平和外交研究所

オピニオン

2014.02.25

中台関係④

「PRCと台湾は「1つの中国」に合意しているか」

PRCと台湾は、政府間ではなかったが、直接「1つの中国」について合意し合ったことがある。蒋経国総統の死後李登輝が新総統に就任し(1990年)、翌年、「国家統一綱領」を策定した。李登輝は台湾独立に走るのではないかと警戒していたPRCはこれでひとまず安心した。海協会(PRC側)と海基会(台湾側)の間でハイレベルの対話が行われ、PRCは「1つの中国」原則に合意するよう要求し、台湾側は「中国とは中華民国である」とする立場を譲らなかった。しかし、香港での協議において、「1つの中国」原則を堅持しつつ、その解釈権を中台双方が留保する(いわゆる「一中各表」)という内容で合意が成立したそうである。ただし、これは台湾側のバージョンである。ほんとうのところはどうであったか。この合意は「九二共識」と呼ばれるもので、合意の存在は双方が認めているが、口頭で行われ、正式に発表されたこともないので、どうしても不明確さが残る。
PRC側は「1つの中国」で合意があったという解釈を堅持しており、台湾側の主張するような「一中各表」は一度も認めたことがない。

李登輝は総統在任中、「1つの中国」を認めるかどうかPRC側は注目し、警戒した。李登輝総統の発言については、二、三異なるバージョンがあるが、最も明確なのはドイツの新聞『ドイッチェ・ヴェレ』や米国の『フォーリン・アフェアーズ』に対して述べた「両岸の関係は「国家と国家の関係」、少なくとも「特殊な国家と国家の関係」であった」というものであった。
注意して見ていく必要があるが、李登輝総統は「中国は2つ」と言ったのではない。PRCと台湾の関係が「国家と国家の関係」であるとしてもそれは直ちに「中国は2つ」を意味するのではない。しかし、「中国は1つ」と言ったのでもなかった。鍵となるのは、台湾が「国家」であるか否かであり、「国家」であるならば李登輝総統の言っていることは正しいということになろう。


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