平和外交研究所

5月, 2013 - 平和外交研究所 - Page 2

2013.05.16

核燃料の再処理

2013年5月2日付米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は日本の核燃料再処理に関して、「日本は米国の反対にもかかわらず(over the objections of the Obama administration)大規模な六ヶ所村工場を稼働させようとしている」という書き出しの記事を掲載している。
米国が具体的にどのように反対しているのか、説明はないが、この記事は全体として、六ヶ所村プラントの稼働開始は、核拡散を助長するおそれがあるという趣旨である。次のようなことも言っている。
北朝鮮の活発な核開発にかんがみると、六ヶ所村プラントの稼働開始は本来の想定よりはるかに広範な影響(far reaching affect)を他の核計画に及ぼすおそれがあると日、米、韓の公務員は恐れている。
中国、韓国および台湾は六ヶ所村を注意深く観察しており、中国は現有の設備を拡大すべきか、また、他の国は自分たちの核燃料技術を開発すべきか参考にしようとしている。また、韓国はすでに日本と同様の再処理の許可を米国に求めている。また、中国は仏アレバ社と六ヶ所村と同規模の再処理施設の建設契約を結んだ。六ヶ所村の稼働開始はこの地域に新しい次元の摩擦(a new dimension of friction)を惹起する恐れがある。
米国のもう一つの懸念は、核燃料のストックの安全性であり、日本は原子力発電が大幅に減少したのでプルトニウムのストックがそれだけ多くなり、安全面での危険性が高まっている。数週間前に米国は日本に安全面での懸念を伝えた。

米国は、日本をP5では唯一の例外国として核燃料の再処理を認めているが、この状態に黄色信号が点いている。韓国の経済成長とともに、これまでのように、日本はよいが韓国はダメというように片づけることは困難になりつつある。
日米原子力協定は2018年7月に満期を迎える。日米とも何もしなければ自動延長されるか。当然視はできない。現在未決着状態にある米韓原子力協定の更改問題との関連もある。
さらに深層心理としては、米国には水平的拡散のみならず、垂直的拡散、すなわち日本の核武装を懸念する気持ちがあるだろう。それは戦後つねに存在してきた問題であるが、現在の日本は右傾化していると米国は見ているのではないか。一般の日本人は、日本の核武装などありえないと思っているが、憲法が改正されるとどうなるか。
カーター政権時代、米国は日本の再処理を認めない方針を打ち出そうとしたが、日本の猛烈な働きかけにより、それは途中で沙汰やみとなった。しかし、そのときと国際環境は大きく異なっている。

2013.05.15

中国銀行と北朝鮮銀行の取引停止

中国は最近、四大銀行の北朝鮮の銀行との取引を停止した。国連での制裁強化と米国からの強い要請にこたえた結果であると見られている。中国が北朝鮮に対してどの程度強い態度に出るかはかねてからの問題であり、米国などの期待に、口先ではともかく、実際にはなかなか応じず、お茶を濁す程度の対応であったこともあるようだ。しかし、最近は北朝鮮のあまりの激しさに中国としても嫌気がさし、お灸を据えようとした可能性がある。日本などにも意見を求めてくることもあることを見ると、単なるポーズだけでもなさそうである。
しかし、もう少し見届けなければならないこともある。一つは、銀行間取引の停止により北朝鮮がどのくらい困るか、であり、もう一つは、取引停止のニュースがどのように出てきたかである。中国はみずからそのニュースを流したのではない、も確かめてみたい。

2013.05.14

パキスタン下院選挙

パキスタンの下院選挙で野党のシャリフ派が第1党になった。同氏はタリバンとも対話路線であるし、これまでの米国との協調路線は修正されるだろう。米国はアフガニスタンから兵を撤退させるが、タリバンとの関係がますます困難になる可能性がある。ビンラディンを殺害したのは成功であったが、パキスタンとの関係では後遺症が思いのほか強く残っているようだ。バルチスタン州での作戦ではパキスタン軍の協力が不可欠であり、そちらの方面でも今後の展開は予測しがたい面がある。無人機による被害も印象を悪くした。中国との関係は米国とちがってよくなるか。

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.