平和外交研究所

朝鮮半島

2015.09.30

拉致問題

9月23日付『朝日新聞』のトップ記事「北朝鮮、拉致調査覆さず」は興味深い。次の理由からだ。

○「北朝鮮が「8人は死亡。4人は入国していない」とした当初の調査結果を現段階で覆していないことがわかった」。これを聞いて日本人はみなあらためて憤りを覚えるだろう。私もその一人だ。しかし、私は以前から、そういうことではないかなと危惧しながら見守ってきた。金正日総書記は小泉首相に「申し訳ない」と言って謝罪し、北朝鮮が過ちを犯したことを明確に認めた。このことは北朝鮮の内部にも示された。その後で、拉致してきた日本人を隠しておくことは至難の業だからである。

○「複数の日本政府関係者」が北朝鮮の態度を明らかにしたことについては、とうとうそうなったかという気持ちがする。彼らがこのように機微な問題を記者に話したのは、今のままでは拉致問題は解決しないと深刻に悩むようになったからではないか。直接日本政府関係者に確かめたのではなく、想像にすぎないが。

○今年7月から9月初旬にかけて日朝双方は計4回大連で接触したが進展は見られなかったと言う。「8人は死亡。4人は入国していない」という北朝鮮の調査結果は現在も変わっていないということだ。

○これに対し、首相側近は「認定被害者についてはゼロ回答との認識を持っている。『そんな報告は受け取れない。しっかりと調べ直せ』というのが日本の立場だ」と話している。つまり、調査結果は北朝鮮側が出さないとか、遅れているのでなく、日本側が受け取らないのだ。このことは、昨年10月、私が平壌でソン・イルホ大使から直接聞いたことと平仄が合う。同大使は、「いつでも調査結果を報告する用意がある」と言っていた。

○日本と北朝鮮との間のコミュニケーションははなはだしく歪曲されているのではないかと思う。

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