平和外交研究所

中国

2013.09.22

最近の路線闘争か

最近1~2月間だけ見ても、中国のメディアでは次のような歴史問題に関する議論が戦わされている。項目と背景だけを紹介するが、現在の革命重視か、経済建設重視かの路線闘争と多少なりとも関係しているのであろう。ここにも現在の中国の一特徴が表れているように思われる。

○廬山会議
1959年、江西省の避暑地、廬山で開催された中国共産党(中共)の会議で、それまで毛沢東が旗を振って進めてきた経済的合理性を無視した極端な革命運動(総路線、大躍進、人民公社など)を彭徳懐将軍(朝鮮戦争に参加した中国軍の司令官)が批判したので、怒った毛沢東が巧みに会議を利用して彭徳懐を批判、追い落とした。
○陸定一と文革
陸定一は毛沢東と同年代の人物で、長らく宣伝工作の第一人者であったが、1966年、文革で批判され失脚した。文革の初期においては、劉少奇など、後に文革で倒される毛沢東の最大のライバルも陸定一を批判していた。陸定一が名誉を回復されたのは改革開放以後のことである。
○陳独秀
中国共産党の草創期を語るのに欠かせない人物で、清朝末期の秀才。初代中共総書記。毛沢東にとっては大先輩だが、トロツキーに共鳴し、その結果、国民党のみならず、共産党とも敵対する結果となり、失脚した。近年は同人の功績をそれなりに評価するようになっており、中国で伝記も何冊か出版されているが、それでもまたぞろ議論されているのである。
○趙紫陽は鄧力群といかに対抗したか
1980年代は改革開放の時代として知られているが、その時も革命路線を重視するグループと胡耀邦や趙紫陽ら改革派との間に激しい争いが存在し、胡耀邦が失脚した後は、革命路線を重視する鄧力群と趙紫陽の間で、どちらが胡耀邦の後任として党の総書記につくかせめぎあいがあった。総書記になったのは趙紫陽であるが、1989年6月の天安門事件で学生らに同情し、結局革命路線重視派に足元をすくわれる形で失脚した。
○林彪
林彪は1971年9月、突然家族や側近数名と飛行機で北京郊外からソ連へ向け逃亡を企て、モンゴルで墜落して死亡した。林彪は中共の副主席として、毛沢東の後継になることが約束されていたと見られていただけに、なぜそのようなことをしたのか。外部から見ると奇怪な事件であった。現在は当時の状況がかなり明らかになっており、やはり権力闘争があり、また、林彪の野望があったことが分かっている。

中国では、党の指導により歴史は書き換えられる。客観的、学術的に信頼性のある研究、著書は少なく、国民は(と言っても一定のレベル以上の人であるが)その時々の党の方針に注意しておかなければならない。ここに紹介した議論は、そのような意味合いを持っている可能性が大きい。
一般的には、毛沢東が登場する議論は、革命路線が行き過ぎであり、経済建設路線が重要であるということを訴えるものが多いが、そこはよく注意してみていく必要がある。陳独秀の場合は、毛沢東より極端であった側面があり、その再評価には革命路線重視の意味合いがあるのかもしれない。
中国では政治目標や路線は今後も変化しうる。ここで紹介した議論や、現在習近平が重視している「意識形態」に関する議論も注意が必要である。

2013.09.18

中国経済の現状を憂える多維新聞

多維新聞(2013-9-16)の大論文は、市場経済化を進めるか、国家資本主義を強化し「権貴資本主義」に堕するか、どちらの道が早いか。現在中国は岐路に立たされていると、中国経済の現状について強い危機感を示している。主要項目は次の通り。
○改革はまだ半分の道のりしか来ていない。政府は経済資源の主要部分を支配している。一部の国有企業は政治権力を独占している。
○社会矛盾はほぼ臨界点に達している。
○強大な政府は中国経済が成功した原因でない。
○改革の上部設計(顶层设计)と全体計画を重視せよ。
○政治体制改革は現代的市場経済を建設する基本条件である
○政府自身の改革は政治改革を進めるカギである。
○法治は政治体制改革の突破口。
○極端な思想で社会を引き裂くことを防止する。

2013.09.17

米英の「香港介入」

米国と英国が香港で民主化運動をあおっていると同地の明報が報道している(9月17日)。
最近着任した米国のクリフォード・ハート総領事はしばしば街中に出向いて問題人物と接触しており、香港政府が警告を発しても聞き入れないそうである。8月27日に中国政府・外交部の宋哲香港「特派員」が「香港の内政干渉をしないように」と警告し、香港のメディアは「異例なメッセージだ」と報じていた。
英国はヒューゴ・スワイアー外務英連邦相が香港の民主派に向けて、「必要ならいつでも支援する」などのメッセージを当地の新聞に寄稿しており、香港政府にとってはこちらの方が米国総領事の活動より問題だそうだ。「支援する」とはどうすることだ、とかみついている。
かねてから北京による香港返還後の扱いに不満であった両国が逸脱した行動を取っているのか必ずしも明らかでないが、現在中国は民主派を締め付け、逮捕するなどしていることと関連があるか懸念される。

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