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2013.10.31
1965年の日韓請求権協定について、パク所長は「日韓間の民事債務、債権関係に限ったもので戦争犯罪は含まない」としている。また、パク所長は河野談話が日本政府による強制を認めているかのように言っているが、同談話が認めたことは「業者らがあるいは甘言を弄し、あるいは畏怖させるなどの形で本人たちの意思に反して集めるケースが数多く、さらに、官憲等が直接これに加担するなどのケースもみられた」「慰安婦たちは戦地においては常時軍の管理下において軍とともに行動を共にさせられており、自由もない、痛ましい生活を強いられていたことは明らかである」ということであり、それ以上のことではなかった。
日本として慰安婦をそのような状況においたことについて責任を負うのは当然であるが、法的に戦争犯罪と言えるか、その概念は最近明確化されてきたものであり、よく分からない。法的には、戦争犯罪の構成要件いかんなどは明確にした上で議論していかなければならないのではないか。
また、パク所長は、請求権協定が締結された時慰安婦問題は議論に出ていなかったと言っている。このこと自体は事実であるが、当時、交渉は請求権の問題で行き詰っており、協定締結を以って請求権問題は「完全、かつ最終的に解決された」と規定した(第2条)のは、そうしなければいつまでも解決できなくなることを両国政府が恐れたからである。この規定は、その時に表面化していないことについてもあてはまるというのが日本政府の理解であり、もし韓国側がそうでないと主張するのであれば、やはりその説明が必要である。
「謝罪」については、パク所長は講演のなかで矛盾したことを言っている。もっとも、これは報道に問題がある可能性もあり、実際の発言は、「日本政府はいったん謝罪したが、その後謝罪しないという態度に変わった」ということかもしれない。それなら明らかな矛盾はないが、事実には反している。日本政府は謝罪しており、橋本総理の謝罪書簡を被害者に直接届けている。そのことを無視してはならない。
一方、韓国政府は、憲法裁判所の慰安婦問題に関する「日韓会談では協議されていないので未解決であり、韓国政府が、日本政府と解決のための協議を行なわないでいるのは、政府に国民の人権を守る義務を課している韓国憲法に違反する」との決定(2011年8月30日)を受けて、9月15日、日本政府に日韓請求権協定第3条に基づく協議を求めたが、日本政府は、「日韓請求権協定で解決済み」として協議に応じていない。表面的には、3条で決められた協議に応じるべきだという議論も可能に見えるが、竹島問題はちょうど日韓の立場が逆になっており、日本政府が国際司法裁判所での解決を望んでいるのに対し、韓国政府は応じない。慰安婦と竹島は異なる問題であるが、政治的には関連があるかもしれない。
韓国政府が真に第3条の協議による解決を希望するなら、竹島問題についても同様の態度を取ることが一案である。
また、同じことが日本政府についても言える。日本が竹島問題のICJでの解決を望むならば、慰安婦問題についても請求権協定第3条にしたがっての解決を図るのが一案となろう。
パク・ハンチョル憲法裁判所所長の慰安婦関係発言
パク・ハンチョル韓国憲法裁判所長が10月29日、ハーバード大学ロースクールで講演を行なった。立場上、また、場所柄、法的な議論を期待したいが、パク所長の主張は日韓間の関係条約に照らし説得力があるか疑問である。1965年の日韓請求権協定について、パク所長は「日韓間の民事債務、債権関係に限ったもので戦争犯罪は含まない」としている。また、パク所長は河野談話が日本政府による強制を認めているかのように言っているが、同談話が認めたことは「業者らがあるいは甘言を弄し、あるいは畏怖させるなどの形で本人たちの意思に反して集めるケースが数多く、さらに、官憲等が直接これに加担するなどのケースもみられた」「慰安婦たちは戦地においては常時軍の管理下において軍とともに行動を共にさせられており、自由もない、痛ましい生活を強いられていたことは明らかである」ということであり、それ以上のことではなかった。
日本として慰安婦をそのような状況においたことについて責任を負うのは当然であるが、法的に戦争犯罪と言えるか、その概念は最近明確化されてきたものであり、よく分からない。法的には、戦争犯罪の構成要件いかんなどは明確にした上で議論していかなければならないのではないか。
また、パク所長は、請求権協定が締結された時慰安婦問題は議論に出ていなかったと言っている。このこと自体は事実であるが、当時、交渉は請求権の問題で行き詰っており、協定締結を以って請求権問題は「完全、かつ最終的に解決された」と規定した(第2条)のは、そうしなければいつまでも解決できなくなることを両国政府が恐れたからである。この規定は、その時に表面化していないことについてもあてはまるというのが日本政府の理解であり、もし韓国側がそうでないと主張するのであれば、やはりその説明が必要である。
「謝罪」については、パク所長は講演のなかで矛盾したことを言っている。もっとも、これは報道に問題がある可能性もあり、実際の発言は、「日本政府はいったん謝罪したが、その後謝罪しないという態度に変わった」ということかもしれない。それなら明らかな矛盾はないが、事実には反している。日本政府は謝罪しており、橋本総理の謝罪書簡を被害者に直接届けている。そのことを無視してはならない。
一方、韓国政府は、憲法裁判所の慰安婦問題に関する「日韓会談では協議されていないので未解決であり、韓国政府が、日本政府と解決のための協議を行なわないでいるのは、政府に国民の人権を守る義務を課している韓国憲法に違反する」との決定(2011年8月30日)を受けて、9月15日、日本政府に日韓請求権協定第3条に基づく協議を求めたが、日本政府は、「日韓請求権協定で解決済み」として協議に応じていない。表面的には、3条で決められた協議に応じるべきだという議論も可能に見えるが、竹島問題はちょうど日韓の立場が逆になっており、日本政府が国際司法裁判所での解決を望んでいるのに対し、韓国政府は応じない。慰安婦と竹島は異なる問題であるが、政治的には関連があるかもしれない。
韓国政府が真に第3条の協議による解決を希望するなら、竹島問題についても同様の態度を取ることが一案である。
また、同じことが日本政府についても言える。日本が竹島問題のICJでの解決を望むならば、慰安婦問題についても請求権協定第3条にしたがっての解決を図るのが一案となろう。
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