中国
2017.06.06
また、日米豪の3カ国防衛相が4日会談し、その後発表された共同声明は次のように述べた。
「3大臣は、国際法を重視し、南シナ海を含め航行及び上空飛行の自由、並びにその他合法的な海の使用を擁護していくとの共通のコミットメントを強調した。3大臣は、南シナ海での一方的な現状変更のために威圧又は武力を行使することに強い反対を表明し、係争のある地形の軍事目的での使用に反対を表明した。
3大臣は、南シナ海において領有権を主張する全ての当事者に対し、自制を働かせ、緊張緩和に向けた措置を講じ、埋立活動を停止し、係争のある地形を非軍事化し、緊張を高めかねない挑発的な行動を控えるよう促した。3大臣は、特に2016年7月の仲裁裁判判断に留意しつつ、外交や他の紛争解決メカニズムを通じた平和的な紛争解決の重要性を強調した。3大臣は、当事国政府に対し、領土及びそれに伴う海洋権益に係る主張を国際法に従って、特に海洋の権益に係る主張に関しては国連海洋法条約を反映する形で、明確にした上で追求するよう求めた。この点に関し、3大臣は、2016年7月の仲裁判断が、南シナ海における紛争を平和的に解決する努力をさらに進める有益な基盤となりうることに留意した。3大臣はまた、東南アジア諸国連合(ASEAN)及び中国の当局間での、南シナ海における行動規範(COC)枠組み案への合意に留意した。三大臣は、効果的で法的拘束力を有するCOCの早期合意に向けた、国際法に基づく対話を奨励し続け、南シナ海における行動宣言全体の完全かつ効果的な履行を呼びかけた。
3大臣は、東シナ海において、現状を変更し緊張を高めようとする、あらゆる一方的又は威圧的な行動への強い反対を改めて表明した。3大臣はまた、この地域における状況に関し、引き続き緊密に意思疎通を図る意図を表明した。」
この共同声明は中国を名指しこそしていないが、南シナ海および東シナ海で生じている問題を余すところなく取り上げ、かつ、問題を惹起した国家を批判しており、マティス国防長官の発言とあいまって今後の南シナ海・東シナ海問題に関する基本的文献の一つになるものである。
念のため、キーワードをあらためて掲げると、国際法の重視、航行および飛行の自由、一方的な現状変更に対する強い反対、係争のある地形(注 岩礁などのこと)を軍事目的に使用するのに反対、埋立活動の停止、外交や他の紛争解決メカニズムを通じた平和的な紛争解決、領土問題や海洋権益に係る主張を国際法に従って行うべきこと、2016年7月の仲裁判断が、南シナ海における紛争を平和的に解決する努力をさらに進める有益な基盤となることなどである。
中国は、今回の会議でマティス国防長官が南シナ海問題についてあまり強い姿勢を取らないと見ていたようだ。トランプ大統領は北朝鮮問題に関し中国がよく協力していると評価する発言を行っていたからだろう。さる4月の習近平主席との会談でもトランプ氏は南シナ海問題を特に問題として取り上げなかった。
中国の今回のシャングリラ対話に臨む姿勢は代表の選任にも表れていた。この会議に中国はこれまで副総参謀長の一人を派遣していた。国防相が出席したことも過去にはあった。しかし、今回は中国軍事科学院(軍のシンクタンク)の何雷副院長が代表だったのだ。「中将」ではあるが、現役の副総参謀長とは格が違う。
ともかく、中国の出席者はマティス国防長官の発言に反発し、演説後各国のプレスに対し弁明と米国批判を懸命に行ったが、マティス長官演説のようなインパクトはなかった。
中国はこのシャングリラ対話の向こうを張ってか、2006年から北京で多国間の安全保障対話「香山フォーラム」を開催している。中国は各国の防衛相や参謀長に招待状を出しているそうだが、実際には学者、外交官、元防衛担当者、中国の専門家などが出席しているにとどまっている。しかし、議論は活発かつ率直である。
中国軍が対外的に開放的姿勢を取り、このような対話を主催することは非常に有意義だ。前回の会議では、主催者側は、会議運営で気が付いたことは何でも指摘してほしいと御用聞きをするほどサービス精神が旺盛であり、各国代表団にはその国の言語を話せる世話係を配し便宜を図っていた。
もっとも、香山フォーラムは今年は中止されることになったそうだ。現在中国軍において大規模な改革が進められており、フォーラムを運営する中国軍事科学院も改革の対象になっていることが背景にあるという。
しかし、来年は例年通り開催する予定だ。今回のシャングリラ対話の際中国の何雷団長はシンガポールのウン国防相に来年の香山フォーラムへの出席を招請したと伝えられている。
シャングリラ対話と南シナ海問題
6月3~5日、シンガポールにおいて「アジア安全保障会議(シャングリラ対話)」が行われた。米国のマティス国防長官は演説で南シナ海や東シナ海の問題に言及して「国際社会の利益を侵害し、規則に基づいた秩序を壊す中国の行動を容認しない」と述べた上、中国が、南シナ海で造成した人工島に滑走路やレーダーサイトなどの建設を進めていることについて、「軍事化そのもので、国際法を無視しており、他国の利益を害している」と厳しく批判した。また、日米豪の3カ国防衛相が4日会談し、その後発表された共同声明は次のように述べた。
「3大臣は、国際法を重視し、南シナ海を含め航行及び上空飛行の自由、並びにその他合法的な海の使用を擁護していくとの共通のコミットメントを強調した。3大臣は、南シナ海での一方的な現状変更のために威圧又は武力を行使することに強い反対を表明し、係争のある地形の軍事目的での使用に反対を表明した。
3大臣は、南シナ海において領有権を主張する全ての当事者に対し、自制を働かせ、緊張緩和に向けた措置を講じ、埋立活動を停止し、係争のある地形を非軍事化し、緊張を高めかねない挑発的な行動を控えるよう促した。3大臣は、特に2016年7月の仲裁裁判判断に留意しつつ、外交や他の紛争解決メカニズムを通じた平和的な紛争解決の重要性を強調した。3大臣は、当事国政府に対し、領土及びそれに伴う海洋権益に係る主張を国際法に従って、特に海洋の権益に係る主張に関しては国連海洋法条約を反映する形で、明確にした上で追求するよう求めた。この点に関し、3大臣は、2016年7月の仲裁判断が、南シナ海における紛争を平和的に解決する努力をさらに進める有益な基盤となりうることに留意した。3大臣はまた、東南アジア諸国連合(ASEAN)及び中国の当局間での、南シナ海における行動規範(COC)枠組み案への合意に留意した。三大臣は、効果的で法的拘束力を有するCOCの早期合意に向けた、国際法に基づく対話を奨励し続け、南シナ海における行動宣言全体の完全かつ効果的な履行を呼びかけた。
3大臣は、東シナ海において、現状を変更し緊張を高めようとする、あらゆる一方的又は威圧的な行動への強い反対を改めて表明した。3大臣はまた、この地域における状況に関し、引き続き緊密に意思疎通を図る意図を表明した。」
この共同声明は中国を名指しこそしていないが、南シナ海および東シナ海で生じている問題を余すところなく取り上げ、かつ、問題を惹起した国家を批判しており、マティス国防長官の発言とあいまって今後の南シナ海・東シナ海問題に関する基本的文献の一つになるものである。
念のため、キーワードをあらためて掲げると、国際法の重視、航行および飛行の自由、一方的な現状変更に対する強い反対、係争のある地形(注 岩礁などのこと)を軍事目的に使用するのに反対、埋立活動の停止、外交や他の紛争解決メカニズムを通じた平和的な紛争解決、領土問題や海洋権益に係る主張を国際法に従って行うべきこと、2016年7月の仲裁判断が、南シナ海における紛争を平和的に解決する努力をさらに進める有益な基盤となることなどである。
中国は、今回の会議でマティス国防長官が南シナ海問題についてあまり強い姿勢を取らないと見ていたようだ。トランプ大統領は北朝鮮問題に関し中国がよく協力していると評価する発言を行っていたからだろう。さる4月の習近平主席との会談でもトランプ氏は南シナ海問題を特に問題として取り上げなかった。
中国の今回のシャングリラ対話に臨む姿勢は代表の選任にも表れていた。この会議に中国はこれまで副総参謀長の一人を派遣していた。国防相が出席したことも過去にはあった。しかし、今回は中国軍事科学院(軍のシンクタンク)の何雷副院長が代表だったのだ。「中将」ではあるが、現役の副総参謀長とは格が違う。
ともかく、中国の出席者はマティス国防長官の発言に反発し、演説後各国のプレスに対し弁明と米国批判を懸命に行ったが、マティス長官演説のようなインパクトはなかった。
中国はこのシャングリラ対話の向こうを張ってか、2006年から北京で多国間の安全保障対話「香山フォーラム」を開催している。中国は各国の防衛相や参謀長に招待状を出しているそうだが、実際には学者、外交官、元防衛担当者、中国の専門家などが出席しているにとどまっている。しかし、議論は活発かつ率直である。
中国軍が対外的に開放的姿勢を取り、このような対話を主催することは非常に有意義だ。前回の会議では、主催者側は、会議運営で気が付いたことは何でも指摘してほしいと御用聞きをするほどサービス精神が旺盛であり、各国代表団にはその国の言語を話せる世話係を配し便宜を図っていた。
もっとも、香山フォーラムは今年は中止されることになったそうだ。現在中国軍において大規模な改革が進められており、フォーラムを運営する中国軍事科学院も改革の対象になっていることが背景にあるという。
しかし、来年は例年通り開催する予定だ。今回のシャングリラ対話の際中国の何雷団長はシンガポールのウン国防相に来年の香山フォーラムへの出席を招請したと伝えられている。
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