平和外交研究所

12月, 2023 - 平和外交研究所 - Page 2

2023.12.16

EUとウクライナ・モルドヴァとの加盟交渉

 EU加盟国は12月14日の首脳会議で、ウクライナとモルドヴァの加盟交渉を正式に開始すると決定し、またジョージアを正式な加盟候補国とした。ウクライナとモルドヴァは2022年2月、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した直後にEUへの加盟申請を行い、2023年6月、加盟候補国として承認されていた。ジョージアも同時期に申請していたが、この時は加盟候補国にならなかった。

 欧州理事会のミシェル議長の報道官は、この決定は全会一致で決まったと説明した。ウクライナの加盟交渉開始にハンガリーは反対していたが、拒否権は発動しなかった。採決にあたってオルバン・ハンガリー首相は一時的に会議場から退出したのである。ハンガリー以外の26カ国はこの行動を評価した。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、「これはウクライナにとっての勝利だ。欧州にとっての勝利だ。動機を与え、活力を与え、強さを与える勝利だ」と述べた。

 アメリカのサリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も、EUの「歴史的な」動きを歓迎。ウクライナとモルドヴァの「EUおよび北大西洋条約機構(NATO)加盟の願望を実現するための重要な一歩」だと述べた。

 ただし、EU首脳会議は数時間後、ウクライナに対する500億ユーロ(約7.8兆円)の軍事支援について採決を行ったが、これにはハンガリーが拒否権を発動したため、否決された。

 日本政府はEUのウクライナとモルドヴァとの加盟交渉決定を評価し、歓迎すべきである。

 G7はロシアによる侵略を受けているウクライナを支援している。さる3月に行われた広島サミットにおいて、G7首脳は声明を発表し、冒頭で「我々G7首脳は、ウラジーミル・プーチン・ロシア大統領の選択により始められたウクライナという主権国家に対する軍事侵略及び戦争に敢然と抵抗しているウクライナ国民及び同国政府を支持し続けることを引き続き決意している」、末尾で「我々は、引き続きウクライナ国民及び同国政府を支持する。我々は、第三国に対するものを含め、我々の措置の影響を引き続き評価し、また、ウクライナに対する攻撃の責任をプーチン大統領及び彼の体制に問うために更なる措置をとる用意がある」と表明した。
EUのウクライナとモルドヴァとの加盟交渉決定は「ウクライナに対する攻撃の責任をプーチン大統領及び彼の体制に問うための更なる措置」である。

 日本国政府は、日本国としても、またG7議長国としてもこの決定を評価・歓迎すべきである。


(The following was translated automatically)
On January 14 , EU member states decided to officially start accession negotiations for Ukraine and Moldova , and also made Georgia an official candidate for membership. Ukraine and Moldova applied to join the EU in February 2022 , immediately after Russia launched a full-scale invasion of Ukraine, and were approved as candidate countries in June 2023 . Georgia also applied at the same time , but was not given the status of a candidate for membership.
A spokesperson for European Council President Michel said the decision was taken unanimously. Hungary opposed the start of Ukraine’s accession negotiations, but did not exercise its veto. During the vote, Hungarian Prime Minister Orban temporarily left the conference room. 26 countries other than Hungary appreciated this action.
“This is a victory for Ukraine. This is a victory for Europe. A victory that motivates, energizes and strengthens,” Ukrainian President Volodymyr Zelenskiy said.
U.S. National Security Advisor Sullivan also welcomed the EU’s “historic” move. He said it was an “important step towards realizing Ukraine and Moldova’s aspirations to join the EU and the North Atlantic Treaty Organization (NATO).”
However, a few hours later , the EU summit voted on 50 billion euros (approximately 7.8 trillion yen) in military aid to Ukraine, but this was rejected after Hungary exercised its veto.
The Japanese government should evaluate and welcome the EU ‘s decision to negotiate accession with Ukraine and Moldova .
The G -7 supports Ukraine, which is being invaded by Russia. At the Hiroshima Summit held in March, the G7 leaders issued a statement that began by saying, “We, the G7 leaders, dare to stand against the military invasion and war against the sovereign nation of Ukraine, which was initiated by the choice of Russian President Vladimir Putin.” “We remain determined to continue to support the people of Ukraine and their government in the resistance,” at the end, “We continue to support the people of Ukraine and their government in the resistance. We remain determined to continue to support the people of Ukraine and their government in their resistance. We will continue to assess the impact of our actions and stand ready to take further steps to hold President Putin and his regime accountable for the attack on Ukraine .”
The EU’s decision to negotiate membership with Ukraine and Moldova is “a further step to hold President Putin and his regime accountable for the attacks on Ukraine.”
The Government of Japan, both as Japan and as the G7 Presidency , should evaluate and welcome this decision.
2023.12.02

北朝鮮問題の現況

 北朝鮮は今年の5月と8月、偵察衛星打ち上げに失敗したが、11月21日「万里鏡(マンリギョン)1号」を地球周回軌道に投入することに成功した。北朝鮮メディアは、金正恩総書記の満面の笑顔とともに、日米韓の米軍基地や米ホワイトハウスなどの主要施設の撮影に成功したことを連日伝えている。ただし、施設の画像はまだ放映していない。もろもろの事情があるのだろうが、画像の精度が低いためかもしれない。

 北朝鮮の軍事力が今回の成功により一段と向上したことは間違いない。いまや、北朝鮮の衛星が上空から世界の軍事施設を見るようになってきたのであり、いずれ1メートル、さらに数十センチのものも見分けることとなるだろう。北朝鮮のこのような軍事能力の向上は日本にとって重大な脅威となるが、米国の国防総省(ペンタゴン)にとっても由々しい事態であるに違いない。もっとも、北朝鮮は以前から米国などの衛星で動向を逐一フォローされており、脅威も感じていたのだろうが、これからは、というか、いずれは米国とも対等に近い立場で偵察しあうことになるのだろう。

 我々はどのように対応すべきか。米政府は30日、大量破壊兵器プログラムに使われる資金や技術の制裁逃れを助長しているとして、外国を拠点とする代理人らを新たに対象とする追加制裁措置を発表した。

 米国の宇宙軍司令部は「北朝鮮の偵察衛星が活動できないようにすることもできる」との考えを示したと報じられた。具体的な方法については、韓国メディアは「レーザーなどを利用して、衛星に搭載されているカメラの機能などを作動しないようにすることや、衛星を破壊することを意味する」と報じている。しかし、これは極めて危険なことであり、米軍としてもそう簡単にできることでない。もしそんなことをすれば、地球を周回している米国の衛星も攻撃を受け、宇宙は収拾のつかない大混乱に陥るからである。

 制裁の強化は合理的な対応だとみられている。だが、これも簡単でない。核実験やミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対して、国連安保理で2006年10月以降10数回の制裁決議が採択されている。毎回、制裁措置は強められているが、中国やロシアが反対に回ることが多かった。
 北朝鮮が6回目の核実験を強行した際には、決議案は全会一致で採択された(決議第2375号:2017年9月採択)。
 2017年11月に北朝鮮が新型のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験だとして、弾道ミサイルを発射した時にも制裁決議が全会一致で採択された(決議第2379号: 2017年12月採択)。

 しかし制裁決議はどのていど効き目があったか。北朝鮮が米国との交渉において、なんとか制裁の撤廃、あるいは緩和を実現しようとしたのは事実である。2019年2月のハノイにおけるトランプ大統領・金正恩総書記の第2回会談では、制裁の緩和が最大の争点であった。

 この会談は失敗に終わったが、北朝鮮はその後も必要物資を何とか、どこからか調達してきた。国民が塗炭の苦しみにあえいでいるのは100%でないかもしれないが、事実である。にもかかわらず、北朝鮮は執拗に弾道ミサイルを発射し、偵察衛星まで打ち上げに成功したのである。軍事面だけでない。平壌などでは自動車が増えており、一部の民間人はそれを利用している。このような事実にかんがみると、北朝鮮に対する制裁措置の効果を測るのは難しいといわざるを得ない。

 今年も師走、北朝鮮をめぐる情勢を大きくまとめてみると、北朝鮮だけが政策目的を実現するため盛んに動いており、一定の成果を挙げている。その政策が各国にとっては認められないものであっても突き進んでいる。

 一方、日本や米国は政策を持たないわけではないが、その実現のため動いているとは思えない。北朝鮮がミサイル実験や偵察衛星の発射などを行うのでその非難に明け暮れたのは事実であるが、その効果は、前述したように、小さい。

 米国の場合は政権ごとに対北朝鮮政策が異なる。現バイデン政権は北朝鮮問題に熱意をもって臨んでいるとは思えない。中国との関係、ウクライナ侵攻とロシアとの対峙、パレスチナのガザ問題などの急務があるので、北朝鮮に割ける余力はないという事情も確かにあるが、それにしても現政権はトランプ前政権とくらべて北朝鮮に関心を向けていない。米国は来年大統領選挙であり、次の政権になると北朝鮮政策が変わるか、保証の限りでないが、少なくとも現政権ではこれまでのやり方を踏襲すること以上は期待できないと思われる。

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