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2014.06.08

北朝鮮と中国に関する北朝鮮文書

北朝鮮と中国との関係について、韓国の『中央日報』(6月5日付)は次のような報道をしている。その内容は信頼できるかよく分からないが、さりとて無視することにも躊躇を覚える。いずれ真偽は明確になるだろうが、ともかく報道の要旨を紹介しておく。
なお、北朝鮮とロシアの関係緊密化についての記述はロシア側での報道と平仄があっている。
張振成は2004年に脱北する以前、韓国に対して心理戦を行なう統一戦線部101連絡所で勤務していたと説明されている。

脱北者で詩人の張振成が運営するNew Focus Internationalというサイトが6月2日に報道したところによると、今年の4月、朝鮮労働党は「中国に対する幻想を捨てよ」とする内部文書を発出した由。この文書は労働党中央委員会が党員の教育のため作ったもので、習近平主席を露骨に批評し、「習近平主席は、文革は共産党が高圧的であったため爆発した」「中国は悪しき隣邦である。米国の側に立ち、我々の核の自衛力を批判している」「今日の中国共産党は習近平の思うとおりに改革開放を進め、理念より金銭を重視する組織になっている」「中国と帝国主義は同床共寝であり、同じ夢を見ている」などと述べている。
この文書が出た後、中央委員会は北朝鮮の企業に対し中国との貿易を減少し、ロシアとの貿易を拡大するよう命令した。また、北朝鮮当局は輸入商品がどの国から来たものか、厳格に監視し、中国からの輸入を抑制し、米ドルより中国元の取引を徹底的に監視している。
2002年と2002年にも金正日国防委員長が中国との取引を減少するよう指示したことがあったが、当時企業はその指示に従わなかったので目立った効果は上がらなかった。
北朝鮮と中国の貿易は昨年65.4億米ドルに上った。これは北朝鮮の貿易総額の約90%であった。
北朝鮮とロシアとの接近は注目されており、4月末、ロシアの副首相が訪朝し、ルーブルで決済することに合意した。また、ロシアは北朝鮮の対ロ債務108億米ドルのうち90%を免除し、残りの10%は天然ガスと鉄道などの建設に充てることにした。高麗航空のピョンヤン‐モスクワ路線の増便も合意された。

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2014.06.07

セルビアの大洪水

バルカン半島では去る5月中旬、数日間降り続いた豪雨により大洪水が発生し、セルビアとボスニア・ヘルツェゴビナがもっとも大きな被害をこうむった。セルビアの西北から東南へ向かってドナウ川が流れ、ベオグラードで西から流れてくるサバ川と合流する。洪水はこのサバ川を中心に発生し、オブレノヴァッツ市(首都ベオグラードの西方50キロくらい)などはほぼ全域が水没した。この一帯ではほとんどすべての町で道路その他のインフラ破壊などの二次被害が起こっている。
大規模な災害の程度を正確に表現するのは困難であるが、5月20日ごろの時点で避難を余儀なくされた人の数は3万人と推定され、約30万世帯が電気を使えなくなったそうである。
セルビアの大統領は「歴史上最大の被害」であったと述べている。被害総額は15~20億ユーロで、これは同国のGDPの約7%にあたり、さらに増加する見込みであると言われている。
しかしながら、この災害の状況は広く伝えられていない。日本でこのことを知っている人は今日(6月7日)の時点でもおそらくごくわずかであろう。日本だけでない。この災害についての報道は各国とも少なく、有名なセルビア人テニス・プレーヤーのジョコビッチが報道の少ないことを嘆いている。
報道が少ないのには理由がある。一つには、セルビアにとって歴史的な大災害であっても各国のメディアの基準では直ちに大きく報道するようなことでないからである。また、日本から見た場合バルカンは非常に遠い国であるという要因が加わる。地理的距離は南米などより近いが、心理的には非常に遠く、それだけ関心が薄いのである。
さらにセルビアにとって不幸なことに、5月中旬から6月にかけ、ウクライナ問題、中国艦艇の南シナ海での問題、さらにはアジア安保会議(シャングリラ対話)、G7、ノルマンディー上陸70周年記念など世界的な事件や行事が相次ぎ、メディアの関心がどうしてもそちらに向かいがちであった。
ともかく、この際セルビアやボスニア・ヘルツェゴビナなどでひどい災害が起こったことに注目していただくのは重要なことと思う。バルカンとそれ以外の地ではお互いに抱く関心の度合いが非常に不均衡である。心理的に日本から遠いと言ったが、セルビアには日本の武道や俳句を愛好する人たちが大勢おり、セルビア人は日本のことに強い関心を抱いている。このようなことも日本ではあまり知られていない。
東日本大震災に際して、セルビア政府は5千万ディナール(約4.5千万)の義捐金をセルビア赤十字経由で日本に提供し、これに民間からの義捐金を合わせるとセルビアからの義捐金は2億円近くに上った。誇り高いセルビア人は見返りを期待して行なったことでないが、我々日本人として忘れてはならないことではないか。
在京のセルビア大使館が開設しているホームページや、民間のサイトがセルビアに対する支援をよびかけている。アクセスしていただければ幸いである。

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2014.06.06

G7とロシア・中国

今年のG8は、ウクライナ情勢の関係でロシアを締め出し、急遽6月4日にブラッセルでG7として開催された経緯から明らかなように、ウクライナに関する討議が大きな部分を占めた。
サミットが終了した翌日である6日には、ノルマンディー上陸作戦70年記念式典が開かれるのでプーチン大統領も出席のため訪仏し、オランド仏大統領とはエリゼ―宮で、また、キャメロン英首相とはシャルル・ド・ゴール空港で会談した。両者からサミットの状況の説明を受け、ロシアに対する厳しい見方を伝えられたのであろう。プーチン大統領としては、ブラッセルのG7は愉快なことでなかっただろうが、記念式典では欧米諸国とともに戦勝国の大統領として参加したので違った気分だっただろう。また、オランド大統領がロシアを孤立させないよう努めたこともあり、プーチン大統領と各国の首脳は冷静に対応したようである。
記念式典は予定通り行われ、先月末選出されたばかりのポロシェンコ・ウクライナ大統領も出席したのでプーチン大統領と顔を合わせたはずである。両者の会談は予定されていなかったが、米英仏などの首脳がプーチン大統領に対し、ウクライナの安定化のため貢献するよう強く勧めた可能性がある。プーチン大統領は、訪仏前からウクライナ大統領選の結果を認めていた。
ウクライナが今後安定に向かうか、ロシアの出方が重要である。G7ではロシアに対し警戒を緩めず、さらなる制裁措置もありうることを議論していたが、ロシア軍は結局東ウクライナへ侵入せず国境付近から離れたので、緊張した雰囲気は遠ざかっている。ウクライナ情勢は大統領選の成功とロシアの静観により、ひと山越えた感がある。
ノルマンディー上陸作戦70年記念日とG7はまさに「昨日・今日」のことであり、そんなに早く和解するとは言えないとしても、10年前のノルマンディー上陸作戦記念式典はイラク戦争をめぐって対立したブッシュ米大統領とシラク仏大統領が和解するきっかけとなった。この故事を引用してロシアと欧米諸国の和解の可能性を論じる向きもあるようである。

G7では、中国の東シナ海および南シナ海での行動についても議論が行なわれた。コミュニケは中国を名指ししていないが、「我々は,普遍的に認められた国際法の原則に基づく海洋秩序を維持することの重要性を再確認する。我々は,国際法及び国際水域における管轄権に関して国際的に認められた原則と整合する形で,海賊,その他の海上犯罪に立ち向かうための国際的な協力に引き続き関与する。我々は,東シナ海及び南シナ海での緊張を深く懸念している。我々は,威嚇,強制又は力により領土又は海洋に関する権利を主張するためのいかなる者によるいかなる一方的な試みにも反対する。我々は,全ての当事者に対し,領土又は海洋に関する権利を国際法に従って明確にし,また主張することを求める。我々は,法的な紛争解決メカニズムを通じたものを含め,国際法に従って,紛争の平和的解決を追求する紛争当事者の権利を支持する。我々はまた,信頼醸成措置を支持する。我々は,国際法並びに国際民間航空機関(ICAO)の基準及び慣行に基づく,航行及び上空飛行の自由と併せ民間航空交通の効果的な管理の重要性についても強調する」と言明した。これは、数日前のシンガポールでの安倍首相およびヘーゲル米国防長官の発言とほぼ同様の内容であり、中国が激しく反発したものである。
一方、6月26日から8月1日の間に開催されるRIMPAC環太平洋合同演習に中国が初めて参加することが明らかになった。4隻の船で行くそうである。中国は2012年、主催国である米国から参加の招待を受け、2013年6月に中国の外相は受諾の意向を示していたが、シンガポールで日米と厳しく対立したにもかかわらず、参加を実現することになったのである。中国側でも一定のバランス感覚が働いているのを期待したい。この合同演習では日本から参加する海将がvice commander to the deputy commander of the Combined Task Forceとして補佐することになっており、参加する中国の海軍は当然日本の部隊とも協力関係に入る。
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