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2013.09.29

イランの核問題への日本の貢献

イランのロハニ大統領とオバマ米大統領の直接対話が実現した。さる8月、穏健な保守主義のロハニ氏が新大統領に就任し、核協議を含め西側との関係改善が進むことが期待されていたところ、今回の両首脳による対話でさらに一歩前進した。各国から歓迎され、また、メディアにより好意的に報道されている。
この喜ばしい展開に異論があるのでは毛頭ないが、二、三気になることがある。
核に関する協議、とくに国際原子力機関(IAEA)による査察は、イランが査察チームを受け入れるだけではすまない複雑な作業であり、受け入れ側にとっても長い期間にわたって忍耐を要求されることである。極端な表現かもしれないが、査察を受ける側は、素裸になって調べてもらう覚悟が必要である。その間に各国の政権も変わるし、方針も違ってくる。査察をする側も完ぺきではなく、なかには非常識な要求も出てくることがあるが、それでも査察を途中で断るとそれまでの苦労がたちまち水泡に帰する。査察を受ける側にとっては過酷な問題なのである。
原子力の平和利用は、主権国家の侵すことのできない権利であり、イランもそのことをしばしば口にする。これに対し、IAEAや欧米諸国はその権利を享受するためには査察を受け入れ、全面的に協力しなければならないと主張する。しかし、権利と義務だけではなく、「負担」がつきものなのである。
イランも欧米諸国もその負担がどのくらい大きいか分かっておらず、権利と義務だけで交渉している。イランとの協議に参加している核兵器国(米、ロ、中、英、仏)は、イランや日本のような非核兵器国と立場が異なる。これらの国も査察は受けるが負担は軽微であり、非核兵器国の負担がいかに大きいかよく分かっていないのではないか。
イランは、政治と宗教の関係が西側と違っており、大統領と最高指導者ハメネイ師との関係はよく言及されるが、民主的な国であり国民の意見を無視できないことも注意が必要である。しかるに、国民の間では米国に対する反感は現在でも強く、査察だけは我慢して協力するというわけにはいかない面がある。イランはこれまでIAEAの査察に協力をしたことはあるが、それはわずかな期間のことであり、すぐに政治的な問題が出てきて中断してしまった。その背後には米国に対する反感があったと思われる。
一方イランは、日本のように核の平和利用を国際社会に認めてもらいたいと言うが、日本と同じような努力はしていない。平和利用のためには、米国に対する反感は抑え、また、負担をいとわず努力しなければならないことをよく理解していないからである。
そのような状況の中で、日本はとくに負担の関係でイランの核問題解決に貢献することができるはずであり、またそのことを欧米諸国も、イランも理解するよう働きかけていくべきである。


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