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2023.03.18

尹錫悦韓国大統領の訪日

 韓国の尹錫悦大統領が日本の首相と会談するため12年ぶりに来日し、3月16日、岸田首相と会談後、共同記者会見を行った。日韓両国の関係は戦後最悪の状態になったといわれていたが、今次首脳会談により正常な軌道に戻る可能性が生まれた。尹大統領は日本に対して厳しい姿勢で臨むことを求める情緒的な世論が強い中で訪日し、両国関係改善の端緒を作ったのであり、その努力は称賛に値する。

 今回の会談により、効力が停止していた「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)は完全に正常化された。

 我が国の経済産業省は、19年から続けてきた韓国向けの輸出規制の強化を解除することを発表した。韓国側は、この措置が世界貿易機関(WTO)協定違反にあたるとして提訴していたが、取り下げることとなった。

 日韓関係が今後順調に発展していくことを期待したいが、これまでの経緯にかんがみれば単純に楽観的になれない面も残っている。

 今後両国はどのように努力していくべきか。いわゆる徴用工問題については、韓国政府は今月6日、日本企業に代わって政府傘下の財団が原告に賠償金相当額を支払う「解決策」を発表した。尹錫悦大統領の訪日はこの発表により実現したものであろう。しかし、突破口となったのは解決策の発表であり、解決策は今後実行されなければならない。

 韓国政府がそれを実行することに疑いはないが、韓国内でこの方式による解決に反対している人たちがどのような動きに出るかは見通せない。すでに反対の声が上がっているようだ。日本では、韓国で政権が交代すればまた方針が変わるのではないかと懸念する声もある。

 両国間でわだかまりとなっている歴史問題を迅速に解決できればよいが、両国の立場はあまりにも異なっている。無理やりに解決することは困難であり、またあらたな対立を生む危険さえある。今後も山あり谷ありの状況はありうるが、一つ一つ解決していくしかない。

 最も効果的な方策は、両国が「解決策」の実行を目指すと同時に、「信頼の醸成」に努めることだと考える。「解決策」による解決と「信頼醸成」のツートラックである。

 「信頼醸成」には様々な方策がありうる。文化面での協力や若者の交流などは自然に増加していくだろうが、ぜひ両政府にも積極的に援助してもらいたい。経団連と韓国の経済団体「全国経済人連合会(全経連)」の間で合意された「未来パートナーシップ基金」には日韓双方が1億円ずつを拠出し、両国の若手人材交流の促進など共同事業に取り組むという。これもよいアイデアだと考える。

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