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2015.04.01

アジア・インフラ投資銀行(AIIB)-いくつかの疑問

 日本政府は事務レベルで疑問点を中国に提示し説明を求めているが、明確な回答は得られていないと報道されている。その内容は知る由もないが、素人としても疑問がある。
 
 まず、AIIBの本部は中国に置かれるそうであるが、それはいつ、どこで、どのようにして決定されたのか。中国が提案者だから本部を中国に置くのは当然というのはあまりに単純・安易な思考である。国際機関であれば、参加国は銀行の設立・運営に権利があるのは当然であり、本部の決定も一定の方式にしたがって行なわれなければならない。アイデアを出した国と本部が異なる例はいくらもある。
 少々古いが「一次産品共通基金」の本部はアムステルダムに置かれた。オランダはこの機関設立の発案者でなかったはずである。国連大学は日本にあるが、日本が発案したのではなく、アジア開発銀行(ADB)も、本部があるフィリピンは発案者でなかったのではないか。国際機関の本部を招致することは大きな意味があり、決定が行われるまでに競争となるのが常である。簡単に決まることでない。

 それとも、本部所在地の決定はまだ行われていないのか。

 中国は「創始メンバー国」として迎える期限を3月末としたが、そのことは中国が決定できるのか。どのような権限で。もし中国だけでなく、複数の国が決定したのであればどの国か。

 各国の出資比率はどうなるのか。これは国際金融機関としては決定的なことである。最大の問題点と言っても過言でない。

 それとも、中国は中国法人として新しい銀行をつくる、つまり、国際機関でなく国内機関を設立しようとしているのか。

 銀行に参加すればなぜメリットがあるか疑問であることは3月27日に書いたが、少し追加すると、参加国の企業だけがプロジェクトの請負で有利になることには普遍性の観点から問題がある。もし参加国だけがAIIBプロジェクトに入札できるというなら、それは昔の「講」のようなものではないか。

 中国がAIIBに熱心なのはよく分かるが、その一つの理由は「海上のシルクロード」建設にAIIBが役立つからであろう。しかし、他のAIIB参加国は必ずしもそのような目的を共有しないはずである。では、そのような諸国の利益をいかに守れるか。なお「海上のシルクロード」については2月16、18、19,23日に書いているので参照願いたい。

 IMF、世界銀行、ADBなど既存の国際機関の在り方に不満があるのは分からないでもないが、基本中の基本が分からないのに参加を決定する国にも、各国が次々に参加表明することを「雪崩」とか、「ドミノ現象」と表現するメディアの姿勢にも違和感を覚える。

 日本が参加しないのは米国が参加しないからだとよく聞く。それを否定はしないが、基本に立ち返って見つめ、分析を試みることが必要でないか。

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