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2016.10.12

(短評)台湾の蔡英文総統の両岸関係への言及

 蔡英文総統の就任(2016年5月)以来、中国は同総統が両岸関係について「現状維持」しか言わないことに強く不満であり、そのような姿勢を続けると今後両岸関係は悪化するとさかんに吹きこんでいる。これを受けて台湾内部でも蔡英文総統を批判する声があがっている。ただし、そのような批判は新聞ではよく報道されるが、台湾人全体の見方はまた別かもしれない。

 10月10日の「双十国慶節(辛亥革命記念日)」祝賀大会で蔡英文総統はそのような批判を意識したと思われる発言を行った。その要点は次の3点だ。
① 一貫性があり、予測可能で持続可能な両岸関係を構築する。
② 台湾の民主政治と台湾海峡の平和的現状を維持することが、中華民国政府の揺るぎない立場だ。
③ 現状維持は、有権者に対するわたし(蔡英文総統)の約束だ。
④ 中華民国政府は『中華民国憲法』と『両岸人民関係条例』及びその他の関連の法律に基づいて両岸関係に取り組む。

 これはよく考えた発言だ。まず注目されるのは、「現状維持」で行くことは変えないとあらためて明言したことであり、中国は刺激されるだろう。蔡英文総統はそのことを承知の上であえてそう発言したと思われる。
 しかし、蔡英文総統は2つの理由を挙げた。
 第1は、現状維持は有権者の考えであることだ。
 第2は、「中華民国」の憲法以下の法令に従う必要があることだ。はっきり言ったのではないが、「中華民国」は「中華人民共和国」と内戦を戦っており、対等の立場にあるので「中華人民共和国」の一方的な要求を聞くわけがないことを法的な立場として表明したのだと思う。
 蔡英文総統の対中姿勢に揺るぎは見られない。

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