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2016.06.07

(短文)ミャンマーの新国民会議

 ミャンマーでは今年の3月30日にティン・チョウ新大統領が就任し、国民民主連盟(NLD)の指導者であるアウン・サン・スー・チー氏は憲法規定により大統領になれないので国家最高顧問となり、外務大臣などを兼任している。
 以来、議会で憲法改正の試みが行われたが、4分の1の議席を持っている軍人が反対したため試みは失敗した。
 新しい試みとして、ビルマ族、各少数民族、武装グループがすべて参加する新パンロン(Panglong)会議を開催して憲法改正の突破口を開こうとする構想がNLDを中心に進められている。
 パンロン会議とは、1947年2月、ビルマ独立の指導者アウン・サン(ビルマ族の代表)と少数民族がシャン州のパンロンで行った会議で、合意に参加したのはシャン、カチン、チンの3民族だけであった。
 問題は少数民族の自治権をどの程度認めるかであり、パンロン会議では自治権を与えることが合意された。また、後に制定された1947年憲法で、シャン、カヤーについては独立後10年目以降の連邦からの離脱権を認める条項が加えられた。
 しかし、その後、パンロン協定で保障された諸民族の自治権も失われ、シャン、カレンニーに認められた連邦離脱権も剥奪された。
 この間(47年7月)アウン・サンは暗殺されるなど情勢は不安定であり、1948年1月4日のビルマ独立は諸民族間の完全な合意がないまま強行された感がある。
 もちろん、すべての少数民族の合意を待っていては英国からの独立自体が危うくなる恐れがあっただろうし、その時点でのビルマ連邦独立が時期尚早であったとは断定できないが、その時未解決であった問題が今日まで尾を引いていることは否定できないようだ。

 昨年10月に休戦協定が合意され、その後、Union Peace Dialogue Joint Committeeが設置された。民族間の対話を進めることが目的だが、7月に新パンロン会議を開催する準備の意味もある。
 また、休戦協定には一部少数民族は参加しなかったので、この委員会の下部委員会では非参加のグループとの対話を行うことになっており、6月中に初会合が予定されている。
 しかし、新パンロン会議が成功する保証はない。シャン族のリーダーは、休戦協定に不参加のグループを含めすべての民族が出席するようにならなければ会議の成功はおぼつかない、NLDは民族政党の合意なしに進めようとしていると批判的だ。
 すべての少数民族の合意を取り付けるのは簡単でない。ビルマの独立以来続いている難問だ。
 スー・チー顧問は議会に1人でも出している民族政党はすべて新パンロン会議に招待すると言っているが、議員が1人もいない少数民族はどうなるのかという疑問もある。
 一方、休戦合意に参加したグループの中には、国家顧問、軍の司令官と大統領との会談を求める声もある。

 いずれにしても、新パンロン会議の成功のためには、まだ合意に加わっていないグループ、とくに休戦協定に未参加のグループとの対話の成り行きが注目される。

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