中国
2021.09.17
豪州は核兵器不拡散条約(NPT)の参加国であり、AUKUSの下での原潜技術供与が同条約に違反しないか問題になりうるが、モリソン氏は「豪州は核兵器の獲得を目指しているわけではない」と主張し、バイデン氏も豪州が保有するのは「原子炉を動力とした通常兵器搭載の潜水艦だ」と説明した。これらの説明でNPTをクリアできるか。豪州は元来NPT参加国の中でも非核を厳守してきたので、批判の声が上がる可能性は排除できないが、動力としての原子炉は核兵器でないとの考えで乗り切るのはさほど難しくないかもしれない。
AUKUSの設置は中国への対抗が目的であることは明らかであり、中国は反発するとみられている。しかし、米国が豪州と英国を誘って共同の安全保障枠組みを設置したことは、中国が南シナ海で国際法違反の拡張行動を取り続け、また公海における航行の自由を脅かし、台湾に対しては軍事力で揺さぶりをかけ、東シナ海でも尖閣諸島へのハラスメントを繰り返したこと、また、中国の新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の人権を擁護せず、香港では国際約束を無視して強引に本土化し、民主派を弾圧したことなどに触発された結果である。
EUの主要国、とくに英、仏、独なども米国と同様、中国に対抗する必要性を認識するようになり、相次いで海軍艦艇を南シナ海へ派遣している。フランスは2021年2月、原子力潜水艦を、英国は8月、空母クイーン・エリザベスを派遣し、またドイツはフリゲート艦を向かわせている。
日米豪印4か国は最近インド・太平洋海域での戦略対話(クアッド)を強めてきた。9月末には首脳会合を行うことが予定されている。米欧諸国が、それに加え、軍事的な面で連合して行動することは第二次大戦後初めてのことである。それは、南シナ海から東シナ海にまで延びる海域における中国の行動があまりにも国際法上問題であり、対処困難であると感じているからである。
中国には中国の言い分があろう。中国がこのような各国連携の動きをどのように見るかはもちろん中国の問題だが、今後の道は二つしかない。一つは軍事的な対立が継続ないし激化することである。中国が9月1日に「改正海上交通安全法」を施行し、外国船に領海外退去を求めることを可能としたことはさらなる強硬策であった。
もう一つの道は、中国が各国との対話を深め、平和的に解決していくことである。どちらが優れているか、答はおのずと明らかである。
米英豪3か国の安全保障協力枠組み「AUKUS」
バイデン米大統領は9月15日、インド太平洋地域における米英豪3か国の新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS」を設置することを明らかにした。米英はまず豪州に対し原子力潜水艦の技術を支援することになっている。豪州はステルス性に優れ、長距離潜航が可能な原潜を保有することになる。米国がこの機密性が高い高度の軍事技術を供与したのはこれまで英国のみであった。今後18か月間、3か国でチームを結成し実行計画を策定するという。AUKUSの発表には、英国のジョンソン、豪州のモリソン両首相もオンラインで参加した。豪州は核兵器不拡散条約(NPT)の参加国であり、AUKUSの下での原潜技術供与が同条約に違反しないか問題になりうるが、モリソン氏は「豪州は核兵器の獲得を目指しているわけではない」と主張し、バイデン氏も豪州が保有するのは「原子炉を動力とした通常兵器搭載の潜水艦だ」と説明した。これらの説明でNPTをクリアできるか。豪州は元来NPT参加国の中でも非核を厳守してきたので、批判の声が上がる可能性は排除できないが、動力としての原子炉は核兵器でないとの考えで乗り切るのはさほど難しくないかもしれない。
AUKUSの設置は中国への対抗が目的であることは明らかであり、中国は反発するとみられている。しかし、米国が豪州と英国を誘って共同の安全保障枠組みを設置したことは、中国が南シナ海で国際法違反の拡張行動を取り続け、また公海における航行の自由を脅かし、台湾に対しては軍事力で揺さぶりをかけ、東シナ海でも尖閣諸島へのハラスメントを繰り返したこと、また、中国の新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の人権を擁護せず、香港では国際約束を無視して強引に本土化し、民主派を弾圧したことなどに触発された結果である。
EUの主要国、とくに英、仏、独なども米国と同様、中国に対抗する必要性を認識するようになり、相次いで海軍艦艇を南シナ海へ派遣している。フランスは2021年2月、原子力潜水艦を、英国は8月、空母クイーン・エリザベスを派遣し、またドイツはフリゲート艦を向かわせている。
日米豪印4か国は最近インド・太平洋海域での戦略対話(クアッド)を強めてきた。9月末には首脳会合を行うことが予定されている。米欧諸国が、それに加え、軍事的な面で連合して行動することは第二次大戦後初めてのことである。それは、南シナ海から東シナ海にまで延びる海域における中国の行動があまりにも国際法上問題であり、対処困難であると感じているからである。
中国には中国の言い分があろう。中国がこのような各国連携の動きをどのように見るかはもちろん中国の問題だが、今後の道は二つしかない。一つは軍事的な対立が継続ないし激化することである。中国が9月1日に「改正海上交通安全法」を施行し、外国船に領海外退去を求めることを可能としたことはさらなる強硬策であった。
もう一つの道は、中国が各国との対話を深め、平和的に解決していくことである。どちらが優れているか、答はおのずと明らかである。
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