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2015.06.01

「存立危機事態」と「武力攻撃事態」・国会での質疑に問題あり

5月28日の衆議院特別委員会で、安全保障関連法案に関し、辻元議員と安倍首相や中谷防衛相の間で質疑があった。重要な質疑であるが、報道によるとかなり混乱しているように見受けられる。問題点を(問)とし、回答すべきこと(実際の政府側の答弁ではない)を(答)として整理してみた。

(問)「存立危機事態」と「武力攻撃事態」の両方に「明白な危険」という言葉があるがその違いは何か。
(答)「存立危機事態の明白な危険とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であって、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険(改正武力事態法第2条4)」であり、武力攻撃事態の明白な危険とは「武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険(武力攻撃事態法2条2)」である。
 これは法律に規定されていることに過ぎない。十分な説明のためにはそれぞれの事態において実際に起こりうる場合を想定して説明する必要があろう。

(問)どちらの事態と認定するかで、武力行使が認められるか、そうでないか違ってくるか。
(答)両方の場合とも「武力の行使は事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない」と規定されている(同法案3条の3と4)。具体的な武力行使の程度が事態に応じて異なるのは当然である。

(問)「存立危機事態」と「武力攻撃事態」はどう違うか。
(答)「武力攻撃事態」とは、日本が武力攻撃された場合または武力攻撃される明白な危険が切迫していると認められるに至った事態のことで、2003年に成立した武力攻撃事態法2条2に定められている。
一方、「存立危機事態」は、我が国と密接な関係にある外国が武力攻撃され、その結果日本に危険が及んでくる場合、つまり集団的自衛権行使の場合であり、いわば、外国生まれの危険が日本に輸入された場合である。

(問)「武力攻撃事態」と「存立危機事態」とでは日本政府(自衛隊)の対処は異なるか。
(答)危険がどこで発生したかに関わらず、この二つの場合とも対処が必要である。前者は武力攻撃事態法2条7イ(1)で、後者は同法改正案の同条7ハ(1)で定められ、ともに「武力の行使は事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない」と規定されている(改正武力攻撃事態法3条の3と4)。つまり、法令上は同じ対応をすることになっているが、実際の対応は事態に応じて、したがってまた必要性に応じて変わってくる。

(問)武力攻撃事態に類似の事態はあるか。
(答)ある。武力攻撃事態法は紛らわしい事態を次のように規定している。
2条の1「武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。」
同条2「武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。」
同条3「武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。」
これら3つの事態を区別したのは、過剰な対応にならないよう事態を細かく分け、それぞれに適当な対応を定めるためだったのであろうが、しょせん人為的な区別であり、非常に分かりにくい。たとえば、「武力攻撃事態」には「武力攻撃が発生した事態」が含まれており、これと「武力攻撃」と区別するのは困難である。政府の中では矛盾のないように説明していても国民には理解困難であろう。

 両方の事態についての改正法案の規定は適切か、国会でさらに議論を重ね、吟味すべきである。
 また、紛らわしくなる根本原因は、集団的自衛権行使の要件を日本の問題として語らなければならなかったことにある。国会では、諸外国に理解されるかを含め、十分議論すべきではないか。

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