ブログ記事一覧
2014.09.11
この大公報紙の論調は、中国の新聞の中には、同日の中国青年報のように北朝鮮の積極的な外交姿勢に注目する向きがあることを意識したものである。
○「中国が北朝鮮に冷淡ならば、こちらも冷淡にしてやる」というのが金正恩の考えであり、北朝鮮の外交姿勢は適切でなく、物事を分かっていない。
○先般のASEAN外相会議の際初めて登場した李洙墉外相は、慣例に従って中国の王毅外相と会談したが、中朝双方ともその報道ぶりはそっけなかった。中国側の新華社、中央テレビ、人民日報などは一言だけ報じ、北朝鮮の中央通信社は李洙墉の活躍ぶりを伝える一方、王毅との会談については何も報道しなかった。
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ぎくしゃくする中朝関係
9月9日、朝鮮中央通信社は朝鮮民主主義人民共和国成立66周年記念に習近平中国共産党総書記らが金正恩朝鮮労働党第1書記らに送った祝電(全文)を報道した。しかし、同日の大公報はこの祝電は恒例のことに過ぎないとしつつ、北朝鮮と中国の関係は一部に言われているように緩和の方向にあると見ることはできないと論じ、再度(8月19日の本ブログの記事「南北朝鮮・中国関係」の指摘に追加して)次の点を指摘している。この大公報紙の論調は、中国の新聞の中には、同日の中国青年報のように北朝鮮の積極的な外交姿勢に注目する向きがあることを意識したものである。
○「中国が北朝鮮に冷淡ならば、こちらも冷淡にしてやる」というのが金正恩の考えであり、北朝鮮の外交姿勢は適切でなく、物事を分かっていない。
○先般のASEAN外相会議の際初めて登場した李洙墉外相は、慣例に従って中国の王毅外相と会談したが、中朝双方ともその報道ぶりはそっけなかった。中国側の新華社、中央テレビ、人民日報などは一言だけ報じ、北朝鮮の中央通信社は李洙墉の活躍ぶりを伝える一方、王毅との会談については何も報道しなかった。
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2014.09.10
ロシアの姿勢として目立つのはやはり軍事力への自信が強いことである。今回のノモンハン事件記念日もその関係であるが、プーチン大統領はさらに、来年5月に行なわれる対ドイツ戦勝70周年の記念式典へモンゴルのエルベグドルジ大統領を招待した。ノモンハン事件ではモンゴル軍がソ連軍とともに日本軍と戦ったが、モンゴル軍はドイツと戦争したか、おそらくしていないだろう(要調査)が、プーチン大統領は一緒に祝おうと言っているのである。
そのことが歴史的にどのような意味があるかはともかく、これももちろん軍事関係である。ウクライナ問題の関連でも8月末にプーチン大統領がロシア人青年の集会で語った際にはやはり軍事力を強調し、核大国であることにも言及した。
中国も軍事力に頼っており、あくなき軍事力の増強は各国にとって大きな脅威である。南シナ海など一定の地域ではかなり露骨な軍事行動も見せるが、ロシアの姿勢と違うのは、中国は経済的な進出・膨張の傾向が著しく、むしろ経済的問題が先に来る傾向が強いことである。モンゴルがそのよい例であり、習近平は今次訪問の際巨額の借款を供与することとした。モンゴル経済は最近数年の外資規制の強化の影響で、深刻な外貨不足となっているからである。
ロシアは中国ほどではないものの、世界で有数のドル保有国であるが、モンゴルの経済状況についてどのような話し合いをしているのか。プーチン大統領は時間がなかったが、ロシア政府としてはどのように見ているか、また、関わろうとしているのか、そうでないのか。いずれにしてもそのインパクトは中国と比較にならないであろう。
中国のモンゴルに対する影響力は強過ぎるので逆に警戒される面もある。歴史的にはモンゴル人に憎まれていたこともあり、現在も中国を見る目は複雑である。習近平主席がモンゴル側の感情に配慮して振る舞っていたのは当然である。
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プーチン大統領のモンゴル訪問
9月3日、プーチン大統領はノモンハン事件75周年記念に出席するためモンゴルを訪問した。習近平主席が約10日前(8月21~22日)モンゴルを訪問していたのでちょっと比較してみたくなる。たとえば、習近平主席は今次訪問でモンゴルと26の協力文書に合意したが、プーチン大統領はビザの相互免除に関する合意などを含め中国の半分程度であった。プーチン大統領は半日だけのモンゴル滞在であり、ロシアと中国では条件が違うので単純に比較しても意味はないが、ロシアの対外的な影響力の特色は中国と比較するとよりはっきりとしてくる。ロシアの姿勢として目立つのはやはり軍事力への自信が強いことである。今回のノモンハン事件記念日もその関係であるが、プーチン大統領はさらに、来年5月に行なわれる対ドイツ戦勝70周年の記念式典へモンゴルのエルベグドルジ大統領を招待した。ノモンハン事件ではモンゴル軍がソ連軍とともに日本軍と戦ったが、モンゴル軍はドイツと戦争したか、おそらくしていないだろう(要調査)が、プーチン大統領は一緒に祝おうと言っているのである。
そのことが歴史的にどのような意味があるかはともかく、これももちろん軍事関係である。ウクライナ問題の関連でも8月末にプーチン大統領がロシア人青年の集会で語った際にはやはり軍事力を強調し、核大国であることにも言及した。
中国も軍事力に頼っており、あくなき軍事力の増強は各国にとって大きな脅威である。南シナ海など一定の地域ではかなり露骨な軍事行動も見せるが、ロシアの姿勢と違うのは、中国は経済的な進出・膨張の傾向が著しく、むしろ経済的問題が先に来る傾向が強いことである。モンゴルがそのよい例であり、習近平は今次訪問の際巨額の借款を供与することとした。モンゴル経済は最近数年の外資規制の強化の影響で、深刻な外貨不足となっているからである。
ロシアは中国ほどではないものの、世界で有数のドル保有国であるが、モンゴルの経済状況についてどのような話し合いをしているのか。プーチン大統領は時間がなかったが、ロシア政府としてはどのように見ているか、また、関わろうとしているのか、そうでないのか。いずれにしてもそのインパクトは中国と比較にならないであろう。
中国のモンゴルに対する影響力は強過ぎるので逆に警戒される面もある。歴史的にはモンゴル人に憎まれていたこともあり、現在も中国を見る目は複雑である。習近平主席がモンゴル側の感情に配慮して振る舞っていたのは当然である。
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2014.09.08
「オバマ大統領はニューヨークタイムズ紙によるインタビュー(8月8日付 Friedman記者の記事)で、「中国について大統領はどうするつもりなのか。中国は現在イラクで最大のエネルギー投資国である。大統領は、中国に対して、貴国はこの世界でただ乗りでなく、ステークホルダーとなる時が来ている、と言うつもりはあるか」と質問されたのに対し、オバマ大統領は「そう言いたい。中国はたしかにただ乗りしている。過去30年間ただ乗りした」と述べた上、大国としての自覚と責任に関する持論を展開し、米国は他国のために行動することを期待されており、大国とはそういうものだと述べつつ、中国はそのようには見られていないし、行動もしていないなどと厳しく指摘した。
戦争で落ち込んだイラクの産油量は急速に回復しつつあり、2014年4月には304万BDを超え、OPECではすでにサウジに次ぐ産油国になっている。中国は世界最大級の埋蔵量があるイラク南部の油田群、ルメイラ、西クルナ、ハルファヤとアブダブなどで石油メジャーやロシアとともに多額の投資を行ない、開発・生産に加わっている。イラクの最重要パートナーだとも言われている中国石油天然ガス集団公司(CNPC)は同時にパイプラインや輸出ターミナルの建設計画を進めており、インフラ関連を含め派遣中国労働者の数は1万人を超えると推定されている。他の中近東やアフリカ諸国へ送り込まれている労働者の数と比べこれはむしろ控え目な推定であり、リビアの政変では3万人が脱出した。
米国はイラクにおいて莫大な犠牲をこうむった。戦死者だけでも約4千5百人に上った。しかし、イラク戦争に参加しなかったどころか批判的であった中国とロシアがイラクで権益を拡大し、ある意味で最大の受益者となっている。このような状況は米国から見ると、「ただ乗り」と見えるのであろう。オバマ大統領に限らずそれが米国民の気持ちであることはインタービューアーの質問からも窺える。
しかし、中国にとっても事は簡単でない。香港の『鳳凰週刊』は8月9日、「ISIS、数年後に新疆ウイグルの占領を計画、中国を『復讐ランキング』首位に」と題した記事を掲載した(12日の新華社日本語版が転載)。ISISは言わずと知れた「イスラム国」であり、イラク政府はもちろん米国にとっても頭の痛い問題となっている。英国出身の戦士が米国人記者を処刑し、その模様をインターネットに流すというおぞましい行為が行なわれたのもイスラム国である。
鳳凰テレビは日本ではフェニックス・テレビとして知られている。香港を拠点としているが、海外で中国の代弁をしっかりやっている。先日、中国機が米軍機に異常接近したことについて米国防省のスポークスマンが危険行為であったと指摘すると、同テレビの記者は逆に、米国は中国に対してスパイ行為をしているではないかと食って掛かったことがあった。前置きが長くなったが、『鳳凰週刊』はつぎのように記している。翻訳上の問題があるので一部修文した。
「イスラム国の目標は、アフガンにイスラム国を実現させるというタリバンの目標よりもっと壮大で、カリフの伝統に戻ることを主張しており、数年後に西アジア、北アフリカ、スペイン、中央アジア、インドから中国・新疆ウイグル自治区までを占領する計画を立てている。
イスラム国は、「中国、インド、パキスタン、ソマリア、アラビア半島、コーカサス、モロッコ、エジプト、イラク、インドネシア、アフガン、フィリピン、シーア派イラク、パキスタン、チュニジア、リビア、アルジェリアと、東洋でも西洋でもムスリムの権利が強制的に剥奪されている。中央アフリカとミャンマーの苦難は氷山の一角。われわれは復讐しなければならない!」と表明し、その筆頭に中国を挙げている。バグダッドでの声明では何度も中国と新疆ウイグル自治区に言及し、中国政府の新疆政策を非難した。中国のムスリムに対し、全世界のムスリムのように自分たちに忠誠を尽くすよう呼び掛けている。」
中国が資源の確保を求めて進出している地域はイスラム圏が多い。イスラム諸国にとって中国は、かつては第三世界の利益を守ってくれる頼もしい存在であったが、今や矛盾することが目立つようになっている。イスラム過激派との関係は特殊であるが、矛盾の象徴でもある。
一方、オバマ大統領の発言は、イスラム圏において中国は米国との関係でも矛盾を抱えていることを示している。中国はこのような状況でどのように対応するか。中国が多国籍軍に参加することは、いくら米国がイスラムの過激派と戦うのに強力な味方を必要としていると言っても当面はまずありえないが、将来起こりうるパワーバランスの変化としては頭の片隅に留めておくべきことと思われる。
(本コラムはエナジー・ジオポリティクス代表の渋谷祐氏の許可の下、「ジオポリ」2014年8月号(第133号)をもとに作成したものである)。」
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米・中・イスラム国関係
9月8日、キヤノングローバル戦略研究所のホームページに掲載されたもの。「オバマ大統領はニューヨークタイムズ紙によるインタビュー(8月8日付 Friedman記者の記事)で、「中国について大統領はどうするつもりなのか。中国は現在イラクで最大のエネルギー投資国である。大統領は、中国に対して、貴国はこの世界でただ乗りでなく、ステークホルダーとなる時が来ている、と言うつもりはあるか」と質問されたのに対し、オバマ大統領は「そう言いたい。中国はたしかにただ乗りしている。過去30年間ただ乗りした」と述べた上、大国としての自覚と責任に関する持論を展開し、米国は他国のために行動することを期待されており、大国とはそういうものだと述べつつ、中国はそのようには見られていないし、行動もしていないなどと厳しく指摘した。
戦争で落ち込んだイラクの産油量は急速に回復しつつあり、2014年4月には304万BDを超え、OPECではすでにサウジに次ぐ産油国になっている。中国は世界最大級の埋蔵量があるイラク南部の油田群、ルメイラ、西クルナ、ハルファヤとアブダブなどで石油メジャーやロシアとともに多額の投資を行ない、開発・生産に加わっている。イラクの最重要パートナーだとも言われている中国石油天然ガス集団公司(CNPC)は同時にパイプラインや輸出ターミナルの建設計画を進めており、インフラ関連を含め派遣中国労働者の数は1万人を超えると推定されている。他の中近東やアフリカ諸国へ送り込まれている労働者の数と比べこれはむしろ控え目な推定であり、リビアの政変では3万人が脱出した。
米国はイラクにおいて莫大な犠牲をこうむった。戦死者だけでも約4千5百人に上った。しかし、イラク戦争に参加しなかったどころか批判的であった中国とロシアがイラクで権益を拡大し、ある意味で最大の受益者となっている。このような状況は米国から見ると、「ただ乗り」と見えるのであろう。オバマ大統領に限らずそれが米国民の気持ちであることはインタービューアーの質問からも窺える。
しかし、中国にとっても事は簡単でない。香港の『鳳凰週刊』は8月9日、「ISIS、数年後に新疆ウイグルの占領を計画、中国を『復讐ランキング』首位に」と題した記事を掲載した(12日の新華社日本語版が転載)。ISISは言わずと知れた「イスラム国」であり、イラク政府はもちろん米国にとっても頭の痛い問題となっている。英国出身の戦士が米国人記者を処刑し、その模様をインターネットに流すというおぞましい行為が行なわれたのもイスラム国である。
鳳凰テレビは日本ではフェニックス・テレビとして知られている。香港を拠点としているが、海外で中国の代弁をしっかりやっている。先日、中国機が米軍機に異常接近したことについて米国防省のスポークスマンが危険行為であったと指摘すると、同テレビの記者は逆に、米国は中国に対してスパイ行為をしているではないかと食って掛かったことがあった。前置きが長くなったが、『鳳凰週刊』はつぎのように記している。翻訳上の問題があるので一部修文した。
「イスラム国の目標は、アフガンにイスラム国を実現させるというタリバンの目標よりもっと壮大で、カリフの伝統に戻ることを主張しており、数年後に西アジア、北アフリカ、スペイン、中央アジア、インドから中国・新疆ウイグル自治区までを占領する計画を立てている。
イスラム国は、「中国、インド、パキスタン、ソマリア、アラビア半島、コーカサス、モロッコ、エジプト、イラク、インドネシア、アフガン、フィリピン、シーア派イラク、パキスタン、チュニジア、リビア、アルジェリアと、東洋でも西洋でもムスリムの権利が強制的に剥奪されている。中央アフリカとミャンマーの苦難は氷山の一角。われわれは復讐しなければならない!」と表明し、その筆頭に中国を挙げている。バグダッドでの声明では何度も中国と新疆ウイグル自治区に言及し、中国政府の新疆政策を非難した。中国のムスリムに対し、全世界のムスリムのように自分たちに忠誠を尽くすよう呼び掛けている。」
中国が資源の確保を求めて進出している地域はイスラム圏が多い。イスラム諸国にとって中国は、かつては第三世界の利益を守ってくれる頼もしい存在であったが、今や矛盾することが目立つようになっている。イスラム過激派との関係は特殊であるが、矛盾の象徴でもある。
一方、オバマ大統領の発言は、イスラム圏において中国は米国との関係でも矛盾を抱えていることを示している。中国はこのような状況でどのように対応するか。中国が多国籍軍に参加することは、いくら米国がイスラムの過激派と戦うのに強力な味方を必要としていると言っても当面はまずありえないが、将来起こりうるパワーバランスの変化としては頭の片隅に留めておくべきことと思われる。
(本コラムはエナジー・ジオポリティクス代表の渋谷祐氏の許可の下、「ジオポリ」2014年8月号(第133号)をもとに作成したものである)。」
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