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2014.07.30

オスプレイの佐賀空港への配備

ThePAGEに7月29に掲載された。

7月22日、政府は明2015年度に陸上自衛隊へ導入予定の垂直離着陸輸送機オスプレイを佐賀空港に配備する計画を明らかにし、武田副防衛相が古川佐賀県知事を訪れ、受け入れを要請しました。また、同副防衛相は米海兵隊オスプレイの佐賀空港利用についても理解を求めました。
オスプレイは固定翼機とヘリコプターの両方の機能を持っているため長い滑走路がなくても離着陸でき、また、航続距離は長く、沖縄から飛び立って1回補給を受ければ朝鮮半島、中国大陸東部、南シナ海をノンストップで往復できる大変便利な輸送機です。一時期米国で事故が数回起こったので安全性について疑問を持たれましたが、その問題もクリアできたようであり、今や米軍では広く使用されており、普天間基地にも配備されています。さる7月20日に札幌で行われた航空ショーに参加するため同基地から飛び立ったオスプレイが横田、岩国基地を経由していったことを覚えている方も多いでしょう。
 米軍のオスプレイの佐賀空港配備問題は普天間基地の移設と関連があります。米国はかなり以前から普天間基地の移設先として佐賀空港が候補地になるという考えを持ち、日本側に非公式に打診していました(屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』沖縄タイムズ 2009年)。日本政府はそれに応じず、普天間基地を名護市辺野古へ移設する方針を変えていませんが、それが実現するまでの間オスプレイを佐賀空港に配備できれば有効なつなぎの策となります。
 陸上自衛隊のオスプレイ導入は離島の防衛体制強化の一環です。陸上自衛隊は2018年度までに約3千人規模の水陸機動団を新設する方針であり、その中核となるのは西部方面普通科連隊(「西普連」約700人)です。米軍の海兵隊がモデルで、隊員は技能・体力に優れ、レンジャーの資格を持つ者も多数含まれています。エンジン付きゴムボートなどを使って厳しい訓練を行なっており、隊長は「海からの上陸は難しく、失敗したら死ぬことを海兵隊から学んだ。それを骨身に染み込ませる訓練でもある」と説明しています(『西日本新聞』7月16日付)。
佐賀空港に配備されたオスプレイは西普連の部隊を短時間に尖閣諸島まで輸送できます。また、北九州には演習場が多数存在します。これは自衛隊にとってのみならず、米軍にとってもオスプレイを佐賀空港に配備するメリットです。佐賀空港は強襲揚陸艦の母港である米軍佐世保基地にも近く、相乗効果は大きいでしょう。
さらに、佐賀空港は朝鮮半島には沖縄より近く、北朝鮮の脅威に備えるためにも便利です。わが国の防衛体制強化のために同空港の重要性は増してきています。
一方、同空港は1998年の開港以来赤字続きであり、自衛隊や米軍の利用が始まれば空港経営にとって強力なテコ入れになるとも考えられています。そもそも佐賀空港は無駄な土木工事の典型とコキおろす人も居たくらいであり、また地盤沈下の問題もあります。他方、中国(上海)とのLCC航空路開設などにより利用客は増えているというデータもあり、滑走路を現在の2千メートルから4千メートルに延長したいという要望もあるなど複雑な面もあります。
 オスプレイの配備実現にとって最大の問題は地元の理解が得られるかであり、佐賀空港建設の際に県と地元漁協が結んだ公害防止協定の付属覚書には、「県は佐賀空港を自衛隊と共用する考えを持っていない」と記されています。この約束によれば佐賀空港にオスプレイを配備するのは困難になりますが、離島や朝鮮半島との関係で防衛体制を強化することは佐賀県にとっても軽視できないことであります。また、オスプレイは紛争だけでなく災害救助にも活躍しており、昨年11月、フィリピンが巨大台風によって大きな被害を受けた際、普天間から米海兵隊のオスプレイがかけつけ、避難民や支援物資の輸送に貢献しました。このような能力を持つオスプレイが身近にいることは、地元の佐賀県のみならず周辺の地域にとっても安心材料となります。
 古川知事は武田副防衛相との会談後の記者会見で、「賛否は全く白紙。これからやり取りは続けていこうと思う。」と述べ、さらに、協定との関係について「(自衛隊との共用が)事前協議の対象になるとも記されており、ありえませんと書いてあるわけではない」との認識を示したと伝えられています。かなり前向きの発言でした。
 古川知事は国の政策に理解があることで知られています。玄海原発の再開問題についても全国で一番早く、「安全性の確認はクリアできた」として再開を容認する姿勢を示した経緯があります。今回の政府からの要請に対しても同知事の対応は早く、前向きでした。県庁内にはすでに「佐賀空港自衛隊使用対策チーム」が新設されています。
 政府はオスプレイの配備決定を急いでいます。今年の秋には沖縄県の知事選挙が行われ、普天間の辺野古移転を容認する仲井真現知事は3選を目指して立候補する構えです。また、今後の日米防衛協力のために新指針(ガイドライン)が今年中に策定される予定です。こうした重要日程を控え、政府は概算要求が示される8月末までに佐賀県の理解を得たい考えです。しかし、決定に至るまでの道は決して平たんでありません。古川知事も、政府の考えるような日程には拘束されないとして楽観論に傾くのを戒めています。
原発と佐賀空港へのオスプレイ配備は別問題です。しかし、結論を得るのを急ぐあまり誠実な対応ができなくなると、政府と佐賀県が地元住民と対立するという、原発と同じ構図の状況に陥る恐れがあります。オスプレイの佐賀空港への配備は政府と佐賀県の姿勢が再度厳しく問われる問題です。

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2014.07.29

ロシア軍による砲撃を示す写真の発表

オランダが中心になって進めているウクライナでの事故調査は親ロシア派の協力が得られず進展していない。現地入りもまだ実現していないようである。一刻も早く事態が打開されることを望むが、米国務省は7月27日、ロシア軍が自国領からウクライナに砲撃をしている証拠だとする衛星写真を公開した。写真は7月20日から26日にかけ撮影されたものだそうで、ロシア領内の砲撃部隊がウクライナ領に向けロケット砲を発射した地上の痕跡とウクライナ領内に着弾した跡が写っている。
マレイシア機の撃墜事件と直接の関係はないが、米国はかねてからロシアに対して親ロシア派を抑制する努力が欠けているとして非難をしており、今回はそれどころか、ロシア軍自身が関与していることを示す証拠としてこれらの写真を発表したのである。ロシアは米欧の非難に対していちおう反論はしているが説得力はないとする見方が多い中で、今回の写真発表はロシアの立場をさらに悪化させる可能性がある。
写真は国際紛争を少なくするのに役立つと思う。今回発表された写真には解説がついているが、それを読んでも素人にはよく分からないところがある。しかし、将来は上空の衛星などから取る写真の精度はどんどん向上していくであろう。そのうち動画が発表されることも考えられる。そうなると格段に分かりやすくなる。
写真ですべてが分かるのでないことはもちろんである。地中、海中のことはまだ見ることはできないし、生物兵器や化学兵器も上空からの写真には映らない。しかし、表面だけのモニターでも、かくれて武力を使おうとする勢力には強い抑止力となるのではないか。
東シナ海や南シナ海なども上空からよく監視を続けてもらいたいし、国連では写真の活用による国際の平和と安定を図ることを奨励する措置を取るのがよいと考える。一部の国ではすでにある程度実行しているようであり、日本も以前から衛星による情報収集に力を入れてきた。衛星による撮影技術を向上させ、素人でも分かる写真や動画を提供してもらいたい。

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2014.07.28

賞味期限切れの食肉と権力闘争

賞味期限切れの食肉を販売していた上海福喜食品について、ネット上で興味ある記事がしきりに転載されている。元は近藤大介氏の2014年7月28日付「北京のランダム・ウォーカー」『現代ビジネス』らしい。確認しなければならないことがいくつか含まれているが、つぎの諸点がとくに注目されたのでとりあえず転載させてもらう。
なお、OSIグループ(イリノイ州)のシェルダン・ラビン会長兼最高経営責任者(CEO)は28日、上海で記者会見し、「誠に申し訳ない」と謝罪した(7月28日時事通信)。

○上海福喜食品有限公司は、世界最大の食肉加工グループであるアメリカのOSIグループが上海に作った会社である。上海市の公的書類によれば、1996年4月4日、上海市嘉定区馬陸鎮陳村村陳宝路58号に、21000平方メートルの工場を作った。営業期限は2036年4月3日まで。中国との合弁会社ではなく、この時代には珍しい100%独資会社である。
○当時の上海を牛耳っていたのは「上海閥」の総帥・江沢民元主席である。上海浦東新区が開発される前の1996年に、これほど立地のよい場所に、東京ドームの半分ほどの巨大な工場を、アメリカの独資で作れるというのは、当時の国家主席である江沢民のバックアップがなければ不可能だ。アメリカはこの工場を稼動させたことによって、ケンタッキーやマクドナルドの店舗を中国全土に展開していった。上海福喜は、江沢民時代の米中友好の象徴的工場なのである。
○習近平主席は、「江沢民派の一掃」を狙った権力闘争の真っ只中にある。「汚職幹部追放」の名の下に、江沢民派の大物幹部たちを、次々に血祭りにあげている。薄煕来・重慶市党委書記兼中央政治局委員、周永康・中央政治局常務委員、徐才厚・中央軍事委員会副主席・・・そして、この8月に88歳を迎える江沢民本人にも、お縄が回るのではとささやかれるほどだ。
○中国最大の経済都市である上海は、これまでつねに、中南海の権力闘争の「本丸」のひとつとなってきた。もともとは、江沢民「上海閥」の牙城だった。それを胡錦濤「団派」が、2006年の陳良宇・上海市党委書記追い落としや、2010年の上海万博を機に、ひっくり返そうとした。
○昨年になって、胡錦濤の「団派」を引き継いだ李克強首相が、「上海自由貿易区」を設立して上海利権獲得を狙った。ところが習近平主席は、李克強首相に昨年9月に上海自由貿易区を設立だけさせて、昨年11月の「3中全会」以降、その利権を根こそぎ奪いつつある。いまの上海は、「上海閥」「団派」「太子党」(習近平派)が入り乱れた群雄割拠の戦国時代である。趨勢で言えば、習近平派が「上海閥」と「団派」を駆逐している最中である。
○習近平主席は現在、「アメリカ憎し」の気分でもある。昨年6月にカリフォルニア州の農園で初めてオバマ大統領と米中首脳会談に臨んだ習近平主席は、「新たな大国関係」を提起した。これは簡単に言えば、太平洋の東西を、アメリカと中国が2分して統治しようという考えだ。
ところが、中国が海洋進出すればするほど、日本や東南アジアは中国を警戒して、アメリカのプレゼンスを求める。先月7月9日、10日に北京で開かれた第6回米中戦略・経済対話の際、習近平主席が「中米で新たな大国関係を構築しよう」と再度持論を述べたところ、ケリー米国務長官が、「もうその話は何遍も聞いたが、本当に中国がそうしたいのなら、まず行動で信頼できる国になれ」と突き放した。習近平が国家主席になってからの約1年半で、公の場においてこれほど恥をかかされたことはなかった。私はこの時点で、「近く中国国内のアメリカ企業が狙い打ちされるのではないか」という予感がした。
○現在、中国のマスコミは、習近平政権に恐れおののいている。中国メディアで最大の中国中央テレビの経済チャンネルが、習近平の意向に背いたところ、この6月に、トップ以下幹部が一網打尽にされた。そんな中で上海衛視が、政府からの「指令」もなく、アメリカ企業に対して「1ヵ月の潜入取材」などできるはずもない。

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