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2015.11.16

(短文)インドネシアが南シナ海問題に積極的になってきた理由

 南シナ海での中国の膨張的行動に関し、フィリピン、ベトナムに次いでインドネシアの対応が注目されている。多維新聞(米国に拠点がある中国語新聞)11月13日付はその理由を次のように分析している。

 従来インドネシアは南シナ海の問題について中立的な態度を維持していた。しかし、最近態度が変わった。なぜか。
 さる10月に訪米したウイドド大統領とオバマ大統領との会談後の共同声明は、「両国は南シナ海における最近の事態について懸念を共有する」「すべての関係国は南シナ海の情勢を緊張させるいかなる行動も回避することが非常に重要である」など述べるとともに、インドネシアと米国が航行の自由を確保する重要性について共通の認識に到達したことを明らかにした。
 11月11日、同国の政治・司法・安全相は、「インドネシア領であるNatuna諸島に関し、中国と話し合いで解決できなければ、国際司法裁判所に提訴する可能性がある。それが一番良い解決策だ」と語った。
 中国は現在、同諸島の領有権を主張していない。11月12日、中国外交部のスポークスマン洪磊は、同諸島の主権はインドネシアに属することを明言している。インドネシアの大臣が述べたのは、排他的経済水域が中国と重複する問題である。
 
 インドネシアの態度変化は6つの観点から見ることができる。
 第1に、インドネシアは将来中国がNatuna諸島に対する領土主権を再び主張してくることを恐れ、インドネシアの主権を強化しておこうとしたのだろう。同諸島は宋代から中国の支配下にあり、同諸島を統治した最後の王国は中国人が創立したものであり、以前の九段線は同諸島を含んでいたので、この心配は理由がないわけでない。
 第2に、インドネシアはASEANの重鎮として、米国と関係諸国との間の調停役を務めたい考えであり、また、そうすることが将来TPPへ加入する準備としても役立つと考えている。
 第3に、インドネシアは将来AIIBから380億ドルを借り入れたいと表明したことがある。このためにNatura諸島に関する主張を強めておいて、後に妥協すれば取引材料として役立つと考えている。
 第4に、インドネシアはEEZについて中国との交渉の準備を始めている。
 第5に、マレイシアとの領海紛争とも関連がある。中国との話し合いが成功すれば、あたかも中国からインドネシアの同諸島に対する領有権について承認された形になるからだ。
 第6に、南シナ海の開発の可能性が拡大するにつれ各国の軍事力も拡大する傾向にある中で、インドネシアも海軍力を充実させ、ベトナムなどの越境漁業の取り締まりを強化している。

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