1月, 2019 - 平和外交研究所 - Page 3
2019.01.10
金委員長は昨年末トランプ大統領に書簡を送っていた。その内容は公開されていないが、トランプ大統領は「素晴らしい手紙であった」と喜んだ。また、金委員長が新年の辞で述べたことも前向きであった。これらを通じて、両指導者は非核化の目標に変わりはないことを確かめ合った。実務者協議は停滞しているが、両指導者の姿勢は明確だ。
金委員長はなぜ中国へ行ったか。1月8日は金委員長の誕生日であり、その祝賀を北京で行うことは異例である。初めてのことではなかったか。
金委員長は昨年3回訪中しており、今度は習近平主席が訪朝する番だ。そう決まっているのではないが、だれが考えてもそれは北朝鮮が期待していることである。
にもかかわらず、金委員長が訪中したのは、近く米国の大統領と再び会談するにあたって、北朝鮮としては中国との緊密な関係を背景として米国との関係を進めるのだという姿勢を明確にしておくためであったようだ。
金委員長がそこまであえてしたのは、トランプ大統領から要求されることは北朝鮮の安全にとって深刻な危険を伴うことであると考えているからだと思われる。
すなわち、トランプ大統領と会談すれば、北朝鮮が核兵器を含むすべての核関連施設を検証にゆだねる「申告」をする決断を迫られる。これは「非核化のリスト」と呼ばれることもある。北朝鮮にとってこれは非常に危険なことである。その「申告」には、核兵器が何発、どこに保管されているか、それを、いつ、どこで、だれが廃棄するのかまで記載されるのであり、そんなことを米国に示すのは北朝鮮としては首を洗って敵に差し出すようなものだからである。北朝鮮内部には、そのような「申告」は危険だ、そんなことをすれば北朝鮮は滅びると心配する人がいるだろう。金委員長は北朝鮮で絶対的な権力者であっても、国民からそのような悲鳴が上がれば、無視できない。
つまり、金委員長は「非核化」を決断する前に、中国との緊密な関係を再確認しておこうとしたのであろう。そうすれば、「非核化」後の北朝鮮にとって安全保障面での後ろ盾になるし、また、北朝鮮内部を非核化で引っ張っていくのに役立つからである。
中朝関係は、東西冷戦の終結、両国、とくに北朝鮮の指導者の交代などを経てかなり揺らいできたが、この際金委員長としては、中国との特別に緊密な関係を再確認することが最適だと改めて認識したのだと思われる。
金委員長の訪中のもう一つの目的は、中国の改革開放と経済発展の実情を自ら視察し、北朝鮮の経済発展に役立たせることである。
過去3回の訪中時にも経済関連施設、とくに農業研究施設を視察しており、今回は医薬品工場やハイテク企業が集まる「北京経済技術開発区」を視察した。
金委員長は「中国の発展経験は非常に貴重なものであり、今後も訪れて実地で見分し、交流したい」と述べている(新華社1月10日)。
中国は北朝鮮がこのように親近感を示し、頼ってくることを歓迎している。「弟分になった」とは口に出して言わないだろうが、実際にはそのような気持ちなのではないか。
中国は北朝鮮が「非核化」することも賛成している。中国はもともと北朝鮮の核開発を苦々しく見守ったのであり、「非核化」は中国にとっても好ましいことである。
今回の金委員長の訪中について公式の発表はないが、新華社電の報道は両首脳が朝鮮半島の平和と安定に貢献したことを伝えており、その中で金委員長は「半島の非核化の立場を堅持する」と述べ、習主席は「北朝鮮が半島の非核化の方向を堅持することを支持する」と応じている。
金正恩委員長の訪中(第4回目)
金正恩委員長は1月7~10日、第4回目の訪中を行った。最大の目的はトランプ大統領との再会談に備え、中国との関係を再確認しておくことであったと思う。金委員長は昨年末トランプ大統領に書簡を送っていた。その内容は公開されていないが、トランプ大統領は「素晴らしい手紙であった」と喜んだ。また、金委員長が新年の辞で述べたことも前向きであった。これらを通じて、両指導者は非核化の目標に変わりはないことを確かめ合った。実務者協議は停滞しているが、両指導者の姿勢は明確だ。
金委員長はなぜ中国へ行ったか。1月8日は金委員長の誕生日であり、その祝賀を北京で行うことは異例である。初めてのことではなかったか。
金委員長は昨年3回訪中しており、今度は習近平主席が訪朝する番だ。そう決まっているのではないが、だれが考えてもそれは北朝鮮が期待していることである。
にもかかわらず、金委員長が訪中したのは、近く米国の大統領と再び会談するにあたって、北朝鮮としては中国との緊密な関係を背景として米国との関係を進めるのだという姿勢を明確にしておくためであったようだ。
金委員長がそこまであえてしたのは、トランプ大統領から要求されることは北朝鮮の安全にとって深刻な危険を伴うことであると考えているからだと思われる。
すなわち、トランプ大統領と会談すれば、北朝鮮が核兵器を含むすべての核関連施設を検証にゆだねる「申告」をする決断を迫られる。これは「非核化のリスト」と呼ばれることもある。北朝鮮にとってこれは非常に危険なことである。その「申告」には、核兵器が何発、どこに保管されているか、それを、いつ、どこで、だれが廃棄するのかまで記載されるのであり、そんなことを米国に示すのは北朝鮮としては首を洗って敵に差し出すようなものだからである。北朝鮮内部には、そのような「申告」は危険だ、そんなことをすれば北朝鮮は滅びると心配する人がいるだろう。金委員長は北朝鮮で絶対的な権力者であっても、国民からそのような悲鳴が上がれば、無視できない。
つまり、金委員長は「非核化」を決断する前に、中国との緊密な関係を再確認しておこうとしたのであろう。そうすれば、「非核化」後の北朝鮮にとって安全保障面での後ろ盾になるし、また、北朝鮮内部を非核化で引っ張っていくのに役立つからである。
中朝関係は、東西冷戦の終結、両国、とくに北朝鮮の指導者の交代などを経てかなり揺らいできたが、この際金委員長としては、中国との特別に緊密な関係を再確認することが最適だと改めて認識したのだと思われる。
金委員長の訪中のもう一つの目的は、中国の改革開放と経済発展の実情を自ら視察し、北朝鮮の経済発展に役立たせることである。
過去3回の訪中時にも経済関連施設、とくに農業研究施設を視察しており、今回は医薬品工場やハイテク企業が集まる「北京経済技術開発区」を視察した。
金委員長は「中国の発展経験は非常に貴重なものであり、今後も訪れて実地で見分し、交流したい」と述べている(新華社1月10日)。
中国は北朝鮮がこのように親近感を示し、頼ってくることを歓迎している。「弟分になった」とは口に出して言わないだろうが、実際にはそのような気持ちなのではないか。
中国は北朝鮮が「非核化」することも賛成している。中国はもともと北朝鮮の核開発を苦々しく見守ったのであり、「非核化」は中国にとっても好ましいことである。
今回の金委員長の訪中について公式の発表はないが、新華社電の報道は両首脳が朝鮮半島の平和と安定に貢献したことを伝えており、その中で金委員長は「半島の非核化の立場を堅持する」と述べ、習主席は「北朝鮮が半島の非核化の方向を堅持することを支持する」と応じている。
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