中心的関心事であったのは当然であり、「尖閣諸島問題、また最近の防空識別圏の設定、経済大国化など、日本が中国を脅威と感じることが多くなっている。また、北朝鮮の行動も日本にとって問題である」「日本の安倍政権は民族主義的傾向が強く、憲法改正、自衛隊の軍隊化などを進めようとしている。安倍首相の発言は口先だけでなく、実行を伴っており、十数年ぶりに防衛予算を増額し、尖閣諸島の防衛体制を強化している」「日本は米国との防衛協力を強化し、また、東南アジア諸国とも連携して対中ブロックを形成しようとしている。米国は日本を防衛する義務を負っているが、最近の防空識別圏に関して、中国との関係をあまり悪化させないよう苦慮している。日米間には微妙な立場の相違がある」「今後いかに衝突を回避していくか、またそのために信頼醸成をどのように進めるかが課題である。このような状況はロシアにとっても懸念されることであり、情勢の悪化を防ぐための多国間メカニズムの構築を進めるべきである」などがロシア側の発言の主要点であった。

政治、安全保障に関する議論のなかで、日本のソフトパワー外交にも関心が集まり、クール・ジャパンなど日本は文化的、日本的なことを世界に積極的にアピールしていることを評価する発言が続いた。
また中国の経済成長の影響がある一方、日本経済は力を失っていると見るべきではないという意見も強く、日本は製造業などで依然として世界のトップであること、さらに環境、人権、知る権利などの分野でも積極的に取り組んでいること、製品も多様化し、いわゆるソリューションなどノウハウの輸出も注目されることなどの指摘がロシアの研究者から行われた。ロシアの日本研究のレベルは高い。

今回、日ロ関係の改善についてはほとんど議論する機会はなかったが、会議場の外では率直に意見交換した。今後日本研究者との間で両国関係を改善する方策を議論していくことは有益であろう。


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