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2014.03.05

クリミア半島へのロシアの出兵

ウクライナ領クリミア半島へのロシアの出兵を米欧は激しく非難している。これに対しプーチン・ロシア大統領は軍事介入した理由について「ロシア語を話す人を保護するために必要であった」と強調したが、それがまた批判の火に油を注ぐ結果となったようだ。
たしかに「ロシア語を話す人」を保護することは「ロシア国籍の人」よりはるかに広く、ウクライナのロシア系住民で国籍がウクライナである人も含まれる。自国民の保護は他国への介入の理由として認められることはありうるが、「同じ言葉を話す人を保護する」ことを介入の理由として認めることは第二次大戦後なかったと思われる。もし、そのような理由を認めると、間違いなく世界は大混乱に陥る。たとえば、かつてマレイシアで中国系の人が攻撃されたことがあったが、その場合中国が介入することを認めるということである。プーチン大統領が主要国の首脳に電話をかけまくって説明してもとうてい理解してもらえないだろう。各国のメディアは酷評している。
しかし、プーチン大統領に味方するわけではないが、その言わんとしたことは「ロシア国籍の人」という意味であったか、確かめる必要はある。もっとも、「ロシア国籍」であるとしても、クリミヤへの出兵が直ちに求められるのではない。それは妥当なことであったか、検討はそこから始まる。
日本では欧米と同様、ロシアの行動は認められないという見方が強い。同じ価値観、同じ民主主義の国家として当然である。なかには、プーチン大統領の日本訪問が予定されており、領土問題など難問を抱えている日本としてプーチン大統領の不興を買いたくないという気持ちが働くことをことさらに指摘する人もいるが、それは別の問題で、そんな子供のような態度ではロシアから馬鹿にされるのが落ちである。日本としては主張すべきことを遠慮してはならない。今年の主要国サミットはロシアで開催される番だそうで、こんな状況では欧米と同様参加を再検討するのは当然である。
一方、ここ一両日のことであるが、米国の民間のみならず、政府もウクライナの政変に関与していたことが報道されている。日本政府は、米国政府からほんとうのことを聞かされていることを望みたいが、これは希望でしかない。米国はそのようなことをしないとは私は思わない。つまり、関与したと断定する材料は日本の一国民として持ち合わせていないが、米国はしていないとも断定できない。
よく分からないのは米国だけでない。もちろんである。米ロ間には我々として不可解なことが起こっている。ロシアが関与して問題を起こしたこともある。ロンドンで滞在中のロシア人が毒殺された事件なども闇の中である。要するに、米ロ間ではそのように第三国には分からないことが起こっていることも忘れるべきでない。その上で米欧と協調すべきである。
中国は、これまでウクライナ問題にあまり表だって関心を見せなかったが、ロシアの出兵を支持しているようである。これも問題である。中国は、これまで他国への介入について主権の尊重を訴え、人道的理由や自国民保護などを理由に介入することには反対してきた。今回ロシアを支持することは、これまで中国が唱えてきたことより、ロシアとの連帯、あるいは共同行動のほうが重要であることを自ら示す結果になるのではないか。要するに、中国が主張してきたことは口実に過ぎなかったということになるのではないか、ということである。

ウクライナの情勢不安定化はソチ・オリンピックに隠れていたためか、日本のメディアなどの注目度は低かったきらいがある。ロシアの出兵から事態は大きく展開し始めた。すでに明らかになっていることも多いが、今後も諸方面の動向には注意を払う必要がありそうだ。



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