平和外交研究所

ブログ

カレント

2014.06.06

G7とロシア・中国

今年のG8は、ウクライナ情勢の関係でロシアを締め出し、急遽6月4日にブラッセルでG7として開催された経緯から明らかなように、ウクライナに関する討議が大きな部分を占めた。
サミットが終了した翌日である6日には、ノルマンディー上陸作戦70年記念式典が開かれるのでプーチン大統領も出席のため訪仏し、オランド仏大統領とはエリゼ―宮で、また、キャメロン英首相とはシャルル・ド・ゴール空港で会談した。両者からサミットの状況の説明を受け、ロシアに対する厳しい見方を伝えられたのであろう。プーチン大統領としては、ブラッセルのG7は愉快なことでなかっただろうが、記念式典では欧米諸国とともに戦勝国の大統領として参加したので違った気分だっただろう。また、オランド大統領がロシアを孤立させないよう努めたこともあり、プーチン大統領と各国の首脳は冷静に対応したようである。
記念式典は予定通り行われ、先月末選出されたばかりのポロシェンコ・ウクライナ大統領も出席したのでプーチン大統領と顔を合わせたはずである。両者の会談は予定されていなかったが、米英仏などの首脳がプーチン大統領に対し、ウクライナの安定化のため貢献するよう強く勧めた可能性がある。プーチン大統領は、訪仏前からウクライナ大統領選の結果を認めていた。
ウクライナが今後安定に向かうか、ロシアの出方が重要である。G7ではロシアに対し警戒を緩めず、さらなる制裁措置もありうることを議論していたが、ロシア軍は結局東ウクライナへ侵入せず国境付近から離れたので、緊張した雰囲気は遠ざかっている。ウクライナ情勢は大統領選の成功とロシアの静観により、ひと山越えた感がある。
ノルマンディー上陸作戦70年記念日とG7はまさに「昨日・今日」のことであり、そんなに早く和解するとは言えないとしても、10年前のノルマンディー上陸作戦記念式典はイラク戦争をめぐって対立したブッシュ米大統領とシラク仏大統領が和解するきっかけとなった。この故事を引用してロシアと欧米諸国の和解の可能性を論じる向きもあるようである。

G7では、中国の東シナ海および南シナ海での行動についても議論が行なわれた。コミュニケは中国を名指ししていないが、「我々は,普遍的に認められた国際法の原則に基づく海洋秩序を維持することの重要性を再確認する。我々は,国際法及び国際水域における管轄権に関して国際的に認められた原則と整合する形で,海賊,その他の海上犯罪に立ち向かうための国際的な協力に引き続き関与する。我々は,東シナ海及び南シナ海での緊張を深く懸念している。我々は,威嚇,強制又は力により領土又は海洋に関する権利を主張するためのいかなる者によるいかなる一方的な試みにも反対する。我々は,全ての当事者に対し,領土又は海洋に関する権利を国際法に従って明確にし,また主張することを求める。我々は,法的な紛争解決メカニズムを通じたものを含め,国際法に従って,紛争の平和的解決を追求する紛争当事者の権利を支持する。我々はまた,信頼醸成措置を支持する。我々は,国際法並びに国際民間航空機関(ICAO)の基準及び慣行に基づく,航行及び上空飛行の自由と併せ民間航空交通の効果的な管理の重要性についても強調する」と言明した。これは、数日前のシンガポールでの安倍首相およびヘーゲル米国防長官の発言とほぼ同様の内容であり、中国が激しく反発したものである。
一方、6月26日から8月1日の間に開催されるRIMPAC環太平洋合同演習に中国が初めて参加することが明らかになった。4隻の船で行くそうである。中国は2012年、主催国である米国から参加の招待を受け、2013年6月に中国の外相は受諾の意向を示していたが、シンガポールで日米と厳しく対立したにもかかわらず、参加を実現することになったのである。中国側でも一定のバランス感覚が働いているのを期待したい。この合同演習では日本から参加する海将がvice commander to the deputy commander of the Combined Task Forceとして補佐することになっており、参加する中国の海軍は当然日本の部隊とも協力関係に入る。

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.