中国
2017.12.31
西欧諸国は経済規模で中国に圧倒されつつも、中国経済は西欧諸国にも恩恵をもたらすことを学んだ。2011年12月21日付の英国エコノミスト紙が、「中国のWTO加盟10周年を記念しよう。中国の加盟により、世界はより豊かになった」とする記事を掲載したのは象徴的であった。
西欧諸国の経済は近年、低成長を続け、時にはマイナス成長となるなど厳しい状況にあり、しかも最近は難民対策などの負担が増大している。
一方、中国との間では、米国や日本と違って政治的問題は少なく、中国との経済関係を強めることにブレーキとなる要因はほとんどない。雪崩現象にもたとえられる中国への殺到はある意味、自然である。
中国傾斜の先頭を切ったのは英国であり、2015年の3月、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)に参加した。米国から慎重に対応するよう、あらかじめくぎを刺されていたが、それには構わなかったという。
国際金融に豊かな経験とノウハウを持つ英国がなぜそのような行動に出たか不可解であったが、英国としては英国経済の活性化を図るためやむをえない決断だったのだろう。
その半年後、英国は訪英した習近平主席を大歓迎し、中国メディアが「最上級の待遇」と異例の報道をするくらい喜ばせた。しかも、中国製原発の輸入とそれに伴う中国資本の受け入れに同意したことはAIIBへの参加以上に驚きであった。ブラッドウェルの原発には中国広核集団(CGN)が66・5%を出資する。これだけの出資比率になると、発言力は極めて大きくなり、英側は中国の言いなりにならざるをえない。日本では考えられないことであった。
ドイツの経済もやはり厳しい状況にあり、低成長かマイナス成長である。しかし、EUの最強のリーダーとして重い財政負担を強いられている。また、中近東・アフリカからの難民は大多数がドイツを目指してくる。したがって、急速に拡大を続ける中国経済は大きな魅力であり、中国との貿易・投資関係は顕著に増大している。
ドイツの中国経済への強い関心を代表しているのがメルケル首相であり、2016年6月までに9回訪中した。メルケル氏は中国に人権の尊重や法の支配も訴えているが、中国側はそれらの問題は独中関係のごく一部であるとしてまともに取り合おうとしない。これに対し、ドイツ側もしつこく追及はしていない。
しかし、西欧諸国は完全にエコノミック・アニマルになったのではないことをしめす出来事が起こった。
12月13日、中国が南京事件80年記念の行事を行った日であったが、ドイツとフランスの在中国大使は連名で、英フィナンシャル・タイムズ紙中国語版に独仏の和解の経験を語る一文を投稿した。その中には、「犯罪を犯した者は自らの罪を認め、被害者は許さなければならない」との趣旨の言及があった。
中国としては、「日本は罪を認めなければならない」というのはよいが、「中国は日本を許さなければならない」というのは癇に障ったのであろう。人民日報系の環球時報12月28日付が掲載した評論は、両大使の寄稿は「中国内政に対する粗暴な干渉」「中国人に対する無礼なお説教である」と述べるなど、不愉快極まりないという感情があふれていた。
ドイツやフランスはかねてより、彼らの和解の経験を東アジアでも参考にしてほしいということがよくあった。また、中国も日本に対し、ドイツの姿勢を学んでほしいと何回も求めたことがあった。
しかるに、両大使の寄稿文は中国にも努力を求めている。しかも南京事件を記念する日にその文章を発表しているので、日本に対するよりもむしろ中国に対する注文が多いと感じたのであろう。
両大使は、中国のことをよく知っており、そのような中国側の反応を予測したうえでの寄稿だったと思われる。経済面では中国との関係を最大限重視しつつも、政治的には冷めているところがあることを思い起こさせる一事であった。
なお、最近、ドイツの中国に対する見かたは変化しつつあるというドイツ人も出てきているそうである。
西欧諸国の中国に対する姿勢
西欧諸国が中国の経済成長に関心を向けるようになったのは1990年代中葉からである。中国は2001年、WTOに加盟して高度成長期に入り、数年後、そのGDPはイタリア、フランス、イギリス、ドイツを次々に追い抜き、2010年には日本を追い越した。西欧諸国は経済規模で中国に圧倒されつつも、中国経済は西欧諸国にも恩恵をもたらすことを学んだ。2011年12月21日付の英国エコノミスト紙が、「中国のWTO加盟10周年を記念しよう。中国の加盟により、世界はより豊かになった」とする記事を掲載したのは象徴的であった。
西欧諸国の経済は近年、低成長を続け、時にはマイナス成長となるなど厳しい状況にあり、しかも最近は難民対策などの負担が増大している。
一方、中国との間では、米国や日本と違って政治的問題は少なく、中国との経済関係を強めることにブレーキとなる要因はほとんどない。雪崩現象にもたとえられる中国への殺到はある意味、自然である。
中国傾斜の先頭を切ったのは英国であり、2015年の3月、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)に参加した。米国から慎重に対応するよう、あらかじめくぎを刺されていたが、それには構わなかったという。
国際金融に豊かな経験とノウハウを持つ英国がなぜそのような行動に出たか不可解であったが、英国としては英国経済の活性化を図るためやむをえない決断だったのだろう。
その半年後、英国は訪英した習近平主席を大歓迎し、中国メディアが「最上級の待遇」と異例の報道をするくらい喜ばせた。しかも、中国製原発の輸入とそれに伴う中国資本の受け入れに同意したことはAIIBへの参加以上に驚きであった。ブラッドウェルの原発には中国広核集団(CGN)が66・5%を出資する。これだけの出資比率になると、発言力は極めて大きくなり、英側は中国の言いなりにならざるをえない。日本では考えられないことであった。
ドイツの経済もやはり厳しい状況にあり、低成長かマイナス成長である。しかし、EUの最強のリーダーとして重い財政負担を強いられている。また、中近東・アフリカからの難民は大多数がドイツを目指してくる。したがって、急速に拡大を続ける中国経済は大きな魅力であり、中国との貿易・投資関係は顕著に増大している。
ドイツの中国経済への強い関心を代表しているのがメルケル首相であり、2016年6月までに9回訪中した。メルケル氏は中国に人権の尊重や法の支配も訴えているが、中国側はそれらの問題は独中関係のごく一部であるとしてまともに取り合おうとしない。これに対し、ドイツ側もしつこく追及はしていない。
しかし、西欧諸国は完全にエコノミック・アニマルになったのではないことをしめす出来事が起こった。
12月13日、中国が南京事件80年記念の行事を行った日であったが、ドイツとフランスの在中国大使は連名で、英フィナンシャル・タイムズ紙中国語版に独仏の和解の経験を語る一文を投稿した。その中には、「犯罪を犯した者は自らの罪を認め、被害者は許さなければならない」との趣旨の言及があった。
中国としては、「日本は罪を認めなければならない」というのはよいが、「中国は日本を許さなければならない」というのは癇に障ったのであろう。人民日報系の環球時報12月28日付が掲載した評論は、両大使の寄稿は「中国内政に対する粗暴な干渉」「中国人に対する無礼なお説教である」と述べるなど、不愉快極まりないという感情があふれていた。
ドイツやフランスはかねてより、彼らの和解の経験を東アジアでも参考にしてほしいということがよくあった。また、中国も日本に対し、ドイツの姿勢を学んでほしいと何回も求めたことがあった。
しかるに、両大使の寄稿文は中国にも努力を求めている。しかも南京事件を記念する日にその文章を発表しているので、日本に対するよりもむしろ中国に対する注文が多いと感じたのであろう。
両大使は、中国のことをよく知っており、そのような中国側の反応を予測したうえでの寄稿だったと思われる。経済面では中国との関係を最大限重視しつつも、政治的には冷めているところがあることを思い起こさせる一事であった。
なお、最近、ドイツの中国に対する見かたは変化しつつあるというドイツ人も出てきているそうである。
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