7月, 2014 - 平和外交研究所 - Page 2
2014.07.28
なお、OSIグループ(イリノイ州)のシェルダン・ラビン会長兼最高経営責任者(CEO)は28日、上海で記者会見し、「誠に申し訳ない」と謝罪した(7月28日時事通信)。
○上海福喜食品有限公司は、世界最大の食肉加工グループであるアメリカのOSIグループが上海に作った会社である。上海市の公的書類によれば、1996年4月4日、上海市嘉定区馬陸鎮陳村村陳宝路58号に、21000平方メートルの工場を作った。営業期限は2036年4月3日まで。中国との合弁会社ではなく、この時代には珍しい100%独資会社である。
○当時の上海を牛耳っていたのは「上海閥」の総帥・江沢民元主席である。上海浦東新区が開発される前の1996年に、これほど立地のよい場所に、東京ドームの半分ほどの巨大な工場を、アメリカの独資で作れるというのは、当時の国家主席である江沢民のバックアップがなければ不可能だ。アメリカはこの工場を稼動させたことによって、ケンタッキーやマクドナルドの店舗を中国全土に展開していった。上海福喜は、江沢民時代の米中友好の象徴的工場なのである。
○習近平主席は、「江沢民派の一掃」を狙った権力闘争の真っ只中にある。「汚職幹部追放」の名の下に、江沢民派の大物幹部たちを、次々に血祭りにあげている。薄煕来・重慶市党委書記兼中央政治局委員、周永康・中央政治局常務委員、徐才厚・中央軍事委員会副主席・・・そして、この8月に88歳を迎える江沢民本人にも、お縄が回るのではとささやかれるほどだ。
○中国最大の経済都市である上海は、これまでつねに、中南海の権力闘争の「本丸」のひとつとなってきた。もともとは、江沢民「上海閥」の牙城だった。それを胡錦濤「団派」が、2006年の陳良宇・上海市党委書記追い落としや、2010年の上海万博を機に、ひっくり返そうとした。
○昨年になって、胡錦濤の「団派」を引き継いだ李克強首相が、「上海自由貿易区」を設立して上海利権獲得を狙った。ところが習近平主席は、李克強首相に昨年9月に上海自由貿易区を設立だけさせて、昨年11月の「3中全会」以降、その利権を根こそぎ奪いつつある。いまの上海は、「上海閥」「団派」「太子党」(習近平派)が入り乱れた群雄割拠の戦国時代である。趨勢で言えば、習近平派が「上海閥」と「団派」を駆逐している最中である。
○習近平主席は現在、「アメリカ憎し」の気分でもある。昨年6月にカリフォルニア州の農園で初めてオバマ大統領と米中首脳会談に臨んだ習近平主席は、「新たな大国関係」を提起した。これは簡単に言えば、太平洋の東西を、アメリカと中国が2分して統治しようという考えだ。
ところが、中国が海洋進出すればするほど、日本や東南アジアは中国を警戒して、アメリカのプレゼンスを求める。先月7月9日、10日に北京で開かれた第6回米中戦略・経済対話の際、習近平主席が「中米で新たな大国関係を構築しよう」と再度持論を述べたところ、ケリー米国務長官が、「もうその話は何遍も聞いたが、本当に中国がそうしたいのなら、まず行動で信頼できる国になれ」と突き放した。習近平が国家主席になってからの約1年半で、公の場においてこれほど恥をかかされたことはなかった。私はこの時点で、「近く中国国内のアメリカ企業が狙い打ちされるのではないか」という予感がした。
○現在、中国のマスコミは、習近平政権に恐れおののいている。中国メディアで最大の中国中央テレビの経済チャンネルが、習近平の意向に背いたところ、この6月に、トップ以下幹部が一網打尽にされた。そんな中で上海衛視が、政府からの「指令」もなく、アメリカ企業に対して「1ヵ月の潜入取材」などできるはずもない。
賞味期限切れの食肉と権力闘争
賞味期限切れの食肉を販売していた上海福喜食品について、ネット上で興味ある記事がしきりに転載されている。元は近藤大介氏の2014年7月28日付「北京のランダム・ウォーカー」『現代ビジネス』らしい。確認しなければならないことがいくつか含まれているが、つぎの諸点がとくに注目されたのでとりあえず転載させてもらう。なお、OSIグループ(イリノイ州)のシェルダン・ラビン会長兼最高経営責任者(CEO)は28日、上海で記者会見し、「誠に申し訳ない」と謝罪した(7月28日時事通信)。
○上海福喜食品有限公司は、世界最大の食肉加工グループであるアメリカのOSIグループが上海に作った会社である。上海市の公的書類によれば、1996年4月4日、上海市嘉定区馬陸鎮陳村村陳宝路58号に、21000平方メートルの工場を作った。営業期限は2036年4月3日まで。中国との合弁会社ではなく、この時代には珍しい100%独資会社である。
○当時の上海を牛耳っていたのは「上海閥」の総帥・江沢民元主席である。上海浦東新区が開発される前の1996年に、これほど立地のよい場所に、東京ドームの半分ほどの巨大な工場を、アメリカの独資で作れるというのは、当時の国家主席である江沢民のバックアップがなければ不可能だ。アメリカはこの工場を稼動させたことによって、ケンタッキーやマクドナルドの店舗を中国全土に展開していった。上海福喜は、江沢民時代の米中友好の象徴的工場なのである。
○習近平主席は、「江沢民派の一掃」を狙った権力闘争の真っ只中にある。「汚職幹部追放」の名の下に、江沢民派の大物幹部たちを、次々に血祭りにあげている。薄煕来・重慶市党委書記兼中央政治局委員、周永康・中央政治局常務委員、徐才厚・中央軍事委員会副主席・・・そして、この8月に88歳を迎える江沢民本人にも、お縄が回るのではとささやかれるほどだ。
○中国最大の経済都市である上海は、これまでつねに、中南海の権力闘争の「本丸」のひとつとなってきた。もともとは、江沢民「上海閥」の牙城だった。それを胡錦濤「団派」が、2006年の陳良宇・上海市党委書記追い落としや、2010年の上海万博を機に、ひっくり返そうとした。
○昨年になって、胡錦濤の「団派」を引き継いだ李克強首相が、「上海自由貿易区」を設立して上海利権獲得を狙った。ところが習近平主席は、李克強首相に昨年9月に上海自由貿易区を設立だけさせて、昨年11月の「3中全会」以降、その利権を根こそぎ奪いつつある。いまの上海は、「上海閥」「団派」「太子党」(習近平派)が入り乱れた群雄割拠の戦国時代である。趨勢で言えば、習近平派が「上海閥」と「団派」を駆逐している最中である。
○習近平主席は現在、「アメリカ憎し」の気分でもある。昨年6月にカリフォルニア州の農園で初めてオバマ大統領と米中首脳会談に臨んだ習近平主席は、「新たな大国関係」を提起した。これは簡単に言えば、太平洋の東西を、アメリカと中国が2分して統治しようという考えだ。
ところが、中国が海洋進出すればするほど、日本や東南アジアは中国を警戒して、アメリカのプレゼンスを求める。先月7月9日、10日に北京で開かれた第6回米中戦略・経済対話の際、習近平主席が「中米で新たな大国関係を構築しよう」と再度持論を述べたところ、ケリー米国務長官が、「もうその話は何遍も聞いたが、本当に中国がそうしたいのなら、まず行動で信頼できる国になれ」と突き放した。習近平が国家主席になってからの約1年半で、公の場においてこれほど恥をかかされたことはなかった。私はこの時点で、「近く中国国内のアメリカ企業が狙い打ちされるのではないか」という予感がした。
○現在、中国のマスコミは、習近平政権に恐れおののいている。中国メディアで最大の中国中央テレビの経済チャンネルが、習近平の意向に背いたところ、この6月に、トップ以下幹部が一網打尽にされた。そんな中で上海衛視が、政府からの「指令」もなく、アメリカ企業に対して「1ヵ月の潜入取材」などできるはずもない。
2014.07.27
日本国政府は2014年7月1日、集団的自衛権の行使を可能にする新しい閣議決定を行なった。安倍首相のかねてからの持論が実現したわけであるが、この閣議決定には手続き面、内容面で強い異議の声が上がっている。
手続き面では、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が報告書を提出したのが2014年5月15日であり、それから閣議決定の採択までわずか1カ月半というスピード決着であった。政府・与党は何回も会合を開いたのは事実であるが、議論の内容は、一時期、日替わりメニューのように変化するありさまであった。議論が尽くされたとは、国民は思っていないであろう。
内容的には、今回の決定により憲法の解釈が変更されたのか、問題となった。政府は新方針について、「憲法解釈の再整理という意味では一部変更ではあるが、憲法解釈としての論理的整合性、法的安定性を維持している。いわゆる解釈改憲ではない」という考えを示している(6月26日、各紙に報道された想定問答)。憲法解釈を変えたとは言わないよう努めていることが伝わってくるが、歴代の内閣の下ではできなかった集団的自衛権の行使ができるようになったので、やはり変更であろう。
集団的自衛権の行使が認められるとどうなるかについての政府・与党の説明は矛盾を含んでいる。自衛隊が外国へ派遣されることになるのが集団的自衛権行使の主たる効果のはずであるが、政府は「海外派兵は従来通りしない」という説明である。また、検討段階で提示された具体的事例を実現するのに集団的自衛権の行使が必要か、についても疑問が出ている。さらに、今回の決定の結果、米国などから派兵を求められると断れなくなるのではないかという指摘も行われている。
政府が今回の閣議決定を急いだのは、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が2014年内にも行なわれる予定であることと関連があるという説もある。ガイドラインは、日本の国力の増大などを考慮し、日米安保条約の実質的片務性から生じる問題点を改善することを目指すものとして1978年初めて策定され、冷戦終了後の1997年に改訂され現行のガイドラインとなっている。その後の国際情勢と安全保障環境の変化、具体的にはわが国の周辺国における軍事活動の活発化、国際テロ組織の活動激化、海洋・宇宙・サイバー空間でのリスクの顕在化、海賊対策、PKO活動の拡大などにかんがみ、日米両国はガイドラインの見直しを検討することについて合意しており、現在防衛当局間で準備が進められている。
わが国が集団的自衛権を行使できるようになれば、日本が攻撃されていなくても公海上で自衛隊が米艦の防衛をできるようになるなど日米防衛協力の可能性は大きく拡大するので、今回の閣議決定の内容が新ガイドラインに反映されることとなるのは当然である。閣議決定を急いだのは、そのことを考慮したからであった可能性もある。しかし、集団的自衛権の行使という日本国にとってきわめて重要な問題に関する法整備についてガイドラインを理由に期限を設定するのは本末転倒である。米国のアジア太平洋戦略との関係があるので日本だけの都合だけで片付けられないが、ガイドラインは約20年おきに策定されており、次の改訂がたとえば半年、あるいは1年遅れても支障が生じる筋合いのものではない。日本国民の不安や疑念を払しょくすることが先決であろう。
今回の閣議決定は、昨年、特定秘密保護法がろくに議論もされないで成立させられたことを想起させる。安倍首相は政治のモメンタムをよく口にする。それは経験豊かな政治家としてのするどい感覚に裏付けられているのかもしれないが、政府・与党は、圧倒的な多数を占めているときこそ慎重に対応してもらいたい。
集団的自衛権の閣議決定を急いだ理由
THEPAGEに7月16日掲載されたもの。日本国政府は2014年7月1日、集団的自衛権の行使を可能にする新しい閣議決定を行なった。安倍首相のかねてからの持論が実現したわけであるが、この閣議決定には手続き面、内容面で強い異議の声が上がっている。
手続き面では、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が報告書を提出したのが2014年5月15日であり、それから閣議決定の採択までわずか1カ月半というスピード決着であった。政府・与党は何回も会合を開いたのは事実であるが、議論の内容は、一時期、日替わりメニューのように変化するありさまであった。議論が尽くされたとは、国民は思っていないであろう。
内容的には、今回の決定により憲法の解釈が変更されたのか、問題となった。政府は新方針について、「憲法解釈の再整理という意味では一部変更ではあるが、憲法解釈としての論理的整合性、法的安定性を維持している。いわゆる解釈改憲ではない」という考えを示している(6月26日、各紙に報道された想定問答)。憲法解釈を変えたとは言わないよう努めていることが伝わってくるが、歴代の内閣の下ではできなかった集団的自衛権の行使ができるようになったので、やはり変更であろう。
集団的自衛権の行使が認められるとどうなるかについての政府・与党の説明は矛盾を含んでいる。自衛隊が外国へ派遣されることになるのが集団的自衛権行使の主たる効果のはずであるが、政府は「海外派兵は従来通りしない」という説明である。また、検討段階で提示された具体的事例を実現するのに集団的自衛権の行使が必要か、についても疑問が出ている。さらに、今回の決定の結果、米国などから派兵を求められると断れなくなるのではないかという指摘も行われている。
政府が今回の閣議決定を急いだのは、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が2014年内にも行なわれる予定であることと関連があるという説もある。ガイドラインは、日本の国力の増大などを考慮し、日米安保条約の実質的片務性から生じる問題点を改善することを目指すものとして1978年初めて策定され、冷戦終了後の1997年に改訂され現行のガイドラインとなっている。その後の国際情勢と安全保障環境の変化、具体的にはわが国の周辺国における軍事活動の活発化、国際テロ組織の活動激化、海洋・宇宙・サイバー空間でのリスクの顕在化、海賊対策、PKO活動の拡大などにかんがみ、日米両国はガイドラインの見直しを検討することについて合意しており、現在防衛当局間で準備が進められている。
わが国が集団的自衛権を行使できるようになれば、日本が攻撃されていなくても公海上で自衛隊が米艦の防衛をできるようになるなど日米防衛協力の可能性は大きく拡大するので、今回の閣議決定の内容が新ガイドラインに反映されることとなるのは当然である。閣議決定を急いだのは、そのことを考慮したからであった可能性もある。しかし、集団的自衛権の行使という日本国にとってきわめて重要な問題に関する法整備についてガイドラインを理由に期限を設定するのは本末転倒である。米国のアジア太平洋戦略との関係があるので日本だけの都合だけで片付けられないが、ガイドラインは約20年おきに策定されており、次の改訂がたとえば半年、あるいは1年遅れても支障が生じる筋合いのものではない。日本国民の不安や疑念を払しょくすることが先決であろう。
今回の閣議決定は、昨年、特定秘密保護法がろくに議論もされないで成立させられたことを想起させる。安倍首相は政治のモメンタムをよく口にする。それは経験豊かな政治家としてのするどい感覚に裏付けられているのかもしれないが、政府・与党は、圧倒的な多数を占めているときこそ慎重に対応してもらいたい。
2014.07.26
○最近まで中共中央弁公庁(総書記の書記役だが、実際には医療、保安、通信なども任されている)の主任であった令計画(現全国政治協商会議副主席)の兄や姉が逮捕されている(同新聞7月24日)。
中国雑記 7月26日まで
○中共中央は昨年、言論統制を強化したが、今年は西側の憲法政治論(憲政論)や普遍的価値観論など意識形態に関する攻防戦でさらに強硬な姿勢を見せている。国家安全委員会は成立してまだ数カ月もたたないうちに海外のNGOをチェックするキャンペーンを開始した。7月20日には中央組織部(人事を担当)が前面に立って党政の幹部に対し、中華民族の優秀な伝統文化を含む思想教育を強化し、共産党員の信念と精神の祖国を守り、西側の意識形態に関する喧騒に影響され言いなりになることがないよう指示を出した(多維新聞7月20日付)。○最近まで中共中央弁公庁(総書記の書記役だが、実際には医療、保安、通信なども任されている)の主任であった令計画(現全国政治協商会議副主席)の兄や姉が逮捕されている(同新聞7月24日)。
最近の投稿
アーカイブ
- 2024年10月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月