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2017.02.27

中国の仕打ちに怒りをあらわにした北朝鮮

 中国は2月18日、本年度の北朝鮮産石炭輸入を暫定的に停止すると発表した。石炭は北朝鮮にとっては貴重な外貨収入源であり、この輸出ができなくなると経済全体に影響が及ぶ。
 北朝鮮は23日、朝鮮中央通信論評という形で激しく反発した。中国の名指しはせず、「『親善的な隣国』だと言っている周辺国」としたものの、内容的には明確な、しかも強い感情がほとばしり出た中国非難であった。

 同論評は、「朝鮮(北朝鮮)が12日に成功させた「北極星2号」型地対地中距離弾道ミサイルについて、国際社会は朝鮮の核打撃能力が高度に達していることを認識したのに、その国は「初級段階の核技術に過ぎない、今回の実験でもっとも損をするのは挑戦だ」などと言った」とも批判した(読みやすくするため直訳しなかった部分がある)。つまり、先日行ったミサイルの発射実験について国際社会は技術力の高さを認めたのに、中国だけは「初級段階だ」とけなしたと言っているのである。この「初級段階云々」のコメントは具体的に中国のだれが言ったのか不明だ。
 また、同論評は、「何かというとすぐに国連の制裁決議は民生活動には影響を与えないと言うが、実際には敵対勢力と結託して朝鮮を打倒しようとしている。対外貿易を完全に遮断するという非人道的な措置をためらいなく講じた」と非難した。経済制裁によって北朝鮮が深刻な影響を受けることを、事実上にせよ、初めて認めたケースだと思われる。

 中国が石炭輸入を停止したのは、北朝鮮が2月12日にミサイルの発射実験を行ったことが直接的なきっかけである。
 その翌日に起こった金正男の暗殺は関係しているか。今まで何回ミサイル実験が行われても中国がこれほどまでに厳しい措置をとることはなかったので、今回はさらなる事情が加わったと見るべきであろう。金正男はマカオを中心に生活しており、中国との関係が深かったのは事実だ。しかし、今回の事件については、明確でないこと、確認できないことがあまりにも多すぎるので、現段階では何とも言えない。
 それより気になるのは、中国は米新政権から北朝鮮への働きかけを強化するよう強い要請を受けていたことである。北朝鮮は今回の論評の表題で中国のことを「卑しい」と非難しているのだが、中国は北朝鮮に厳しい態度を取ることにより米国の歓心を買おうとした、つまり北朝鮮を米国に売り渡そうとしたと見ている可能性がある。

 一方、ミサイルの発射実験以降の北朝鮮の状況をどう見るべきか。北朝鮮のイメージがますます悪化したことは否めないが、イメージ悪化の原因となったことを金正恩委員長がすべて直接指示したかは不明だ。次のような状況があるからだ。
 第1に、金正男を殺害することが北朝鮮にとってどれほどの意味があったのか。同氏は権力の中枢からすでに離れており、金正恩の地位を脅かす存在ではなかったはずだ。事件発生後に、亡命政権を樹立しようとする人たちにかつがれる可能性があったという説が出ているが、それを裏付ける根拠はあまりにも乏しい。
 第2に、久しく待望してきた米国との対話の開始に向けて予備的な接触が始まっていた(始まろうとしていた?)。そのようなときに国際社会から強く非難される人道問題を起こすかという疑問がある。

 北朝鮮は閉鎖的で、状況は不透明だ。乏しい材料を膨らまし、推測に推測を重ねるようなことは差し控えるべきであるが、このようにちぐはぐな状況は金正恩委員長が国政のすべてを牛耳っているのではない可能性を示唆しているのかもしれない。

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