平和外交研究所

10月, 2013 - 平和外交研究所 - Page 7

2013.10.12

ミャンマーの民主化は進むか

ミャンマーは明年、ASEANの議長国になる。2006年に議長国になる順番であったが、その時は軍事政権で、民主化運動を弾圧していたので辞退を余儀なくされた。今回は、ミャンマーの民主化がすでに進展しており、予定通り議長国になる。今年の議長国であるブルネイから議長職の引き継ぎもすでに完了した。
ミャンマーの民主化と対外開放はおおむね順調である。2008年に新憲法が制定され、2010年11月、総選挙が行われ、軍事政権下の統治機構であった国家法秩序回復評議会 (SLORC)は解散し、2011年3月、テイン・セイン大統領が選出され、民主的な政府が成立した。また、これと前後して、アウンサンスーチー氏は長年の軟禁から解除され、新体制の下で政治活動を再開した。
経済面では以前のかたくなな閉鎖体制から一変して対外開放し、日本をはじめ各国は競って投資を始めている。ミャンマーは最後のフロンティアだそうだ。また、かねてからの欧米諸国による経済制裁は撤廃される傾向にある。
ミャンマーの民主化については、しかし、まだ問題が残っている。軍人の政治における影響力がまだ一掃されていないことであり、憲法は連邦議会の上下両院とも4分の1は国軍司令官が任命することとしている。新憲法下で最初の選挙では、候補者の大多数が軍の翼賛政党(USDP)員という異常な事態となり、選挙の結果、約8割が同党員で占められた。
テイン・セイン大統領はすでに軍籍を離脱しているが、元軍人であり、また閣僚の多数は軍人である。
収監されていた政治囚は新政権によって6千人以上が釈放されたが、まだかなりの数が残っており、その実態の公表と釈放が求められている。
テイン・セイン政権は軍の影響力を色濃く残しながらも、基本的な民主化は実現し、また、対外的には各国と急速に経済関係を深めるとともに、ASEANにおいてもその政治改革は認められているのである。今後、さらなる民主化、とくに軍の影響力の排除が進むか、問題であるが、民主化を進める積極的な要因としては、ミャンマー政府を長年悩ましてきた反乱軍との休戦・和解が進展しており、なかでも問題であったカチンとの停戦も近々実現すると大統領が言明するなど、展望は明るくなっているようである。ミャンマー政治において軍を優遇しなければならない最大の理由は国内の反乱軍の存在であり、この状況が変化し国内の治安が改善されると、軍を優遇しなければならない理由がなくなる。
また、経済成長が進めば、国内を合理的な制度に変えていかなければならなくなる。
一方、新政権下で軍の影響力はこれまでのところ、極端な優遇制度とは対照的に、意外なほど抑えられているが、歴史的に虐げられてきた国民民主同盟(NLD)の動向いかんでは軍と民主化勢力との対決が先鋭化する危険もある。
2012年4月には、連邦議会で補欠選挙が行われ選挙対象となった46議席に対してNLDは44人の候補を立て、43人が当選するという圧勝を収めた。その結果、NLDとUSDPは鋭く対立する様相を見せたが、テイン・セイン大統領は、選挙はうまくいったと表明して対立は収められた。しかし、NLDのこのような優勢が今後さらに継続・発展すれば、軍の利益を代弁するUSDPとしても反発を強め、民主化に逆行する動きを見せる恐れがないとは言えないかもしれない。次回の総選挙は2015年に行なわれる予定である。

2013.10.11

核不使用声明への参加

日本政府は核兵器の不使用声明に参加することになったと11日付の各紙が報じている。この声明は昨年春の核兵器不拡散条約(NPT)の第1回準備委員会(2015年のNPT再検討会議のための準備委員会)から始められ、秋の国連総会第1委員会(軍縮を扱う)、本年春のNPT第2回準備委員会でも続けられ、現在開催中の国連総会第1委員会でも注目されていたものであり、内容的には、「核兵器の不使用」あるいは「核兵器の違法性」が主題であったりするが、「不使用」と「違法性」は密接な関係があり、一つの流れの運動である。本ブログでも4月26日に取り上げたことがある。
日本政府は、この声明に関して関係国、とくにニュージーランドなど急進派の国々と非公式に交渉し、双方の間で歩み寄ることができたようだ。その努力は称賛に値する。もし、これまでのように、この声明に不参加の態度を取り続けるならば、2015年のNPT再検討会議で、日本は核兵器問題について消極的であるという印象を各国に残すこととなると予想されるからである。実は、一部の国からは、日本は日米安保条約を大事にするが、核の廃絶や不使用については腰が据わっていないと思われていたきらいがあるだけに、核兵器不使用声明に参加して積極的姿勢をアピールできることは重要である。
米国のオバマ大統領は広島を訪問すると言い残してルース前駐日大使は帰っていった。これが実現することは歴史的な意義がある。核兵器問題はなかなか前進しないという印象が強いが、変化している面は確実にあるようだ。

2013.10.09

習近平は決意を固めたか

10月8日付の多維新聞(海外中国人の新聞 中国によく通じている)は、香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(南華早報)を引用して、APECに出席のためバリ島に滞在中の習近平主席が、講演の中で「一挙に改革を深化させる。後ろ向きの道を歩む「転覆性過ち」が出てくるのを許さない」と語ったことを紹介した上、これは習近平が昨年11月に中共総書記に就任して以来、中国の改革の方向性について行ったもっとも重要な態度表明であると評している。
改革に前向きの表明を行なったことがよいことであるのは当然としても、この言葉がなぜそのように特別なのか。中国の外ではわかりにくい。習近平は革命路線重視か、改革のさらなる推進かという路線対立の真っ最中にあってどちらをより重視しているかよく分からない態度を取っているため、一部の人からは旗幟鮮明にすべきであると迫られていたのである。そのような背景とともにこの態度表明を聞けば、習近平がとうとう改革重視だと断言した、だから重要なのだということになりそうである。
しかし、この表明だけで路線対立の決着がついたか。ことは簡単でない。習近平は就任以来「大衆を尊重せよ」と呼びかけており、また数週間前には「毛沢東思想を大事にしなければ天下は大乱になる」と言っていた。今回の態度表明もどこまで実行されるか、まだよく分からない。

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