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2016.05.08

安倍首相とプーチン大統領のソチ会談

 安倍首相とプーチン大統領は6日夜、ロシア南部のソチで会談した。ウクライナ問題以来困難な状況にあった日露関係を改善し、平和条約締結問題を進展させるための再出発だ。ここまで来るのに日露双方はそれぞれ努力したと思う。
 最大の懸案である北方領土問題ははたして進展するか。今後の交渉次第であるのはもちろんだが、「今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を精力的に進めていく」としたことは注目される。

 外務省が発表した会談の内容と結果(概要)は平和条約締結問題について次の通り説明している。
①両首脳の間で北方領土問題について突っ込んだやり取りが行われた。その結果、これまでの交渉の停滞を打破し、突破口を開くため、双方に受入れ可能な解決策の作成に向け、今までの発想にとらわれない「新しいアプローチ」で、交渉を精力的に進めていくとの認識を両首脳で共有した。日露二国間の視点だけでなく、グローバルな視点も考慮に入れた上で、未来志向の考えに立って交渉を行うこととし、このアプローチに立って、次回の平和条約締結交渉を6月中に東京で実施することで一致した。
②この関連で安倍総理から、日露双方が静かな交渉環境を維持するために互いの国民感情に配慮し、相手の国民感情を傷つけるような行動や発言を控えるべきであることを指摘した。

 「新しいアプローチ」とはなんのことか。注目が集まっている。今まで交渉は進展していなかったので、「新しいアプローチ」でというのは新鮮な響きがあり、期待も抱かせる。報道では安倍首相の方から持ち掛けたそうだ。同首相の気持ちがこもっている言葉だ。
 一方、プーチン大統領はどのようにこの言葉を受け止めたのか。ロシアとしても「新しいアプローチ」は都合がよいと見たのではないか。具体的には、「領土問題を棚上げ」にして平和条約を結ぶこと、あるいは、ロシア極東地域の経済開発に今後の交渉の重点を移すことなどもロシアにとっては「新しいアプローチ」だろう。
 実は、「新しいアプローチ」という言葉を初めて聞いたとき、ロシア側から言い出したことかと思ったくらいだ。
 しかし、日本側としては、領土問題を棚上げにして平和条約を結ぶようなアプローチはありえない。言葉は同じ「新しいアプローチ」でも日露にとって意味することは違っている可能性がある。

 次に、プーチン大統領の訪日については、「その準備を進めていくことを確認し、今後、中身のある訪問となるよう準備を進める中で、引き続き最も適切な時期を探っていくことで一致した」と発表されている。これだけではあまりにも建前論だけで何とも言い難いが、ロシアのラブロフ外相は会談後、記者団に対して「具体的な日付も含め、詳細について検討した。検討が終了したらロシアと日本の双方で発表するだろう」と述べたそうだ(朝日新聞5月7日付)。こういうことであれば、話はかなり煮詰まっているようである。本当にそうか、一抹の疑問はぬぐえないが、近日中に発表されることを期待したい。

 6月には事務レベルの平和条約締結交渉が始まる。ロシア側には北方領土を占領し、実効支配を続けている事実があるのでこの交渉は本来的に平等な立場で行われるのではなく、さまざまな困難が待ち受けているだろうが、日本側は粘り強く交渉してほしい。

 経済協力に関する日本側の提案をロシア側は率直に歓迎し、喜んだようだ。現在はロシアに対し日本は制裁措置を課しているので、貿易、投資面で制約がある。日露で協議される経済協力が実現するとしてもまだ先の事なので、制裁はいずれ解除されることを前提にしているのだろう。
 しかし、現実の交渉においては、とくにロシア側はこの話を早く実現したいので制裁の解除が話題になることも考えられる。
 一方、ウクライナでは今もミンスク合意違反の状況が続いている。安倍首相がミンスク合意の順守をプーチン大統領に求めたのは正しいが、問題が未解決のまま長引いているのは事実であり、今制裁の解除を前提とする話し合いを始めることについて米欧などには異論があるのではないか。それには一理あると思う。
 G7サミットではウクライナ問題も議論されるだろう。日露交渉への影響があるかないか、目が離せない。

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