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2021.09.01

タリバンによるアフガニスタン支配

アフガニスタンに関し、ザページに「「タリバン新政権」国際社会はどう対峙する? 中ロは融和的か」を寄稿しました。
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2021.08.16

タリバーンによるアフガニスタン全土の掌握

 アフガニスタンの首都カブールに迫っていた反政府勢力タリバーンは、8月15日中に大統領府を掌握した。アフガニスタン全土がタリバーンの手に落ちたわけである。ただし、米英などは自国民の脱出支援のために兵士を派遣しており、カブール空港など一部地域に残っている。

 日本政府も大使館の職員を国外に退避させることにしており、退避に関し米国などと協議中である。

 カブールの陥落は予想以上に早かった。タリバーンは15日朝までにカブールを包囲し、アフガニスタン政府と協議する姿勢を示していたが、数時間後に大統領府が占拠されてしまった。そうなったのは、ガーニ大統領が混乱を望まず、自ら国外へ退去したからであったようだ。タリバーンの政治部門トップのバラダル幹部が、首都占拠後のビデオ声明で、「このような形での勝利は想定外だった」と述べたのはそのような事情であったことを示唆している。

 カブール国際空港では国外脱出を求める人々が押し寄せ、飛行機の周りをとりまいており、米軍が威嚇発砲をしたと伝えられている。多少の混乱は避けがたいかもしれないが、外国人のカブールからの脱出が円滑に進むことを切望する。

 ブリンケン米国務長官は15日のCNNテレビで、米大使館員らの退避に追い込まれたアフガンの現状をベトナム戦争末期のサイゴン(現ホーチミン)陥落になぞらえる見方に対し「サイゴンとは違う」と強調したという。その根拠は何かよく分からないが、米国は「負けた」と言われ続けるだろう。また、無責任だとも批判されるだろう。米国の立場が悪くなるのは避けがたい。

 米軍の撤退は、トランプ前政権とタリバーンとの2020年2月の和平合意に基づくものである。バイデン大統領はこの合意を引き継ぎ、今年4月、米同時多発テロから今年の9月11日で20年になるのに合わせ、米軍を完全撤退させると表明し、5月から撤収作業を始めていた。

 これまで米国もNATOや日本もアフガニスタンの軍・警察力の強化に協力してきたが、タリバーンの本格的攻勢がはじまるとそれはもろくも崩れてしまった。現実として受け止めるほかないが、米国がアフガニスタンの兵力をどのように評価していたか。米軍が撤退しても持ちこたえられると見ていたのかも問題になりうる。

 今後どうなるかが問題であり、まず、タリバーン政権を各国が承認するかが問われる。英国のジョンソン首相は早くも15日、英メディアに「どの国にも、タリバーンを二国間で(正統な政府として)承認してほしくない」「志を同じくする国同士はできる限り、統一された立場であるべきだ」と牽制した。

 カギとなるのは、アフガニスタンの新政権がテロリストや過激派をかくまったり、支援するかどうかである。通常そんなことは新しい政権に対して問わないが、20年前に米軍が打倒したのはタリバーンであり、その時はテロと過激派の脅威と戦うことに国際的な理解があった。今般カブールを奪回したタリバーンにはその懸念はないか。国際的には信頼はないと見るべきだろう。

 タリバーンにはそのような懸念を払しょくしてもらいたい。前述のバラダル幹部は、「国の安全と幸福を実現できるか、我々は試されることになる」と語っている。国際社会の見方を気にしているとも解せられる言葉である。

 中国とロシアはタリバーンに対し融和的であろう。ロシアは今後も大使館をカブールに残すと説明しているが、1980年代はタリバーンの敵であった。その後遺症は今も残っているだろう。

 新しい政権がもっとも頼りにしそうなのは、イランと中国である。中国は、さる7月末、タリバーンの代表団を受け入れ、王毅外相が会見している。今後、タリバーン政権と中国が接近する公算は大きい。

 しかし、タリバーン政権が中国に求めることは、経済支援と、安保理など国際社会においてタリバーン政権を支持することである。これはどちらも中国にとって大きな負担となる。また、中国の新疆ウイグル問題もある。タリバーン政権はまちがいなく、ウイグルのイスラムを支持する。中国とタリバーン政権は最初は互恵の関係にあろうが、中長期的には疑問が相次いで出てくる。

2021.08.13

核政策について日本に反対しないよう求める米国からの書簡

 さる8月9日、米政府が核兵器の「先制不使用」や「唯一の目的」を宣言することに反対しないよう日本政府に求める書簡が、米国の元政府高官や科学者から菅義偉首相や日本の主要政党の党首あてに送られた。これは日本にとって由々しきことであり、若干解説を加えておく。

 核兵器については、単純化して言えば、廃止すべきであるという意見と抑止力として必要だという意見がある。前者を「廃絶派」、後者を「抑止派」とかりに名付けておこう。このように名付けるのは簡単だが、廃絶派にも抑止派にもさまざまの異なるニュアンスがあり、それらを含めてみると核政策は枝がたくさんついている巨木のように複雑である。

 最近、話題になる核兵器禁止条約についても両派がある。たとえば、今年の広島および長崎の平和式典で広島市の松井市長も長崎市の田上市長も日本政府に条約への参加を求める発言を行ったが、菅首相は何も発言しなかった。

 米国の元政府高官や科学者が日本政府に対し、核兵器の「先制不使用」や「唯一の目的」宣言に反対しないよう求めるのは、米国政府はその宣言を行う用意があるが、宣言をすれば日本政府が反対する可能性があり、そうなると日本との関係を重視する米国政府として困るので、事前に反対しないよう要請するのである。
 
 核兵器の「先制不使用」とは、「核兵器を先に使わない」という意味の宣言であり、「唯一の目的」とは、「相手が核兵器を使用する場合にのみこちらは核兵器を使う」という意味である。

 つまり、米国政府は「核を先に使用することはしない」、「核が相手国により使用されない限り米国は核を使用しない」と宣言する用意があるが、日本は「核を先に使用する余地を残しておきたい」、「相手が核でない兵器で攻撃を仕掛けてくる場合にも核を使う余地を残しておきたい」との立場である。実際には日本政府はわが国民や相手国にそこまで説明してくれないだろうが、米国ではそのように思われている。

 米国はなぜ日本についてそのような考えを抱いているのかというと、日本は「先制不使用」宣言にも「唯一の目的」宣言にも実際に反対したことがあるからだ。オバマ政権と安倍政権の時であった。その際、ろくな議論は行われず、政権中枢だけで日本政府の方針が決められたと理解している。

 米国のバイデン大統領の核についての考えは、すでに原則明らかになっている。オバマ大統領の「核兵器なき世界」の目標を引き継ぐ考えであり、「先制不使用」も「唯一の目的」も前向きらしい。

 いずれ米国政府は日本政府に対し、そのような考えを示してくるであろう。その際、日本政府としては、米国以上に核を自由に使用できるようにしておく必要があるか、また、あまり核に頼りすぎると、結局こちら側も脅威にさらされることにならないか、日本全体にとって深刻な問題として、闇の中で処理するのでなく、国家として徹底した検討の上対応してもらいたい。

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