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2020.07.01

香港国家安全法と中国外交

香港での反体制的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法」は6月30日、全人代(全国人民代表大会 国会に当たる)常務委員会で可決され、即日施行された。
 
 中国が同法の制定を強行したのは、来る9月に行われる香港の立法会(議会)の選挙で、現在のまま推移すれば民主派が議席を拡大して与党側を上回る可能性が出てきたことに習近平政権が危機感を抱いたことが背景になっている。昨年11月の区議会選挙では民主派が圧勝した。

同法の制定後、日本のほか英国、フランス、ドイツなど27か国はジュネーブの国連人権理事会で共同の声明を発表し、同法が香港市民の人権に影響を及ぼすとして、「深く、高まる懸念」と表明した。また、香港の住民や立法・司法組織の参加なしに同法を成立させたことは、「一国二制度」が保障する高度な自治と権利、自由を「害する」ものだと主張した。

菅官房長官は、30日の記者会見で、「同法の制定は遺憾であり、香港の一国二制度は日本にとっても極めて重要だ。同法制定は国際社会の一国二制度の原則に対する信頼を損ねる」と批判した。

トランプ政権は対抗措置として29日、防衛装備品や軍事転用可能な先端技術の対香港輸出を規制すると発表。米議会上院も同法に関与した中国当局者らに制裁を科す法案を可決した。これらはとりあえずの措置であり、米政府は中国の出方を見極めつつ追加措置を取る構えである。
 
ただし、大統領選を控えるトランプ大統領は微妙な立場にあり、さる1月に署名した米中通商協議の「第1段階の合意」に悪影響を与えることは避けたい考えであると言われている。しかもトランプ氏は、そもそも香港の人権問題に強い関心を抱かず、ボルトン前大統領補佐官に対し「関わりたくない」と話したとボルトン回顧録は記している。

 しかし、香港の人権問題に無関心を決め込むと米国内から強く批判され、ひいては大統領選に悪影響が及ぶとの事情もある。

 同法が引き起こした波紋は以上に限らない。香港の住民に及ぶ影響は最重要問題であるが、本稿では今後の中国外交と日本を含む各国の立場に関する原則的問題を指摘しておきたい。
 
国家安全維持法の制定は、香港の返還に際して中国が世界に対して行った「香港に一国二制度を認める」ことと「50年間は自治を変えない」との約束を破る行為である。中国は香港は中国の一部だと主張するが、中国が国際公約を破ったことは否定できない。

 この公約違反は、南シナ海における中国の国際法を無視した行動と軌を一にしている。2016年7月12日、国際仲裁裁判所が発表した判決を中国は認めないとの態度を取ったことである。

 今後中国は他国と主張を異にする場合、「主権」を振りかざしてあくまで主張を貫こうとするであろう。

今後も同様の事態が発生すれば、米国は例外として、単独では力が限られている各国は共同で対処するしか方法がないのではないか。

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