その他
2013.11.14
11月13日、科学技術振興機構中国綜合研究交流センター主催のシンポジウムで、曲徳林清家大学教授(日本研究センター長)、朱炎拓殖大学教授、田中修日中産学官交流機構特別研究員とともに講演した。私の講演の要点は次の通り。
「三中全会に向けて、強い期待感と懸念があった。
期待感は、今後の経済発展のため大胆な改革が決定されることである。懸念は、これまでの高度経済成長の結果格差などの問題が発生し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想など革命を重視しければならないことがどのような形で出てくるかであった。
経済面で中国が直面している問題は次のようなものである。
(成長の鈍化) 2002年9.1% 2007年14.2 2011年9.2 2012年7.8
(構造問題) 資本と労働の投下への依存度が高く、生産性の向上が弱い。
(マクロ・コントロール) 経済成長とともに通貨供給量が増大し、物価が上昇。しかし、金利は上げられない。
(市場経済化) 市場経済化は道半ば。政府の関与が強すぎる。
(金融制度改革) 外資のさらなる導入、金利、為替の自由化が必要。シャドー・バンキング問題。
(土地問題) 地方政府にとっておいしい収入源。村民から絞り上げ。
(税制改革) 「分税制」で潤うのは中央財政。地方の歳入は激減。手直しが必要。
(労働力) 賃金は上昇し、農民工は格差にあえいでいる。
政治・社会面の最大の問題は民主化だが、これは困難であり、実現できない。
政府の権限が強すぎる。非能率である。いわゆる整風が必要。
中央と地方との関係。税制、金融、格差、農民問題などに関わる。
社会不安。市民デモ、農民の反抗、10/28日事件(天安門)、大同での共産党ビル前事件
少数民族問題
特権層・官僚主義の弊。いわゆる太子党や裸官の問題。
5階層論(楊継縄)では、トップの第1階層が1200万人、第2が2500万人。
戸籍問題 都市で働く2.6億人の農民工は搾取されている。
このような諸問題が噴出するので、「革命の重要性を忘れるな」という声が上がって来る。
薄熙来事件がきっかけとなった。
農民は実際冷遇されている。大衆をどう扱うかの問題である。
革命思想に照らせば、農民や労働者は革命の前衛であったはず。
しかし、最近の社会科学院の中国社会の階層研究では労働者は10の階層のうち第8番目、農民は第9番目の階層であり、いつの間にか彼らの地位は革命思想とは逆転している。
三中全会を有名な11期三中全会と比べる人がいる。習近平政権は80年代と似ているか。
文化大革命後は、改革開放は必要であり、誰からも支持された。しかし、現在、改革開放をさらに進めなければならないという考えと、革命路線を重視しなければならないという考えが交錯しており、その意味では、習近平のかじ取りは鄧小平より困難ではないか。
革命思想の問題はいつも扱いが困難であり、80年代もブルジョワ自由化反対という形で存在していた。経済成長のなかでの毛思想の再評価は容易でない。
習近平は大様な態度であり、この困難な状況を乗り切るのに向いているようにも見えるが、方針を明確にせよということが中国で盛んに言われている。習近平に向けられているのかもしれない。
習近平の「革命の30年と改革開放の30年を統合しなければならない」という発言は興味深い。「毛思想がなければ天下は大乱」とも言っている。
習近平政権の政治体制改革は大変だ。今回の三中全会でもどうしようと言うのかはっきりしない。
整風もしきりに叫んでいる。
大衆路線の重視も強調しているが、進展していないので、会議を開いて発破をかけている。
腐敗取り締まりの強化は一定程度すすんでいる。「虎」もたたいており、習近平の最大のセールスポイントだろう。
政治的には習近平は左からの圧力を受けているが、高度経済成長を維持することが必要であることは明確に認識している。七難を隠すからだ。今回の三中全会にあたって、「経済は右、政治は左」という人がいた。
習近平は「中国の夢」を語る。諸問題はあるが夢があればなんとかなるという未来志向のメッセージである。
しかし、これはナショナリズムにもつながりうる。
習近平政権は困難な国政に取り組むと同時に、国内に対するコントロールを強化している。
言論統制の強化、思想工作・意識形態の強調である。
いわゆる9号文件で示された「7つの不講」など極端なコントロールである。
メディア規制では、25万人の新聞記者に対する革命思想の学習強化を求め、勉強しないものには記者証を出さないという措置を取っている。
ネットでも当局の目から見て不健康な言論を流した者は投獄している。中国版ツィッター「微博」は有力な手段と思われてきたが、当局の取り締まり強化のため死にそうになっているという人もいる。
公安や武装警察に頼らざるをえないのは習近平政権も同じである。今回の三中全会で「国家安全委員会」の設置を決めたが、国内、国外両方のインプリケーションがある。
習近平は、鄧小平、江沢民、胡錦涛の後継者と見られがちであるが、改革開放には待ったをかけることになりかねない革命路線重視の声を無視することはできない。その点では違ったタイプの指導性を求められているのではないか。」
「三中全会に向けて、強い期待感と懸念があった。
期待感は、今後の経済発展のため大胆な改革が決定されることである。懸念は、これまでの高度経済成長の結果格差などの問題が発生し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想など革命を重視しければならないことがどのような形で出てくるかであった。
経済面で中国が直面している問題は次のようなものである。
(成長の鈍化) 2002年9.1% 2007年14.2 2011年9.2 2012年7.8
(構造問題) 資本と労働の投下への依存度が高く、生産性の向上が弱い。
(マクロ・コントロール) 経済成長とともに通貨供給量が増大し、物価が上昇。しかし、金利は上げられない。
(市場経済化) 市場経済化は道半ば。政府の関与が強すぎる。
(金融制度改革) 外資のさらなる導入、金利、為替の自由化が必要。シャドー・バンキング問題。
(土地問題) 地方政府にとっておいしい収入源。村民から絞り上げ。
(税制改革) 「分税制」で潤うのは中央財政。地方の歳入は激減。手直しが必要。
(労働力) 賃金は上昇し、農民工は格差にあえいでいる。
政治・社会面の最大の問題は民主化だが、これは困難であり、実現できない。
政府の権限が強すぎる。非能率である。いわゆる整風が必要。
中央と地方との関係。税制、金融、格差、農民問題などに関わる。
社会不安。市民デモ、農民の反抗、10/28日事件(天安門)、大同での共産党ビル前事件
少数民族問題
特権層・官僚主義の弊。いわゆる太子党や裸官の問題。
5階層論(楊継縄)では、トップの第1階層が1200万人、第2が2500万人。
戸籍問題 都市で働く2.6億人の農民工は搾取されている。
このような諸問題が噴出するので、「革命の重要性を忘れるな」という声が上がって来る。
薄熙来事件がきっかけとなった。
農民は実際冷遇されている。大衆をどう扱うかの問題である。
革命思想に照らせば、農民や労働者は革命の前衛であったはず。
しかし、最近の社会科学院の中国社会の階層研究では労働者は10の階層のうち第8番目、農民は第9番目の階層であり、いつの間にか彼らの地位は革命思想とは逆転している。
三中全会を有名な11期三中全会と比べる人がいる。習近平政権は80年代と似ているか。
文化大革命後は、改革開放は必要であり、誰からも支持された。しかし、現在、改革開放をさらに進めなければならないという考えと、革命路線を重視しなければならないという考えが交錯しており、その意味では、習近平のかじ取りは鄧小平より困難ではないか。
革命思想の問題はいつも扱いが困難であり、80年代もブルジョワ自由化反対という形で存在していた。経済成長のなかでの毛思想の再評価は容易でない。
習近平は大様な態度であり、この困難な状況を乗り切るのに向いているようにも見えるが、方針を明確にせよということが中国で盛んに言われている。習近平に向けられているのかもしれない。
習近平の「革命の30年と改革開放の30年を統合しなければならない」という発言は興味深い。「毛思想がなければ天下は大乱」とも言っている。
習近平政権の政治体制改革は大変だ。今回の三中全会でもどうしようと言うのかはっきりしない。
整風もしきりに叫んでいる。
大衆路線の重視も強調しているが、進展していないので、会議を開いて発破をかけている。
腐敗取り締まりの強化は一定程度すすんでいる。「虎」もたたいており、習近平の最大のセールスポイントだろう。
政治的には習近平は左からの圧力を受けているが、高度経済成長を維持することが必要であることは明確に認識している。七難を隠すからだ。今回の三中全会にあたって、「経済は右、政治は左」という人がいた。
習近平は「中国の夢」を語る。諸問題はあるが夢があればなんとかなるという未来志向のメッセージである。
しかし、これはナショナリズムにもつながりうる。
習近平政権は困難な国政に取り組むと同時に、国内に対するコントロールを強化している。
言論統制の強化、思想工作・意識形態の強調である。
いわゆる9号文件で示された「7つの不講」など極端なコントロールである。
メディア規制では、25万人の新聞記者に対する革命思想の学習強化を求め、勉強しないものには記者証を出さないという措置を取っている。
ネットでも当局の目から見て不健康な言論を流した者は投獄している。中国版ツィッター「微博」は有力な手段と思われてきたが、当局の取り締まり強化のため死にそうになっているという人もいる。
公安や武装警察に頼らざるをえないのは習近平政権も同じである。今回の三中全会で「国家安全委員会」の設置を決めたが、国内、国外両方のインプリケーションがある。
習近平は、鄧小平、江沢民、胡錦涛の後継者と見られがちであるが、改革開放には待ったをかけることになりかねない革命路線重視の声を無視することはできない。その点では違ったタイプの指導性を求められているのではないか。」
2013.11.04
CTBTは未だ発効の目途が立っていないが、CTBT機関準備委員会事務局が中心になって国際的な核実験検証体制の確立に向け着実に作業を進めており、本年2月に北朝鮮が宣言した核実験に際しても、その探知能力を再確認した。また、近年CTBTの国際的監視網を災害対策等人類共通の利益のため、科学的研究等に役立てようとの動きも出てきている。
講演会の開催要領は次のとおりである。
1. 日 時: 2013年11月19日(火) 16時00分から17時30分
2.場 所: 日本国際問題研究所大会議室
(地図 http://www.jiia.or.jp/brief/j-map.php)
〒100-0013 千代田区霞が関3-8-1 虎の門三井ビルディング3階
3. 報告および議題
ラッシーナ・ゼルボ氏 (Dr. Lassina Zerbo)
包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会事務局長
「包括的核実験禁止条約(CTBT)の役割と将来の展望」(仮題)
4.司 会
浅田 正彦
日本軍縮学会会長/京都大学教授/軍縮・不拡散促進センター客員研究員
5.言 語:英語
6.申し込み方法
参加は無料であるが、2013年11月18日(月)17:00 までに次の宛先へ事前登録が必要:disarmament@cpdnp.jp
CTBT講演会
日本国際問題研究所・軍縮・不拡散促進センターが、日本軍縮学会との共催で、2013年8月に包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会事務局長に就任したラッシーナ・ゼルボ(Lassina Zerbo)氏を招いて講演会を開催する。CTBTは未だ発効の目途が立っていないが、CTBT機関準備委員会事務局が中心になって国際的な核実験検証体制の確立に向け着実に作業を進めており、本年2月に北朝鮮が宣言した核実験に際しても、その探知能力を再確認した。また、近年CTBTの国際的監視網を災害対策等人類共通の利益のため、科学的研究等に役立てようとの動きも出てきている。
講演会の開催要領は次のとおりである。
1. 日 時: 2013年11月19日(火) 16時00分から17時30分
2.場 所: 日本国際問題研究所大会議室
(地図 http://www.jiia.or.jp/brief/j-map.php)
〒100-0013 千代田区霞が関3-8-1 虎の門三井ビルディング3階
3. 報告および議題
ラッシーナ・ゼルボ氏 (Dr. Lassina Zerbo)
包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会事務局長
「包括的核実験禁止条約(CTBT)の役割と将来の展望」(仮題)
4.司 会
浅田 正彦
日本軍縮学会会長/京都大学教授/軍縮・不拡散促進センター客員研究員
5.言 語:英語
6.申し込み方法
参加は無料であるが、2013年11月18日(月)17:00 までに次の宛先へ事前登録が必要:disarmament@cpdnp.jp
2013.09.21
IAEA保障措置に関する私の「討論」
3つの角度から見ていく。
第1は、IAEAの査察を受ける各国の能力。人材育成のため協力することは有意義であるが、ただ日本原子力研究開発機構だけで実施するのでなく、日本として関係の諸団体がどのように協力していくかという問題もある。
第2は、査察自体は非常に技術的なことであるが、それを受け入れるか否か、受け入れるとしてもどの程度受け入れるか、政治の影響を受けやすい。
第3は、IAEAの査察を受け入れる各国だけでなく、IAEAの責任・役割も重要な問題である。日本は、兵器への転用はないという結論を得るまで30年かかったとよく言われるが、これだけ長い期間が必要であったのは、限られた対象への査察から、包括保障措置協定、さらには総合保障措置協定へとIAEAの保障措置自体の成長・進化と関係があるのではないか。
イランはよく日本のようになりたいと言う。平和利用を安心してできるようになりたいということであるが、日本がどれほど長い期間にわたって、辛抱強く査察に協力してきたかということに対して、理解が不十分である。イランは1~2年査察に協力すれば十分と思っている。それは違う。
イランの査察受け入れに問題があるのは明らかであるが、IAEAの側にも一定の責任があるのではないか。IAEAは査察しやすい国に対して査察が多くなる。その結果、米国に次いで拠出が多い日本、ドイツへの査察が多くなり、イランや北朝鮮への査察はできないからしない。構造的に、本当に必要な対象に査察が行なえないのではないか。
IAEAの保障措置
グローバル・ガバナンス学会 2013/09/21 駒沢女子大学IAEA保障措置に関する私の「討論」
3つの角度から見ていく。
第1は、IAEAの査察を受ける各国の能力。人材育成のため協力することは有意義であるが、ただ日本原子力研究開発機構だけで実施するのでなく、日本として関係の諸団体がどのように協力していくかという問題もある。
第2は、査察自体は非常に技術的なことであるが、それを受け入れるか否か、受け入れるとしてもどの程度受け入れるか、政治の影響を受けやすい。
第3は、IAEAの査察を受け入れる各国だけでなく、IAEAの責任・役割も重要な問題である。日本は、兵器への転用はないという結論を得るまで30年かかったとよく言われるが、これだけ長い期間が必要であったのは、限られた対象への査察から、包括保障措置協定、さらには総合保障措置協定へとIAEAの保障措置自体の成長・進化と関係があるのではないか。
イランはよく日本のようになりたいと言う。平和利用を安心してできるようになりたいということであるが、日本がどれほど長い期間にわたって、辛抱強く査察に協力してきたかということに対して、理解が不十分である。イランは1~2年査察に協力すれば十分と思っている。それは違う。
イランの査察受け入れに問題があるのは明らかであるが、IAEAの側にも一定の責任があるのではないか。IAEAは査察しやすい国に対して査察が多くなる。その結果、米国に次いで拠出が多い日本、ドイツへの査察が多くなり、イランや北朝鮮への査察はできないからしない。構造的に、本当に必要な対象に査察が行なえないのではないか。
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