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2013.07.10

パウエル元国務長官の核否定発言

7月10日付の朝日新聞に掲載されている、コリン・パウエル元米国務長官のインタビュー記事はすばらしい。インタビューをした記者の一人が核問題に造詣の深い吉田文彦氏だからこそ書けたものだと思われる。
2002年にインドとパキスタンの間で緊張が高まり、核戦争に発展する恐れさえ生じたときに、パウエル米国務長官はパキスタン首脳に電話し「あなたも私も核など使えないことはわかっているはずだ」と自重を促し、さらに「1945年8月の後、初めてこんな兵器を使う国になるつもりなのか。もう一度、広島、長崎の写真を見てはどうか。こんなことをするのか、しようと思っているのか」と迫ると、パキスタン側は明確に「ノー」と答えたそうである。その後、パウエル長官からインド側への働きかけでも同様な反応であり、こうした説得の結果、危機は去ったというのがパウエル氏の証言である。
パウエル氏は、かねて核兵器は不必要との考えを示しており、今回のインタビューでその理由を詳しく問うと「極めてむごい兵器だからだ」と明言し、「まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えたいとは決して思わない。使わないのであれば基本的には無用だ」と強調したそうである。

パウエル氏の発言が強烈なインパクトとなって響いてくる最大の理由は、核兵器の非人道性をズバリと指摘していることであり、これほど簡明に本質をついている証言はめずらしい。私は初めて聞いた。広島と長崎の被爆者が懸命に語り続けてきたことを、パウエル氏は違った立場からであるが、やはり直視していることがよく伝わってくる。
次に印象的なのは、核兵器は使えないと明言していることであり、このようなことは核兵器が非人道的であることを本当に理解していればこそ言えることである。
第三に、米国のトップレベルの軍人あるいは指導者から核兵器の非人道性を率直に認める発言を聞くことは皆無であるだけに、パウエル氏の発言は貴重であり、重みがある。パウエル氏の発言は今後の核廃絶運動においても長く記憶されるであろう。

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2013.07.09

防衛白書2013

2013年版の防衛白書が発表された。
今年の白書は中国の行動について、「高圧的対応」「不測の事態を招きかねない。極めて遺憾」「中国は(射撃用)レーダー使用を否定するなど事実に反する説明をしている」「軍事に関する意思決定や行動に懸念」など率直な表現で防衛省としての見解を示している。これらの言及はほぼ正確なのであろう。防衛省として重大視していることが明確に示されているとは思う。
ただし、一党独裁で、言論の自由を許さず、歴史的に日本に対し複雑な感情を抱き、中国内部で種々の矛盾を抱える中国の政府と軍に対して、このように率直に物を言うことが適切か、疑問の余地はある。
中国の反応を注意深く見守る必要があろうし、日本は第三国の理解を得なければならないということもある。
今回の白書がよかったとか、問題であるとか、日中関係にとって有益か否か、など即断せずに、じっくりと見ていく必要がある。

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2013.07.07

国際シンポジウム「平和の海を求めてー東アジアと領土問題」

7月7日、国際シンポジウム「平和の海を求めて―東アジアと領土問題」が日本青年館で開催された。河野洋平元衆議院議長による力のこもったあいさつに続いて、「なぜ今領土問題なのか」「日中関係をどう打開するか」「日韓関係」「まとめ 平和の海への英知」と4つのセッションで議論が行われた。
ここに集まったのは日韓、日中関係の現状を憂える人たちであり、また、一部の過激なナショナリズムの台頭を冷静に見つめ、日本として反省すべきことを率直に議論できる人たちであった。
時間の関係で最初の「領土問題」に関するセッションしか参加できなかったが、いくつかの心に響く意見を聞けた。このような試みは、実現するのは大変なことであったと思うが、非常に有意義である。

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