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2015.04.29
江沢民は、鄧小平に認められ、上海市長から共産党のトップに抜擢された人物であり有能であったのはもちろんである。この経歴にも暗示されていたのであるが、実際的な人物であり、その点では鄧小平と似ていたのであろう。鄧小平の晩年、天安門事件のトラウマから脱して大胆に改革開放を進めなければならない状況の中で、鄧小平の後を継ぐ最適の人物だった。
江沢民の政治傾向を示すものが「三つの代表」、すなわち、生産力の向上、文化の高揚、広範な人民の利益を重視するという理論である。優先順位に従って並べられているわけではないが、「生産力の向上」をトップにしていたことは意味があったらしい。
江沢民はまさに経済発展を重視していたからこそ共産党の総書記になれたのであるが、それを苦々しく思っている人たちもあった。
2001年7月、江沢民が「七一講話」で「三つの代表」を発表してまもなく、鄧力群ら17人が「江沢民の七一講話はきわめて重大な誤りである」と題する建白書を党中央に提出していたことが最近判明した。同書は「三つの代表」というが、だれを代表しているのか問題だ、「三つの代表」は共産党規約に違反していると批判し、私営企業家の入党を認めたことを例として挙げた。生産力の向上を重視する江沢民としては何ら問題なかったとしても、資本家の最たるものである企業家を、無産階級の利益を擁護する共産党に入党させることはもってのほか、ということであり、共産党理論の原則に立ち返ればもっともな批判であった。
鄧力群は名うての理論家であり、党内左派の代表的人物であった。このような人物が江沢民を批判することは、今から思えばやはりそうだったか、という気がするが、透明性のない中共中央のことであり、当時はそんなことはわからなかった。
現在江沢民は引退して長くなるが、あらためて攻撃の的になるかもしれない状況にある。共産党内の左派から当時そのように見られていたことは現在の党内情勢にも微妙に影響してくるかもしれない。
(短文)江沢民元中共総書記の政治姿勢
江沢民元総書記は、我が国では保守派であり、対日関係で強面の人物として知られている。しかし、これは必ずしも正しくない。とくに保守派として片づけられない面があった。江沢民は、鄧小平に認められ、上海市長から共産党のトップに抜擢された人物であり有能であったのはもちろんである。この経歴にも暗示されていたのであるが、実際的な人物であり、その点では鄧小平と似ていたのであろう。鄧小平の晩年、天安門事件のトラウマから脱して大胆に改革開放を進めなければならない状況の中で、鄧小平の後を継ぐ最適の人物だった。
江沢民の政治傾向を示すものが「三つの代表」、すなわち、生産力の向上、文化の高揚、広範な人民の利益を重視するという理論である。優先順位に従って並べられているわけではないが、「生産力の向上」をトップにしていたことは意味があったらしい。
江沢民はまさに経済発展を重視していたからこそ共産党の総書記になれたのであるが、それを苦々しく思っている人たちもあった。
2001年7月、江沢民が「七一講話」で「三つの代表」を発表してまもなく、鄧力群ら17人が「江沢民の七一講話はきわめて重大な誤りである」と題する建白書を党中央に提出していたことが最近判明した。同書は「三つの代表」というが、だれを代表しているのか問題だ、「三つの代表」は共産党規約に違反していると批判し、私営企業家の入党を認めたことを例として挙げた。生産力の向上を重視する江沢民としては何ら問題なかったとしても、資本家の最たるものである企業家を、無産階級の利益を擁護する共産党に入党させることはもってのほか、ということであり、共産党理論の原則に立ち返ればもっともな批判であった。
鄧力群は名うての理論家であり、党内左派の代表的人物であった。このような人物が江沢民を批判することは、今から思えばやはりそうだったか、という気がするが、透明性のない中共中央のことであり、当時はそんなことはわからなかった。
現在江沢民は引退して長くなるが、あらためて攻撃の的になるかもしれない状況にある。共産党内の左派から当時そのように見られていたことは現在の党内情勢にも微妙に影響してくるかもしれない。
2015.04.28
これまで両国間の防衛協力は旧ガイドラインでアジア太平洋に限られていたが、このような制限は取り払われ、世界のどこでも自衛隊が活動できるという指針に置き換えられた。自衛隊が実際に地球的規模で活動するには、現在準備中の安保関係法制がどのような内容で成立するかにかかっているので、新ガイドラインに改められたからと言って直ちに自衛隊が世界的規模で活動できることになるのではない。
日米の防衛協力ガイドラインは、日本国憲法の制約の下にはあるが、日本の法律のレベルでは非常に大きな意味を持っており、今後制定される安保関係法律は、ガイドラインに従ってと言うのは言い過ぎとしても、それと整合性のあるものになるであろう。
実際にどのような状況になるかを考えてみると、かつてのユーゴやコソボで行われたような作戦が考慮される場合、米国としては、日本の自衛隊も協力してくれないか検討することになろう。日本国がそれに応じるか否かは別問題である。2014年の閣議決定で定められた、したがってまた準備中の法律で定められる集団的自衛権の発動の要件を満たすか、政府は検討することとなる。
また国会の事前承認も必要であるが、果たしてそれが有効に機能するか。これまでの安保関係国会審議を見ていると、事前承認があるから安心とはとても言えない。イデオロギー的理由からの反対を重視すべきだからでなく、民主的な政治過程が有効に機能するか、疑問があるからである。
(短文)日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定
日米両国は防衛協力のためのガイドラインを4月27日に改定した。これまで両国間の防衛協力は旧ガイドラインでアジア太平洋に限られていたが、このような制限は取り払われ、世界のどこでも自衛隊が活動できるという指針に置き換えられた。自衛隊が実際に地球的規模で活動するには、現在準備中の安保関係法制がどのような内容で成立するかにかかっているので、新ガイドラインに改められたからと言って直ちに自衛隊が世界的規模で活動できることになるのではない。
日米の防衛協力ガイドラインは、日本国憲法の制約の下にはあるが、日本の法律のレベルでは非常に大きな意味を持っており、今後制定される安保関係法律は、ガイドラインに従ってと言うのは言い過ぎとしても、それと整合性のあるものになるであろう。
実際にどのような状況になるかを考えてみると、かつてのユーゴやコソボで行われたような作戦が考慮される場合、米国としては、日本の自衛隊も協力してくれないか検討することになろう。日本国がそれに応じるか否かは別問題である。2014年の閣議決定で定められた、したがってまた準備中の法律で定められる集団的自衛権の発動の要件を満たすか、政府は検討することとなる。
また国会の事前承認も必要であるが、果たしてそれが有効に機能するか。これまでの安保関係国会審議を見ていると、事前承認があるから安心とはとても言えない。イデオロギー的理由からの反対を重視すべきだからでなく、民主的な政治過程が有効に機能するか、疑問があるからである。
2015.04.25
しかし、原発へのテロ攻撃の脅威は、首相官邸など政府の中枢への攻撃とともにもっとも深刻な問題の一つであり、従来から特別の対策を講じていたが、今回のような事件が起こるとこれまでの対策は影響を受けるはずである。原発の安全性への影響を口にすること自体憚るべきであるというような、従来型の、事実隠蔽型の対応が繰り返されるとは思いたくないが、正直言って心配である。
そのような考えから、3月14日に本HPにアップした一文を再掲した。
「原発を危険にさらす無人飛行機ドローン
無人飛行機ドローンが原発にとって危険なものとなりつつあるが、日本でそのことが十分伝えられているか疑問がある。
2014年10月、フランスで原発の上空にドローンが侵入する事件が相次いで発生した。昨年12月21日付のThe Independent通信や2月24日付のニューズウィーク誌は、この事件を調べた英国の原子力専門家John Largeがつぎのように説明したと報道している。
○侵入事件は合計で13回あったが、そのうち5回は大西洋海岸からドイツとの国境の間の地域に広範囲に散在している原発において、数時間の間に一斉に起こっており、何らかの意図をもって計画的に行われた。
○この時使われたドローンは民間機だが、テロリストが試験的に使っている恐れは排除できない。事件に使われたドローンはヘリコプター式で、数十キロ飛行可能な強力なエンジンを搭載し、原発を照射する強い光線を発射する機会も積んでいた。カメラも装備していたと推定される。
○この他、パリでも正体不明のドローンが飛行しているのが目撃されている。また、同時飛行事件に先立って、Belleville-sur-Loireでは3人の男女が、インターネットで入手可能な、比較的簡単で100ユーロくらいのドローンを飛ばそうとして逮捕されたが、政治的意図はないことが判明し釈放された。Flamanvilleではアレーバ社の再処理施設の上空にもドローンが侵入した。
○英国でも電力需要の18%を賄っている16の稼働中原発が危険にさらされている。現存の原発はサイボーグ攻撃を想定していない。2014年中、英国の原子力施設で37件の警備ミスが起きており、抜本的な警備強化と原発の安全性診断を早急に行うよう求めたが、英政府は規制当局the Office for Nuclear Regulationに回しただけで自分たちで真剣に検討しようとしない。
○グリーンピース・フランスの要請で報告書はまとめ提出した。グリーンピースはこの報告書を公表していないが、政府は入手可能である(なお、Large 自身はグリーンピースの支持者でないと説明されている)。
○1月にフランスの原子力安全・規制局、仏防衛省と会う予定である。
○ドローンによるテロ攻撃のシナリオとしては、「まず、ドローンが外部電源を破壊し、次に緊急用ディーゼル発電機を破壊する。冷却電源を失った原子炉は30秒で炉心溶融を始め、放射性核分裂生成物が飛散する」ことが考えられる。また、内部の仲間と連携すれば、ドローンが爆弾を運ぶ必要はない。
日本の原発も同様の危険にさらされているはずである。対策を強化する必要があるのはもちろんであるが、原発の脆弱性にかんがみると完全に防ぐことは可能か、大いに疑問である。
一方、ドローンの性能は急速に向上しており、今や高度1万フィート(約3千メートル)を飛行できるもの、映画ジュラシック・パークに出てくる翼竜ほど大きいものも出現している。コンピュータ制御も行われている。
ドローンに対する需要は急増しており、日本政府はその普及に向けた特区を設ける検討を進めている。また、早急に強い規制を導入する必要性も認識されている。これら、比較的技術的な面では日本はよく対策を講じるであろう。
しかし、問題はドローンを使用したテロ攻撃である。わずかな間違いも許されない原発においては違法に侵入してくるドローンは即座に撃ち落さなければならないが、それは可能か。有効な対策はほかにあるか。今後、従来に増してドローンの危険性に注意していく必要がある。
なお、前述のニューズウィーク誌は、現状では、フランスのほとんどの原発はドローンを利用した攻撃に耐えられないので、閉鎖されるべきだと述べている。これは常識的には極論であろうが、問題意識の高さを表している。」
ドローンの首相官邸への侵入と原発の安全性
首相官邸の屋上に無人小型飛行機ドローンが侵入、着陸した事件で、今、日本は大騒ぎになっている。従来の警備体制の盲点が突かれたこと、ドローンの取得、運用が野放しになっているので早急な対応が必要なこと、米国でも類似の事件が起こっていることなど検討すべき問題は多々あり、すでに対策が講じられているようであるが、原発の安全性が著しく損なわれる恐れがあることについてはどのような分析が行なわれ、対策が講じられているのか見えてこない。しかし、原発へのテロ攻撃の脅威は、首相官邸など政府の中枢への攻撃とともにもっとも深刻な問題の一つであり、従来から特別の対策を講じていたが、今回のような事件が起こるとこれまでの対策は影響を受けるはずである。原発の安全性への影響を口にすること自体憚るべきであるというような、従来型の、事実隠蔽型の対応が繰り返されるとは思いたくないが、正直言って心配である。
そのような考えから、3月14日に本HPにアップした一文を再掲した。
「原発を危険にさらす無人飛行機ドローン
無人飛行機ドローンが原発にとって危険なものとなりつつあるが、日本でそのことが十分伝えられているか疑問がある。
2014年10月、フランスで原発の上空にドローンが侵入する事件が相次いで発生した。昨年12月21日付のThe Independent通信や2月24日付のニューズウィーク誌は、この事件を調べた英国の原子力専門家John Largeがつぎのように説明したと報道している。
○侵入事件は合計で13回あったが、そのうち5回は大西洋海岸からドイツとの国境の間の地域に広範囲に散在している原発において、数時間の間に一斉に起こっており、何らかの意図をもって計画的に行われた。
○この時使われたドローンは民間機だが、テロリストが試験的に使っている恐れは排除できない。事件に使われたドローンはヘリコプター式で、数十キロ飛行可能な強力なエンジンを搭載し、原発を照射する強い光線を発射する機会も積んでいた。カメラも装備していたと推定される。
○この他、パリでも正体不明のドローンが飛行しているのが目撃されている。また、同時飛行事件に先立って、Belleville-sur-Loireでは3人の男女が、インターネットで入手可能な、比較的簡単で100ユーロくらいのドローンを飛ばそうとして逮捕されたが、政治的意図はないことが判明し釈放された。Flamanvilleではアレーバ社の再処理施設の上空にもドローンが侵入した。
○英国でも電力需要の18%を賄っている16の稼働中原発が危険にさらされている。現存の原発はサイボーグ攻撃を想定していない。2014年中、英国の原子力施設で37件の警備ミスが起きており、抜本的な警備強化と原発の安全性診断を早急に行うよう求めたが、英政府は規制当局the Office for Nuclear Regulationに回しただけで自分たちで真剣に検討しようとしない。
○グリーンピース・フランスの要請で報告書はまとめ提出した。グリーンピースはこの報告書を公表していないが、政府は入手可能である(なお、Large 自身はグリーンピースの支持者でないと説明されている)。
○1月にフランスの原子力安全・規制局、仏防衛省と会う予定である。
○ドローンによるテロ攻撃のシナリオとしては、「まず、ドローンが外部電源を破壊し、次に緊急用ディーゼル発電機を破壊する。冷却電源を失った原子炉は30秒で炉心溶融を始め、放射性核分裂生成物が飛散する」ことが考えられる。また、内部の仲間と連携すれば、ドローンが爆弾を運ぶ必要はない。
日本の原発も同様の危険にさらされているはずである。対策を強化する必要があるのはもちろんであるが、原発の脆弱性にかんがみると完全に防ぐことは可能か、大いに疑問である。
一方、ドローンの性能は急速に向上しており、今や高度1万フィート(約3千メートル)を飛行できるもの、映画ジュラシック・パークに出てくる翼竜ほど大きいものも出現している。コンピュータ制御も行われている。
ドローンに対する需要は急増しており、日本政府はその普及に向けた特区を設ける検討を進めている。また、早急に強い規制を導入する必要性も認識されている。これら、比較的技術的な面では日本はよく対策を講じるであろう。
しかし、問題はドローンを使用したテロ攻撃である。わずかな間違いも許されない原発においては違法に侵入してくるドローンは即座に撃ち落さなければならないが、それは可能か。有効な対策はほかにあるか。今後、従来に増してドローンの危険性に注意していく必要がある。
なお、前述のニューズウィーク誌は、現状では、フランスのほとんどの原発はドローンを利用した攻撃に耐えられないので、閉鎖されるべきだと述べている。これは常識的には極論であろうが、問題意識の高さを表している。」
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