平和外交研究所

2016 - 平和外交研究所 - Page 44

2016.04.12

(短評)ケリー長官の被爆地訪問の印象

 G7外相会合について昨日もコメントしたが、それは「核軍縮および不拡散に関する広島宣言」、つまり、外相会合での議論の結論についてであった。

 ケリー長官は、原爆資料館や原爆ドームなどを訪問した印象として、「感極まるものだったことを個人レベルで表明したい」「驚異的」で「人間としてのすべての感受性を揺さぶられる衝撃的な展示だった」と語ったと伝えられている。メディアによって報道内容に若干の相違はあるが、感極まったこと、驚いたこと、それに極度に強い衝撃であったことなどの点ではほぼ共通している。
 各国の報道を丹念に調べていく余裕はないが、他の外相も同様だったと思われる。そして、外相たちがこのような経験をしたことが今次会合の最大の成果だ。
 
 もちろん、その衝撃から核兵器の非人道性についての確信へ、さらには廃絶に進んでもらいたいと思う。しかし、そのためには、政治的な問題も絡んでくる。そのレベルになると、各国の考えは一致していない。

 実は、今回の会合で外相たちが体験したことも他の人には共有されていない。外相たちは広島へ来る前から核兵器についての知識を持っていたが、その知識は原体験がないうえで得た知識に過ぎず、核爆発の実相を知っておれば知識もおのずと違ってきたはずだ。
 だから、外相たちが被爆体験を多少なりとも共有したことは大きな前進だったと思う。
 次はもちろん世界の指導者たちによる被爆地訪問だ。
2016.04.11

G7外相広島会議の意義

 主要国G7の外相会議が4月10~11日、広島で開かれた。

 広島で開催されるからにはG7の外相は核の廃絶を誓うべきだという意見が核軍縮の専門家の間にあったが、結局、「核兵器のない世界に向けた環境を醸成するとのコミットメントを再確認する」にとどまった。「核の廃絶を目指すが直ちに実行は困難だ」というのが核保有国の立場である限りやむを得ないことだったと思う。

 一方、今回の会合は核兵器の非人道性について非常に大きな意義があった。このことについては2つの角度から今次外相会合を見ておく必要がある。
 一つは、宣言に「非人道性」という言葉があるかないかであるが、それは宣言に盛り込まれず、「原子爆弾投下によるきわめて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験」と記述されたにとどまった。
 この「原子爆弾投下による非人道的な苦難」は非常によく工夫された表現だと思う。この表現の焦点が人にあると考えれば、これは被爆者の苦難そのものであり、だれも反論できない。
 しかし、非人間的な苦難が核によって加えられたことが明記されているので、核兵器に焦点があると説明することも可能だ。そうすればこれは非人道性のこととなる。
 なぜこのような玉虫色の表現にする必要があったかと言えば、「非人道性」を明記することには一部の国(たぶん仏や米)がのめないからだ。

 もう一つの角度は、広島など被爆地を訪問すること自体が核兵器の非人道性を理解する最良の方法ということだ。今回の外相会議に出席した人たちは間違いなく核兵器の実相について理解を深めたと思う。
 したがって、末尾の段落において外相たちが、「他の人々」も広島および長崎を訪問することを希望したのは非常に重要なメッセージだ。これは当然オバマ米大統領を含め各国首脳に対して向けられている。
 広島宣言の重点は「核兵器の非人道性」という言葉を使うか否かの問題よりも、むしろこの点にあると考える。

 以上二つの角度から見て、今回の宣言を核兵器の非人道性に関して評価する場合には、最初の段落(言葉の問題)だけでなく、最後の段落(実際に体得する)を合わせて評価すべきである。

 おりしも、4月9日付の『ワシントン・ポスト』紙はオバマ大統領の被爆地訪問に肯定的な記事を掲載するなど、その実現の機運は高まりつつある。

2016.04.08

中国と日本はどのように付き合うのがよいか

 中国と日本はどのように付き合うのがよいか。この問題を「中国」と「中華人民共和国」を区別する視点にたって、タレントの木本武宏氏との対談で語った。
 東洋経済オンライン4月8日の「中国共産党が恐れる「和平演変」とは何なのか TKO木本が外交のプロに日中問題を直撃!」に掲載されています。

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.