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2014.05.19

中国の土地問題②

現在の土地住宅制度は多くの問題を惹起しており、中国経済は非常に大きな危険にさらされている。

第一に、我々は農民の搾取と、住宅を購入するのに精いっぱいの人たちに対する税金で都市化を進めている。国民党は台湾へ移って以降土地改革を行ない、地主の土地を強制収用し、農民に与えた。農民は後に、土地を売買すること、賃貸に出すことが可能となり、政府は税を徴収した。価格上昇が100%の場合40%、200%なら50%などと税を賦課したが、一定程度農民に残したので、農民は手元に残った資金で企業を立ち上げることができた。台湾には多くの中小企業があるが、こうして形成された土地資本の基礎の上で企業を設立した。また、農民は金があるなら都市で住宅を購入することもできた。

中国の都市には年若い農民が3億人いるが、多くは高等学校(高中)を卒業後直ちに農村から出てきており、農村には帰れない。45歳以上の農民は30年後、40年後には寿命となる。結局、農村の住居は誰も住まなくなり、農村は衰え、消滅する。過去20年間ですでに100万の農村が消滅した。今後20年に、さらに100ないし200万がなくなると見られている。現在都市に滞在している3億人の農民のなかで自己の住居をもっているものはごく少数であり、大部分は工場の寝床、「城中村(都市の中の村)」、地下室、鳩小屋のようなところで暮らしている。今後20年、30年にさらに3億人が都市に流入するだろうが、住むところはない。一方、5年前、あるいは10年前に1平米5千元で購入した住宅が、平米5万元に値上がりしても税は取られない。政府は財を持つ者はそのままにしておいて貧しい人から税を徴収している。

政府はいつまでも土地を売り続けることはできない。都市化はいずれ終る。たとえば、ある都市に対し、中央は30平方キロの土地処分を許可したとする。5年間に、書記や市長は15平方キロを売り出した。次の5年間に次の書記や市長が15平方キロを譲渡した。全部処分したところで、中央はそれ以上の土地処分は許可しないだろう。どうなるか。
企業にとっても深刻な問題がある。50年の使用権を購入して起業したとする。50年後、その企業は貸与手続きを再び行い、一定額を納めなければならない。最初に購入した時は3万元、あるいは5万元であったものは20年もたつと大変値上がりしているであろう。そのとき購入費を負担できなければどうなるか。

土地使用の期限が切れると国有に戻るというのが法律だが、巨大な政治的・社会的危険がある。70年後 本来政府は人民のために奉仕するはずである。住居費が高騰すれば政府は貯蓄から経費を払って賄うべきである。もし、低下しすぎていれば政府は儲けている農民から貯蓄を取り上げればよい。これが農民を保護することになる。現在政府がしていることはその正反対である。価格が高騰していると飢餓売却をする。土地の価格が入札しても目標価格に達しなければ、政府は土地を渡さない。農民の土地は保護するのでなく、略奪している。

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2014.05.18

中国の土地制度の問題点①

中共中央党校国際戦略研究所副所長の周天勇が最近、中国の土地制度と土地売買にまつわる問題を率直に分析し、注目を浴びている。この土地問題は中国の政治・経済・社会に存在する矛盾や問題点を象徴している。要旨を2回に分けて掲載する。

中国の土地には国有と集団所有の2形態が混在している。都市では国有で、農村では集団所有が原則であるが、例外はかなりある。都市の土地は文化大革命の際資本家を追い出して労働者に与えた。文革終了後元の所有者は土地の返還を求めたが、文革中に占拠し始めた人の中には返還要求に応じない者が居るため、土地の権利関係は不明確になっている。

土地の使用権を行政府が売却できることになっているところに問題がある。
土地使用権の売買が始まったのは90年代末であった。このような制度は当初「協議出譲」、これは後に「招拍挂」と呼ばれる制度に改められた。使用権を売却できるのは政府だけであり、いかなる経済体や公司もできない。この制度が腐敗を生む原因になっている。ほとんどすべての不動産をめぐって贈収賄が行われている。幹部を保護するためにも、腐敗を絶滅するためにも政府が土地の使用権を処分する制度を速やかに改革しなければならない。

使用年限についても問題がある。農地の使用権は最初5年だったが、15年、さらに現在は30年になっている。工業用地は20ないし50年である。土地の使用権が満期になると、使用者は土地の使用許可手続きをあらためてしなければならず、契約更改金を納めなければならない。それをしなければ当局は、強制的に取り上げることもできる。

政府は元来無償で土地を貸与した。「協議出譲」制では政府と使用者は一対一で協議した。価格を決定するためであり、書記や市長などと関係がよければ比較的安価に使用権を得ることができた。現在の「招拍挂」制では、使用権は入札にかけられるので、政府は1畝(6.67アール)数百元で入手した土地を30万、50万、100万元で転売しており、500万、600万、はなはだしい場合2千万元に上ることもある。
このようにして得た利益は、2010年~13年、平均3兆元に達し、2013年は4兆1000億元であった。2014年第1四半期は1兆1000億元で、前年同期比40%増である。
ここ数年、土地の使用権許諾からの収入は住宅売却額の半分を占めている。昨年の売却は約10億平米であり、1平米は約7000余元、総額は7~8兆元であった。そのうち土地の使用権が4.1兆元、これに税金を加えると住宅売上の約65%になる。本年、北京市の土地使用権料はますます高騰している。しかし、一部の国有企業はどんなに高くても入手している。今後さらに高騰すると見ているのである。

住宅供給が独占状態にあり、競争がない。低所得者用の住宅(「保障房」と呼ばれる)の建設について多くの地方政府は中央に対し、過去1年で1000万戸建設したと言っているが、虚偽であり、実際にはそんなに多くない。地方にはそんなにお金はない。
商業用の住宅(「商品房」と呼ばれる)については、すべての住宅開発は「房地産公司」が行なうことになっており、個人が土地を確保し、自前で住宅を建設することは許されない。集合住宅も同じことである。

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2014.05.16

安保法制懇の報告ーグレーゾーン

5月15日、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の報告書が提出された。取り上げられている問題は集団的自衛権に限らない。いくつかの論点があるが、報道では今後与党での検討はいわゆるグレーゾーンに関する問題から始められるそうである。
具体的には、「我が国領海で潜没航行する外国潜水艦が退去の要求に応じず、徘徊を継続する場合」(事例5)と「海上保安庁等が速やかに対処することが困難な海域や離島等において、船舶や民間人に対し武装集団が不法行為を行なう場合」(事例6)であり、これらの場合においては従来の憲法解釈や法制度では十分に対応することができないことがあるとの考えに立ち、「わが国が具体的な行動を採ることを可能とする憲法解釈や法制度を考える必要がある」と指摘されている。この表現はかなり慎重な文言になっているが、衣の下の鎧になっていないか。
このような問題については、大きく言って二つの側面から検討を加える必要がある。一つは、現存の関連法令はこれまで政治的対立の影響をあまりにも強く受け、現実の事態に対処できない内容になっていることであり、この観点からは法令を改正したり、整備したりすることが必要になる。
もう一つの側面は、この2つの事例が尖閣諸島に対する中国の無体な主張と行動を想定し、報告書が指摘している「わが国が具体的な行動を採ることを可能とする憲法解釈や法制度を考える必要がある」とは自衛隊の行動を想定しているかである。
これは率直に言って大きな意味を持つ。事例5や6のようなことが日本の安全にとって問題であることに異論はないであろうが、そうだからと言って自衛隊が対処することは危険極まりない。中国側は、日本が先に軍事行動を起こすことを手ぐすね引いて待っている可能性がある。もちろん中国と言っても一枚岩でなく、そのような強硬論もあれば、あくまで話し合いで解決すべきだという意見もあろうが、日本が先に軍事行動を起こすのを待つということを方針としていることは当然ありうる。
与党は今後、安保法制懇がいう「具体的な行動」を検討するのであろうが、このことを軽視してはならない。中国側の行動は事例5のように軍事行動の一環であっても、日本への攻撃でなく、日本の秩序や主張の無視で止まっている。分かりやすく言えば、中国は嫌がらせをしているのであり、日本はそれに相応した対応をするべきであり、相手が、こちらの軍事行動を誘発しようと挑発してきてもそれに乗ってはならない。嫌がらせや、挑発に乗ってこちらから軍事行動を起こすと、世界の世論は中国に就くであろう。米国は安保条約を適用できなくなるのではないか。
冷戦時、米ソ両国軍はおたがいにすさまじい嫌がらせを行なった。しかし、その域から出ることはなく、嫌がらせにふさわしい対処でとどめた。それは過去のことであり、現在の日本の法令でどのような嫌がらせが可能か、これは難問であるが、少なくとも自衛隊が行動するのは愚の骨頂であり、これらの事例においてはあくまで海上保安庁を強化することにより対処すべきである。

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