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朝鮮半島

2024.04.01

日朝首脳会談は開催できない

 岸田首相はかねてから日朝関係を打開するために金正恩総書記と首脳会談を行いたいとの意向を表明してきた。2023年11月26日の「国民大集会」でも「様々なルートを通じ、働きかけを絶えず行い続けている。早期の首脳会談の実現に向け、働きかけを一層強めていく」と発言していた。そして2024年2月9日の国会の衆議院予算委員会においても同じ発言を行った。

 岸田発言に対して北朝鮮側は2月15日、金与正労働党副部長の談話で反応してきた。「解決済みの拉致問題を障害物としなければ」と条件付きであったが、「日本が政治的決断を下せば、両国はいくらでも新しい未来を共に開いていくことができる」、「首相が平壌を訪問する日が来る可能性もある」、「岸田首相の発言は、肯定的なものとして、評価されないはずがない」などと語った。

 翌16日、林官房長官は記者会見で「金与正談話は留意している。拉致問題を解決済みとすることについてはまったく受け入れられない」と表明。

 すると金与正氏は1か月後の3月25日、「これ以上解決すべきことも、知るよしもない拉致問題に依然として没頭するなら首相の構想が人気取りにすぎないという評判を避けられなくなるであろう」、「自分が願うからといって、決心したからといってわが国家の指導部に会うことができ、また会ってくれるのではないということを首相は知るべきである」と再度の談話を発表。
  
 崔善姫(チェソンヒ)外相も4日後の29日、「朝日対話は我々の関心事ではなく、日本のいかなる接触の試みも容認しない」、拉致問題について「解決してあげられるものがないばかりか、努力する義務もない。またそうする意思も全くない」との談話を発表し、日朝間の交渉を改めて拒否した。
 
 また、北朝鮮の李竜男(リリョンナム)駐中国大使は同日、北京の日本大使館の関係者が28日、北朝鮮の大使館員に電子メールで接触を提案してきたと表明した(朝鮮中央通信)。

 北朝鮮側は、岸田首相が試みてきた首脳会談の働きかけには応じない、本件については日本側とこれ以上話さないとの態度をとったのだが、今後日本側としてはどのように北朝鮮との関係を考えていくべきか。

 首脳会談を何回呼び掛けても同じことの繰り返しになるだけであり、いたずらに状況を悪化させてしまう危険さえあるだろう。

 カギはやはり拉致問題である。日本政府は今後も「拉致被害者を全員日本へ帰国させよ」の姿勢をあくまで堅持していくだろう。しかし日本政府は、拉致問題に関して為すべきことを全て実行しているのではない。

 横田めぐみさんの「遺骨」について疑問が残ったままになっている。日本政府は北朝鮮から引き渡された「遺骨」は横田めぐみさんのものではないと発表したが、この発表に対しては深刻な疑問が呈されており、それに対し日本政府は疑問を解く努力をしていない。この問題の解明には警察の協力が不可欠だが、政府は警察に解明を命じていない。一部警察官僚の言いなりになっているとの見方さえある。

 拉致問題の解決は、「遺骨」問題を通じて日朝両国が前進できるかにかかっている。もちろん横田めぐみさんのご家族次第であるが、この「遺骨」問題を突破口として関係者があらためて検討を行い、日朝関係が前進することを望んでいる。

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