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中国

2016.05.26

(短文)反腐敗運動の強化

 習近平主席は今年の1月、規律検査委員会で重要講話を行った。これには機微な内容が含まれていたため発表について慎重に検討されたのだろう。人民日報や新華社などが全文を報道したのは4カ月後であった(5月24日にアップした東洋経済オンラインへの寄稿文「習近平主席をめぐる異例の事態」(要旨)を参照願いたい)。
 
 反腐敗運動は中国では国家的問題であり、その帰趨いかんでは体制を揺るがす問題に発展する危険さえある。現政権は腐敗の取り締まりをかつてないほど強力に進めてきた印象だったが、習近平自身は、反腐敗運動はまだ不十分であり、さらに徹底させなければならないと講話で論じていた。
 
 この講話のフォローアップとして、1500人の高官が出国を禁止された。それと同時に、60日以内に財産、旅券、国籍などについて書面で報告するよう求められた。
 指示は細かく、財産については保有資金、資産、香港、マカオ、外国の銀行においている口座の有無、口座名(別名、匿名、連名のものをすべて含む)なども報告が求められた。
 旅券については出入国許可証、公的旅券の有無、別名、匿名の旅券も含む。
 国籍については、外国籍、居留資格、外国企業における職務、報酬などを含む。

 習近平はその講話の中で、「三爺を使うべからず」とも述べていた。中国語では、子、娘婿、妻の兄弟はすべて「爺」の字が入っている。高官が親族を利用して国有企業を食い物にするのはかねてからの大問題であり、習近平は親族を利用して悪事を働くなと言っているのだ。
(米国に本拠がある『多維新聞』5月19日付)

 また習近平は同講話の中で、高官が勤務を怠けていることを指摘していた。ある統計では中国の省級幹部の休暇取得率は大変高く、年平均31日に上る。休暇と言っても実態は仮病が多く、休暇をとって私用に充てる者も多いそうだ。
(同新聞5月24日付)

 ここに紹介した2つの事例は、多くの高官の倫理観を示唆しているように思われる。

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