朝鮮半島
2025.01.22
〇第1の疑問 「韓国の国家秩序は乱れた」
尹錫悦大統領は12月3日、非常戒厳を突然宣布した。だが、それからわずか6時間後、国会から解除要求決議を突きつけられ、解除に追い込まれた。
尹氏は非常戒厳を宣布する際、野党が過半数を握る国会において、政府の官僚や検事らへの弾劾訴追の発議が相次いでおり、司法業務や行政府までまひさせていると主張。最大野党の「共に民主党」が予算までも政争の手段に利用していると批判し、国家機関を乱すことで内乱を画策する「明白な反国家行為」だと述べた。
大統領の周りには大統領が執務を滞りなく遂行できるよう必要な機構と人員が配置されているはずであり、国情を判断して大統領にアドバイスし、必要な場合実力を使ってでも大統領を擁護する。もちろん大統領が常に正しいわけではなく、弾劾によって大統領を否定しなければならないこともある。いずれにしてもそのような国家機能が正しく機能しないと国政はいたずらに乱れる。
今回、尹大統領側は非常戒厳を宣布すれば事態はどうなるか、詳しく検討したはずであるが、6時間で撤回を迫られたのは大統領側に判断ミスがあったのであろう。だが、大統領を批判する側も必要な手順を踏み、国家の秩序を揺るがせないよう慎むべきであったのではないか。これが今回の政変についての第一の、かつ最大の疑問である。
〇弾劾決議・弾劾審判
12月14日、尹錫悦大統領に対する国会の弾劾決議案(2回目)は議員300人全員が出席し、賛成204票、反対85票、無効8票、棄権3票という結果となって成立した。これにより、尹大統領の職務は停止された。
憲法裁判所は12月16日、尹氏の罷免の可否を判断する弾劾審判を開始した。非常戒厳が憲法の定める要件を満たしているかが判断され、6か月以内に弾劾の妥当性を判断する。6人以上の裁判官が弾劾に賛成すれば、大統領は罷免される。
(注 韓国では大統領が弾劾されたことはこれまで何回もあった。ただし、最終的に大統領を罷免されたケース、刑事訴追を受けたケース、退任後訴追されたケースなども併せてみていかないと大統領の地位の安定性ははっきりしない。この考えでみれば、韓国の大統領で問題にならなかった例はほとんどいないといっても過言でない。)
〇尹氏の拘束
弾劾決議が合法か、弾劾裁判が進行中だが、合同捜査本部は1月15日、尹大統領を拘束した。尹氏が宣布(宣告)した非常戒厳令は内乱罪であるというのが理由であった。
これに対し尹氏は、戒厳令は内乱に当たらない、憲法は大統領の不訴追特権を定めており、在職中に刑事上の訴追を受けない、合同捜査本部による拘束は違法であり、韓国の法秩序は崩壊していると主張した。
後に、憲法審判において検察役を務める国会の訴追団野党側が内乱罪の訴追を取り下げ、尹氏による「非常戒厳」宣言の違憲・違法性に立証を絞ると表明したので内乱罪の問題は解消した。しかし、尹氏側は内乱罪が成立しないなら訴追をすべて却下すべきだと反発した。
〇尹氏の逮捕
内乱容疑で拘束された韓国の尹錫悦大統領について、合同捜査本部に加わる高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)は17日、逮捕状を請求し、ソウル西部地裁は19日未明に逮捕状を発付した。
尹氏の支持者らはこれに反発して同地裁の敷地内に乱入し、暴動に発展した。
韓国の制度は日本と異なり、容疑者の身柄を拘束し、そのうえで逮捕するという2段階に分かれているが、尹大統領に対する弾劾の可否が審判中であるのに、拘束や逮捕が行われるのは不可解である。他の国では大統領の行動に不満があっても、拘束や逮捕には慎重だろう。韓国の2段階拘束制と大統領の拘束・逮捕も疑問である。
〇支持率
一方、尹大統領の支持率は年末から急速に回復しはじめた。12月7日に7%程度まで落ちていた尹錫悦大統領の支持率は、1月4日には40%を超えた。与党・国民の力の支持率も上昇しており、野党・共に民主党の支持率とほぼ同じ40%強まで回復、17日には共に民主党を5カ月ぶりに上回るという調査結果まで出た。尹大統領拘束・逮捕は過早であったと国民が思い直し始めたと思いたいが、実情は謎である。
韓国内の大手マスコミや新聞社ではほとんど報道していないという。世論調査についても問題があるともいわれている。韓国内の報道機関や世論調査機関を民主党と左派勢力が掌握していることは周知であり、自分たちに有利なデータばかりを公表しているともいわれているが、これらも疑問である。
最近の韓国政情
1月19日、尹錫悦大統領が逮捕された。韓国の大統領の地位は不安定である。特に疑問な点を挙げてみた。〇第1の疑問 「韓国の国家秩序は乱れた」
尹錫悦大統領は12月3日、非常戒厳を突然宣布した。だが、それからわずか6時間後、国会から解除要求決議を突きつけられ、解除に追い込まれた。
尹氏は非常戒厳を宣布する際、野党が過半数を握る国会において、政府の官僚や検事らへの弾劾訴追の発議が相次いでおり、司法業務や行政府までまひさせていると主張。最大野党の「共に民主党」が予算までも政争の手段に利用していると批判し、国家機関を乱すことで内乱を画策する「明白な反国家行為」だと述べた。
大統領の周りには大統領が執務を滞りなく遂行できるよう必要な機構と人員が配置されているはずであり、国情を判断して大統領にアドバイスし、必要な場合実力を使ってでも大統領を擁護する。もちろん大統領が常に正しいわけではなく、弾劾によって大統領を否定しなければならないこともある。いずれにしてもそのような国家機能が正しく機能しないと国政はいたずらに乱れる。
今回、尹大統領側は非常戒厳を宣布すれば事態はどうなるか、詳しく検討したはずであるが、6時間で撤回を迫られたのは大統領側に判断ミスがあったのであろう。だが、大統領を批判する側も必要な手順を踏み、国家の秩序を揺るがせないよう慎むべきであったのではないか。これが今回の政変についての第一の、かつ最大の疑問である。
〇弾劾決議・弾劾審判
12月14日、尹錫悦大統領に対する国会の弾劾決議案(2回目)は議員300人全員が出席し、賛成204票、反対85票、無効8票、棄権3票という結果となって成立した。これにより、尹大統領の職務は停止された。
憲法裁判所は12月16日、尹氏の罷免の可否を判断する弾劾審判を開始した。非常戒厳が憲法の定める要件を満たしているかが判断され、6か月以内に弾劾の妥当性を判断する。6人以上の裁判官が弾劾に賛成すれば、大統領は罷免される。
(注 韓国では大統領が弾劾されたことはこれまで何回もあった。ただし、最終的に大統領を罷免されたケース、刑事訴追を受けたケース、退任後訴追されたケースなども併せてみていかないと大統領の地位の安定性ははっきりしない。この考えでみれば、韓国の大統領で問題にならなかった例はほとんどいないといっても過言でない。)
〇尹氏の拘束
弾劾決議が合法か、弾劾裁判が進行中だが、合同捜査本部は1月15日、尹大統領を拘束した。尹氏が宣布(宣告)した非常戒厳令は内乱罪であるというのが理由であった。
これに対し尹氏は、戒厳令は内乱に当たらない、憲法は大統領の不訴追特権を定めており、在職中に刑事上の訴追を受けない、合同捜査本部による拘束は違法であり、韓国の法秩序は崩壊していると主張した。
後に、憲法審判において検察役を務める国会の訴追団野党側が内乱罪の訴追を取り下げ、尹氏による「非常戒厳」宣言の違憲・違法性に立証を絞ると表明したので内乱罪の問題は解消した。しかし、尹氏側は内乱罪が成立しないなら訴追をすべて却下すべきだと反発した。
〇尹氏の逮捕
内乱容疑で拘束された韓国の尹錫悦大統領について、合同捜査本部に加わる高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)は17日、逮捕状を請求し、ソウル西部地裁は19日未明に逮捕状を発付した。
尹氏の支持者らはこれに反発して同地裁の敷地内に乱入し、暴動に発展した。
韓国の制度は日本と異なり、容疑者の身柄を拘束し、そのうえで逮捕するという2段階に分かれているが、尹大統領に対する弾劾の可否が審判中であるのに、拘束や逮捕が行われるのは不可解である。他の国では大統領の行動に不満があっても、拘束や逮捕には慎重だろう。韓国の2段階拘束制と大統領の拘束・逮捕も疑問である。
〇支持率
一方、尹大統領の支持率は年末から急速に回復しはじめた。12月7日に7%程度まで落ちていた尹錫悦大統領の支持率は、1月4日には40%を超えた。与党・国民の力の支持率も上昇しており、野党・共に民主党の支持率とほぼ同じ40%強まで回復、17日には共に民主党を5カ月ぶりに上回るという調査結果まで出た。尹大統領拘束・逮捕は過早であったと国民が思い直し始めたと思いたいが、実情は謎である。
韓国内の大手マスコミや新聞社ではほとんど報道していないという。世論調査についても問題があるともいわれている。韓国内の報道機関や世論調査機関を民主党と左派勢力が掌握していることは周知であり、自分たちに有利なデータばかりを公表しているともいわれているが、これらも疑問である。
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