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2016.06.15
しかし、強い言論統制を統治の主要手段とする習近平主席は、これまでの中央宣伝部のあり方が不満であり、2014年2月、その上部機構として「中央インターネット安全情報化指導小組(グループ)」を設置してみずからその主任に就任し、言論統制をいっそう強化するための指令を発出してきた。
しかし、中央宣伝部は中国共産党の伝統ある機関であり、この指導小組の指図を受けることを快く思わないだろう。また、そのような官僚機構どうしの勢力争いは別としても、経済大国となった中国においてどのような言論統制が望ましいか、様々な意見があるのは当然だ。そのため、習近平(およびその側近)と中央宣伝部との間で一定の緊張関係が生じていた可能性がある。
米国に拠点がある『多維新聞』6月11日付は、中央規律検査委員会の巡視隊が中央宣伝部に対して行った検査報告について報道・論評している。同委員会は反腐敗運動の総本山であり、習近平政権のもう一つの統治手段だ。表向きは、中央宣伝部内部の腐敗にメスを入れたということだが、その実、習近平は言論統制を厳しく行うために中央宣伝部の腕をねじ上げた可能性がある。
同新聞の記事は「中央宣伝部に問題意識と政治的覚悟があったなら中央規律検査委員会の巡視隊が来たことがどういう結果になるか予感できたはずだ」という興味深い書き出しで始まっている。要するに、中央宣伝部の認識が甘かったと言っているのだ。
そのほか、『多維新聞』は、調査結果として発表された中に宣伝部長の篇累牘に対する批判、幹部の認識の低さ、中央と地方のかい離、宣伝部の大衆路線の弱さ(「低級紅」つまり、大衆を重視していないこと)、共産党への忠誠の薄弱さ、官僚主義の弊害、「中国の夢」の宣伝の不十分さなどが含まれていたことを指摘している。
(短文)中国共産党中央宣伝部に対する内部批判
中国共産党中央宣伝部は、中国のイメージを良好に保つため各種報道を統制する機関である。しかし、強い言論統制を統治の主要手段とする習近平主席は、これまでの中央宣伝部のあり方が不満であり、2014年2月、その上部機構として「中央インターネット安全情報化指導小組(グループ)」を設置してみずからその主任に就任し、言論統制をいっそう強化するための指令を発出してきた。
しかし、中央宣伝部は中国共産党の伝統ある機関であり、この指導小組の指図を受けることを快く思わないだろう。また、そのような官僚機構どうしの勢力争いは別としても、経済大国となった中国においてどのような言論統制が望ましいか、様々な意見があるのは当然だ。そのため、習近平(およびその側近)と中央宣伝部との間で一定の緊張関係が生じていた可能性がある。
米国に拠点がある『多維新聞』6月11日付は、中央規律検査委員会の巡視隊が中央宣伝部に対して行った検査報告について報道・論評している。同委員会は反腐敗運動の総本山であり、習近平政権のもう一つの統治手段だ。表向きは、中央宣伝部内部の腐敗にメスを入れたということだが、その実、習近平は言論統制を厳しく行うために中央宣伝部の腕をねじ上げた可能性がある。
同新聞の記事は「中央宣伝部に問題意識と政治的覚悟があったなら中央規律検査委員会の巡視隊が来たことがどういう結果になるか予感できたはずだ」という興味深い書き出しで始まっている。要するに、中央宣伝部の認識が甘かったと言っているのだ。
そのほか、『多維新聞』は、調査結果として発表された中に宣伝部長の篇累牘に対する批判、幹部の認識の低さ、中央と地方のかい離、宣伝部の大衆路線の弱さ(「低級紅」つまり、大衆を重視していないこと)、共産党への忠誠の薄弱さ、官僚主義の弊害、「中国の夢」の宣伝の不十分さなどが含まれていたことを指摘している。
2016.06.13
中ロ両国が連携して行動を起こした可能性はあり、ロシアは中国から依頼されたのかもしれないが、ロシアの艦船がこの海域で行動するのは稀であり、今回このような航行をした意図については時間をかけて見定めていく必要がある。
中国の意図は比較的明確だ。中国は南シナ海問題で米国と対立を深めており、米国が日本や東南アジア諸国などと連帯を強化していることに加え、最近、G7首脳会議などで日本や米国が南シナ海問題を積極的に取り上げたこと、アジア安全保障会議で米国に厳しい姿勢を見せられたことなどから中国軍としては不満を募らせていたと思う。
その表れが、7日に東シナ海で起こった中国の戦闘機2機による米国のRC-135偵察機への異常接近や、尖閣諸島付近の日本の接続水域への中国海軍の艦船による侵入であった。
尖閣諸島に対して中国はこれまで日本の領海内にも侵入を繰り返してきたが、海軍の艦艇による行動は初めてだ。中国側の不満の強さを表しており、中国としては、軍事力の強さを強調することにより、日本や米国に対してさらなる協力・協同をけん制しようとしたのだろう。
しかるに、東シナ海と南シナ海は台湾の南と北に位置し、別々の海域なので南シナ海で起こったことを尖閣諸島などと結び付けるべきでないと思われるかもしれないが、実は、中国の認識においてはこれら二つの海域と台湾は密接に関連しあっており、その認識に立って「古来中国の領土だ」と主張している。
一方、中国以外の国は、日本を含め、中国の主張には根拠がないどころか、中国がなぜそのように無体な主張をするのか理解に苦しんでいる。
米国も南シナ海については独自の分析に基づき、やはり中国の主張には根拠がないという結論を導いたことがある。東シナ海と台湾についてはそのような調査分析を行っていないようだ。
このように主張が対立する場合にどのような方法で解決を図るかは重要な問題だが、それは別の機会に論じるとして、中国が乏しい根拠であるにもかかわらず、自国の権利を主張するのは「台湾統一」という国家的目標を実現しなければならないからだ。台湾統一は中国にとって、すなわち共産党政権にとって国民党との勝利を最終的に確定するものであり、それが実現しない限り共産党政権の、中国を統治する正統性は画竜点睛を欠くわけだ。
また、中国にとって日本軍国主義を打ち破り、それが保有していた島を取り戻すことも等しく重要だ。
南シナ海の島嶼と尖閣諸島は日本軍国主義から取り戻すものであり(日本が領有していた時南沙諸島は「新南諸島」と呼ばれていた)、台湾については、さらに国民党打倒という意味が重なるわけだ。
つまり、中国による台湾や尖閣諸島や南シナ海に対する権利主張は日本軍国主義から領土を取り戻し、かつ、国民党政権を打倒するという二重の意味があるのだ。中国がこれらの島に対して領有権を主張し、しかも、「核心的利益」、つまり中国の主権が及ぶ島、あるいは海域であり、絶対に譲れないと主張している背景である。中国にとって、歴史的にどのような状況にあったか、中国大陸を統治した政権によって統治されたことがあったか否かという歴史的客観性の問題は二の次なのだろう。
台湾は1683年以降清朝によって統治されていたにすぎず、それ以前は鄭成功が統治していた。これは22年という短期間であり、それ以前はオランダの支配下にあった。
さらに清朝が統治していたのは台湾の西半分であり、東半分は最北端の一地方を除いて統治しておらず、清朝政府はこの統治外の地域の住民を「番」と呼び、漢人がその地域へ入ることを厳禁するなど、統治下の地域と外の地域を厳格に区別していた。
しかし、中国はこのような歴史的事実を無視することにした。このような中国の考えを法的に定めたのが1992年制定の中国領海法だ。それ以来、中国は尖閣諸島も、南シナ海も、台湾も一つの舞台で見ており、南シナ海での不満は尖閣諸島にも、台湾にも向かう可能性がある。
中国は8日、フィリピンによる南シナ海問題に関する常設仲裁裁判所への提訴を取り下げるよう要求するとの声明を行なった。常設裁判の結論は近日中にも発表されると見られているので、中国としては中国への理解を示しているドゥテルテ次期大統領に急ぎメッセージを送ったわけだが、中国が米国による国際的連帯強化の動きに神経をとがらせていることの証左でもある。
尖閣諸島が日中関係の中でどのような意味合いがあるかはもちろん重要なことだが、フィリピンによる仲裁裁判の結果公表が尖閣諸島にもたらす意味合いも注目される。
尖閣諸島接続水域への中国・ロシア船の侵入と中国の無体な主張
ロシアの艦船(駆逐艦および補給艦など3隻)が尖閣諸島の久場島と大正島の間の接続水域に入り北に航行したのが8日の夜10時前、中国海軍のフリゲート艦が久場島の北東の接続水域に侵入したのが翌9日の未明で、接続水域を離れたのが午前3時10分頃だった。中ロ両国が連携して行動を起こした可能性はあり、ロシアは中国から依頼されたのかもしれないが、ロシアの艦船がこの海域で行動するのは稀であり、今回このような航行をした意図については時間をかけて見定めていく必要がある。
中国の意図は比較的明確だ。中国は南シナ海問題で米国と対立を深めており、米国が日本や東南アジア諸国などと連帯を強化していることに加え、最近、G7首脳会議などで日本や米国が南シナ海問題を積極的に取り上げたこと、アジア安全保障会議で米国に厳しい姿勢を見せられたことなどから中国軍としては不満を募らせていたと思う。
その表れが、7日に東シナ海で起こった中国の戦闘機2機による米国のRC-135偵察機への異常接近や、尖閣諸島付近の日本の接続水域への中国海軍の艦船による侵入であった。
尖閣諸島に対して中国はこれまで日本の領海内にも侵入を繰り返してきたが、海軍の艦艇による行動は初めてだ。中国側の不満の強さを表しており、中国としては、軍事力の強さを強調することにより、日本や米国に対してさらなる協力・協同をけん制しようとしたのだろう。
しかるに、東シナ海と南シナ海は台湾の南と北に位置し、別々の海域なので南シナ海で起こったことを尖閣諸島などと結び付けるべきでないと思われるかもしれないが、実は、中国の認識においてはこれら二つの海域と台湾は密接に関連しあっており、その認識に立って「古来中国の領土だ」と主張している。
一方、中国以外の国は、日本を含め、中国の主張には根拠がないどころか、中国がなぜそのように無体な主張をするのか理解に苦しんでいる。
米国も南シナ海については独自の分析に基づき、やはり中国の主張には根拠がないという結論を導いたことがある。東シナ海と台湾についてはそのような調査分析を行っていないようだ。
このように主張が対立する場合にどのような方法で解決を図るかは重要な問題だが、それは別の機会に論じるとして、中国が乏しい根拠であるにもかかわらず、自国の権利を主張するのは「台湾統一」という国家的目標を実現しなければならないからだ。台湾統一は中国にとって、すなわち共産党政権にとって国民党との勝利を最終的に確定するものであり、それが実現しない限り共産党政権の、中国を統治する正統性は画竜点睛を欠くわけだ。
また、中国にとって日本軍国主義を打ち破り、それが保有していた島を取り戻すことも等しく重要だ。
南シナ海の島嶼と尖閣諸島は日本軍国主義から取り戻すものであり(日本が領有していた時南沙諸島は「新南諸島」と呼ばれていた)、台湾については、さらに国民党打倒という意味が重なるわけだ。
つまり、中国による台湾や尖閣諸島や南シナ海に対する権利主張は日本軍国主義から領土を取り戻し、かつ、国民党政権を打倒するという二重の意味があるのだ。中国がこれらの島に対して領有権を主張し、しかも、「核心的利益」、つまり中国の主権が及ぶ島、あるいは海域であり、絶対に譲れないと主張している背景である。中国にとって、歴史的にどのような状況にあったか、中国大陸を統治した政権によって統治されたことがあったか否かという歴史的客観性の問題は二の次なのだろう。
台湾は1683年以降清朝によって統治されていたにすぎず、それ以前は鄭成功が統治していた。これは22年という短期間であり、それ以前はオランダの支配下にあった。
さらに清朝が統治していたのは台湾の西半分であり、東半分は最北端の一地方を除いて統治しておらず、清朝政府はこの統治外の地域の住民を「番」と呼び、漢人がその地域へ入ることを厳禁するなど、統治下の地域と外の地域を厳格に区別していた。
しかし、中国はこのような歴史的事実を無視することにした。このような中国の考えを法的に定めたのが1992年制定の中国領海法だ。それ以来、中国は尖閣諸島も、南シナ海も、台湾も一つの舞台で見ており、南シナ海での不満は尖閣諸島にも、台湾にも向かう可能性がある。
中国は8日、フィリピンによる南シナ海問題に関する常設仲裁裁判所への提訴を取り下げるよう要求するとの声明を行なった。常設裁判の結論は近日中にも発表されると見られているので、中国としては中国への理解を示しているドゥテルテ次期大統領に急ぎメッセージを送ったわけだが、中国が米国による国際的連帯強化の動きに神経をとがらせていることの証左でもある。
尖閣諸島が日中関係の中でどのような意味合いがあるかはもちろん重要なことだが、フィリピンによる仲裁裁判の結果公表が尖閣諸島にもたらす意味合いも注目される。
2016.06.08
24日、「蔡英文の正体(起底蔡英文)」と題する論文が新華社傘下の『国際先駆導報』に掲載され、新浪、網易、捜狐などの大手サイトもそれを転載した。新華網も一時転載した(順序は新華網が先だった可能性がある)。
執筆者は台湾との関係の窓口である海峡両岸関係協会の理事、王衛星であり、その内容は、蔡英文が独身であることを理由にしてその行動と政策を論じるという非常識なものだった。それだけでもこの論文の程度の低さが分かるだろうが、王衛星は蔡英文を「女政客」と呼び、独身だから「愛情など情感で引き留められることがない」「家族の制約もない」「子供のケアをする必要もない」「その行動は偏っており、身勝手であり、また極端になる」などと暴言を書き連ねた。
これにはBBCやVOAなど欧米のメディアは敏感に反応し、また、中国のインターネットも王衛生論文は女性蔑視であると厳しく批判して、「これまで読んだ中で最も愚かで人を傷つける文章だ」「むかつく」などと書き込み、王論文は炎上した。
さすがに中国の当局もこの論文を問題視して削除し、翌日にはどのサイトでも見られなくなった。削除を指示したのは習近平主席であったとも言われている。
さる1月、台湾の総統・立法院の選挙で民進党が大勝して以来、中国の台湾政策はどうなるか注目されていた。従来、中国は国民党との関係を重視し、民進党は強く警戒していたが、その方針は裏目に出たからである。
しかし、中国は台湾政策を修正しようとしていないようだ。それどころか、蔡英文新政権に対しハラスメントを強化するようになっている。王衛生のこの論文など最たるものである。
客観的に見れば、中国にとって政策変更が必要な状況が生じているが、そのような場合にどのように対応するか。現政権の柔軟度/非柔軟度が問われていると思う。
(短文)中国の蔡英文新政権に対するハラスメント
5月31日のHPに「台湾の歴史と新政権-教科書問題」を掲載したが、中国の蔡英文新政権に対するハラスメントとしては以下の出来事も省けない。米国に本拠がある『多維新聞』5月25日付などが報道していることだ。24日、「蔡英文の正体(起底蔡英文)」と題する論文が新華社傘下の『国際先駆導報』に掲載され、新浪、網易、捜狐などの大手サイトもそれを転載した。新華網も一時転載した(順序は新華網が先だった可能性がある)。
執筆者は台湾との関係の窓口である海峡両岸関係協会の理事、王衛星であり、その内容は、蔡英文が独身であることを理由にしてその行動と政策を論じるという非常識なものだった。それだけでもこの論文の程度の低さが分かるだろうが、王衛星は蔡英文を「女政客」と呼び、独身だから「愛情など情感で引き留められることがない」「家族の制約もない」「子供のケアをする必要もない」「その行動は偏っており、身勝手であり、また極端になる」などと暴言を書き連ねた。
これにはBBCやVOAなど欧米のメディアは敏感に反応し、また、中国のインターネットも王衛生論文は女性蔑視であると厳しく批判して、「これまで読んだ中で最も愚かで人を傷つける文章だ」「むかつく」などと書き込み、王論文は炎上した。
さすがに中国の当局もこの論文を問題視して削除し、翌日にはどのサイトでも見られなくなった。削除を指示したのは習近平主席であったとも言われている。
さる1月、台湾の総統・立法院の選挙で民進党が大勝して以来、中国の台湾政策はどうなるか注目されていた。従来、中国は国民党との関係を重視し、民進党は強く警戒していたが、その方針は裏目に出たからである。
しかし、中国は台湾政策を修正しようとしていないようだ。それどころか、蔡英文新政権に対しハラスメントを強化するようになっている。王衛生のこの論文など最たるものである。
客観的に見れば、中国にとって政策変更が必要な状況が生じているが、そのような場合にどのように対応するか。現政権の柔軟度/非柔軟度が問われていると思う。
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