その他
2014.01.16
いくつか特徴があると思う。1つ目は、ロッテルダムという欧州の交通の要所を題材とすることにより、核攻撃の被害の甚大さと深刻さを分かりやすく示していることである。世界の大都市に対する核攻撃を想定することは以前からジュネーブやニューヨークについても行なわれ、被害が拡大する状況が同心円を使って図解されている。ジュネーブ郊外の資料館では、この資料は児童にはあまりにも刺激的なので見せていない。
もう1つの点は第1と関係するが、核攻撃で都市が全滅することを示すことにより多数の市民が犠牲となることをほぼ直接的に示せることである。広島と長崎での被爆体験は核兵器の非人道性を物語る証言であり、どのような人工的工夫も表現できないリアルさがあるが、大都市が一瞬の内に破壊されることは、当然のことであるが、証言の範囲を超えており、直接的には示せない。被爆証言と都市の被害について同心円を利用する工夫を結び付ければ、さらに強力な訴えになると思われる。
また、今回の討論会用の資料では、広島や長崎のように航空機から投下された場合だけでなく、テロリストが核兵器を入手してロッテルダムを攻撃する場合のことも想定されている。どれくらい現実的か議論の余地はあろうが、深刻に憂慮している人たちがいることは注目すべきであろう。
ロッテルダムが核攻撃されると
核兵器の危険性を訴え、その廃絶のために積極的な活動を行なっているPAX Christiが1月27日に予定している討論会で、欧州の交通の要所であるロッテルダムが核兵器で攻撃された場合どのような被害が生じるか、また、攻撃を未然に防ぐことはできるかなどをシミュレートした資料を用意しているそうである(その詳細はPAX Christiのホームページで閲覧可能)。いくつか特徴があると思う。1つ目は、ロッテルダムという欧州の交通の要所を題材とすることにより、核攻撃の被害の甚大さと深刻さを分かりやすく示していることである。世界の大都市に対する核攻撃を想定することは以前からジュネーブやニューヨークについても行なわれ、被害が拡大する状況が同心円を使って図解されている。ジュネーブ郊外の資料館では、この資料は児童にはあまりにも刺激的なので見せていない。
もう1つの点は第1と関係するが、核攻撃で都市が全滅することを示すことにより多数の市民が犠牲となることをほぼ直接的に示せることである。広島と長崎での被爆体験は核兵器の非人道性を物語る証言であり、どのような人工的工夫も表現できないリアルさがあるが、大都市が一瞬の内に破壊されることは、当然のことであるが、証言の範囲を超えており、直接的には示せない。被爆証言と都市の被害について同心円を利用する工夫を結び付ければ、さらに強力な訴えになると思われる。
また、今回の討論会用の資料では、広島や長崎のように航空機から投下された場合だけでなく、テロリストが核兵器を入手してロッテルダムを攻撃する場合のことも想定されている。どれくらい現実的か議論の余地はあろうが、深刻に憂慮している人たちがいることは注目すべきであろう。
2014.01.15
IISS側は、かねてから中国国防相の出席を確保したい考えであるが、実現した場合も代理の出席にとどまった場合もあった。今年のシャングリラ対話においては安倍首相に出席してもらいたいと要望している一方、もしそれが実現した場合中国がどのように対応するかも気にしていた。
このフォーラムはシャングリラ対話のシェルパ会合を兼ねると説明されている。首脳会議のシェルパ会合のように本番での議題やさらには議論の内容まで細かく準備するのではないが、数ヵ月後の大規模なシャングリラ対話で焦点となる論点を浮き彫りにする意味がある。
今回のフォーラムの焦点は東シナ海及び南シナ海にあり、当然のことながら中国と各国との対話という性格が強かった。IISS側は中国だけでなく北朝鮮の問題も大いに議論したいという考えであるが、今回のフォーラムでは北朝鮮への言及は散発的に出てきた程度であった。ただし今年が例外なのではなく、いつもそういう傾向のようである。韓国に対してはハイレベルの参加を呼び掛けているが、韓国政府も軍も腰が重いらしい。今次フォーラムには2名が参加していることになっており、うち1名はDr. Chung Min Lee安全保障問題担当大使の肩書を持つYonsei大学教授であるが、発言はなかったはずである。出席していたかどうかも定かでない。
個々の発言は引用しないことになっているので、全体の印象に過ぎないが、中国に関する議論が主であり、内容的にはあまりかみ合わず、発言者は自分の言いたいことを言っていた。アカデミックな議論としてはとても高い評価は与えられないが、しかし、中国の軍人が諸外国の関係者と意見交換する機会はほとんどないだけに、このフォーラムもシャングリラ対話も貴重である。また、形の上では議論はかみ合わないにしても中国からの出席者が各国の発言に注意しておりまた、一定程度それを意識した発言も行っているので、対話には意味があるとも考えられる。このような特徴は昨年のシャングリラ対話もほぼ同様であった。
とくに議論の中心となったのは昨年秋の中国によるADIZの設定であり、海南省の漁業に関する新措置についてもやりとりがあった。これについて中国代表は、内容的に新しいことではないとしきりに強調していた。
なお今年は第一次大戦勃発100周年に当たることから、今日の状況を分析するのに100年前のことが一つの話題となりそうである。
シャングリラ対話のシェルパ会合
1月12日~14日、シンガポールでThe Fullerton Forumが開催された。主催はシャングリラ対話と同じIISS(国際戦略研究所)である。今回のフォーラムに参加したのは50数名で、名簿に記載されている者だけで、中国は6名(筆頭はLi Ji 国防部外事弁公室副主任)、米国は3名(筆頭者Vikram Singh国防省南・南東アジア担当次官補代理)、日本は3名(筆頭は松村統合幕僚副長)であった。これらの国からはさらに随員が数名来ており、それを含めると、実際の参加者はざっと倍になる。IISS側は、かねてから中国国防相の出席を確保したい考えであるが、実現した場合も代理の出席にとどまった場合もあった。今年のシャングリラ対話においては安倍首相に出席してもらいたいと要望している一方、もしそれが実現した場合中国がどのように対応するかも気にしていた。
このフォーラムはシャングリラ対話のシェルパ会合を兼ねると説明されている。首脳会議のシェルパ会合のように本番での議題やさらには議論の内容まで細かく準備するのではないが、数ヵ月後の大規模なシャングリラ対話で焦点となる論点を浮き彫りにする意味がある。
今回のフォーラムの焦点は東シナ海及び南シナ海にあり、当然のことながら中国と各国との対話という性格が強かった。IISS側は中国だけでなく北朝鮮の問題も大いに議論したいという考えであるが、今回のフォーラムでは北朝鮮への言及は散発的に出てきた程度であった。ただし今年が例外なのではなく、いつもそういう傾向のようである。韓国に対してはハイレベルの参加を呼び掛けているが、韓国政府も軍も腰が重いらしい。今次フォーラムには2名が参加していることになっており、うち1名はDr. Chung Min Lee安全保障問題担当大使の肩書を持つYonsei大学教授であるが、発言はなかったはずである。出席していたかどうかも定かでない。
個々の発言は引用しないことになっているので、全体の印象に過ぎないが、中国に関する議論が主であり、内容的にはあまりかみ合わず、発言者は自分の言いたいことを言っていた。アカデミックな議論としてはとても高い評価は与えられないが、しかし、中国の軍人が諸外国の関係者と意見交換する機会はほとんどないだけに、このフォーラムもシャングリラ対話も貴重である。また、形の上では議論はかみ合わないにしても中国からの出席者が各国の発言に注意しておりまた、一定程度それを意識した発言も行っているので、対話には意味があるとも考えられる。このような特徴は昨年のシャングリラ対話もほぼ同様であった。
とくに議論の中心となったのは昨年秋の中国によるADIZの設定であり、海南省の漁業に関する新措置についてもやりとりがあった。これについて中国代表は、内容的に新しいことではないとしきりに強調していた。
なお今年は第一次大戦勃発100周年に当たることから、今日の状況を分析するのに100年前のことが一つの話題となりそうである。
2013.12.14
形式的には、この会議と別に、日本国際問題研究所とMGIMOが毎年学術交流を行っており、今回の日本研究者協会の会議はそれに合わせて開催された。モスクワではいつもそうしているらしい。
ロシア側の出席者の中には、Alexander Panov元駐日大使、Konstantin Sarkisov日本研究者協会名誉会長なども含まれていた。
日本側の出席者は渡邊啓貴東京外国語大学教授、川西重忠桜美林大学教授、石原直紀立命館大学教授、関山健明治大学准教授、それに国際問題研究所から飯島俊郎副所長、小澤治子新潟国際情報大学教授などであった。
安倍政権に対する注目度は高かった。ロシア側からの発言は概して同政権に好意的であり、「日本はこれまで短期間で首相が交代してきたが、今後は安定した政権になる可能性がある」と期待を込めた発言もあった。
中国の台頭が一つの中心的関心事であったのは当然であり、「尖閣諸島問題、また最近の防空識別圏の設定、経済大国化など、日本が中国を脅威と感じることが多くなっている。また、北朝鮮の行動も日本にとって問題である」「日本の安倍政権は民族主義的傾向が強く、憲法改正、自衛隊の軍隊化などを進めようとしている。安倍首相の発言は口先だけでなく、実行を伴っており、十数年ぶりに防衛予算を増額し、尖閣諸島の防衛体制を強化している」「日本は米国との防衛協力を強化し、また、東南アジア諸国とも連携して対中ブロックを形成しようとしている。米国は日本を防衛する義務を負っているが、最近の防空識別圏に関して、中国との関係をあまり悪化させないよう苦慮している。日米間には微妙な立場の相違がある」「今後いかに衝突を回避していくか、またそのために信頼醸成をどのように進めるかが課題である。このような状況はロシアにとっても懸念されることであり、情勢の悪化を防ぐための多国間メカニズムの構築を進めるべきである」などがロシア側の発言の主要点であった。
政治、安全保障に関する議論のなかで、日本のソフトパワー外交にも関心が集まり、クール・ジャパンなど日本は文化的、日本的なことを世界に積極的にアピールしていることを評価する発言が続いた。
また中国の経済成長の影響がある一方、日本経済は力を失っていると見るべきではないという意見も強く、日本は製造業などで依然として世界のトップであること、さらに環境、人権、知る権利などの分野でも積極的に取り組んでいること、製品も多様化し、いわゆるソリューションなどノウハウの輸出も注目されることなどの指摘がロシアの研究者から行われた。ロシアの日本研究のレベルは高い。
今回、日ロ関係の改善についてはほとんど議論する機会はなかったが、会議場の外では率直に意見交換した。今後日本研究者との間で両国関係を改善する方策を議論していくことは有益であろう。
ロシアの日本研究者協会年次会議
ロシアの日本研究者協会第6回年次会議が12月12~13日、モスクワで開催された。同研究会の会長はDmitry Streltsov氏、モスクワ国際関係大学(MGIMO)のHead of Afro-Asian Departmentでもある。形式的には、この会議と別に、日本国際問題研究所とMGIMOが毎年学術交流を行っており、今回の日本研究者協会の会議はそれに合わせて開催された。モスクワではいつもそうしているらしい。
ロシア側の出席者の中には、Alexander Panov元駐日大使、Konstantin Sarkisov日本研究者協会名誉会長なども含まれていた。
日本側の出席者は渡邊啓貴東京外国語大学教授、川西重忠桜美林大学教授、石原直紀立命館大学教授、関山健明治大学准教授、それに国際問題研究所から飯島俊郎副所長、小澤治子新潟国際情報大学教授などであった。
安倍政権に対する注目度は高かった。ロシア側からの発言は概して同政権に好意的であり、「日本はこれまで短期間で首相が交代してきたが、今後は安定した政権になる可能性がある」と期待を込めた発言もあった。
中国の台頭が一つの中心的関心事であったのは当然であり、「尖閣諸島問題、また最近の防空識別圏の設定、経済大国化など、日本が中国を脅威と感じることが多くなっている。また、北朝鮮の行動も日本にとって問題である」「日本の安倍政権は民族主義的傾向が強く、憲法改正、自衛隊の軍隊化などを進めようとしている。安倍首相の発言は口先だけでなく、実行を伴っており、十数年ぶりに防衛予算を増額し、尖閣諸島の防衛体制を強化している」「日本は米国との防衛協力を強化し、また、東南アジア諸国とも連携して対中ブロックを形成しようとしている。米国は日本を防衛する義務を負っているが、最近の防空識別圏に関して、中国との関係をあまり悪化させないよう苦慮している。日米間には微妙な立場の相違がある」「今後いかに衝突を回避していくか、またそのために信頼醸成をどのように進めるかが課題である。このような状況はロシアにとっても懸念されることであり、情勢の悪化を防ぐための多国間メカニズムの構築を進めるべきである」などがロシア側の発言の主要点であった。
政治、安全保障に関する議論のなかで、日本のソフトパワー外交にも関心が集まり、クール・ジャパンなど日本は文化的、日本的なことを世界に積極的にアピールしていることを評価する発言が続いた。
また中国の経済成長の影響がある一方、日本経済は力を失っていると見るべきではないという意見も強く、日本は製造業などで依然として世界のトップであること、さらに環境、人権、知る権利などの分野でも積極的に取り組んでいること、製品も多様化し、いわゆるソリューションなどノウハウの輸出も注目されることなどの指摘がロシアの研究者から行われた。ロシアの日本研究のレベルは高い。
今回、日ロ関係の改善についてはほとんど議論する機会はなかったが、会議場の外では率直に意見交換した。今後日本研究者との間で両国関係を改善する方策を議論していくことは有益であろう。
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