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2015.08.10

(短評)70年談話有識者懇談会の報告書‐韓国関係部分の記述には問題がある

 8月6日提出された報告書の中の日韓関係に関する記述には問題がある。
 
 安倍首相は第1回の会合で、議論し検討すべき問題として「20世紀の世界と日本の歩みをどう考えるか。私たちが20世紀の経験から汲むべき教訓は何か」をはじめいくつかのポイントを示した。いずれも非常に大きなテーマであり、半年程度の議論で結論を出すのは困難なのかもしれない。
 
 韓国との最近の関係に関する部分は、他の部分と違って、韓国のみならず日本自身の行動を客観的に観察し、事実に即して議論する姿勢が薄弱であり、筆者の主観的理解をあたかも客観的なこととして描写している。
 一つ例を挙げると、朴槿恵大統領については、「李明博政権下で傷ついた日韓関係の修復に取り組むどころか、政権発足当初から心情に基づいた対日外交を推し進め、歴史認識において日本からの歩みよりがなければ二国間関係を前進させない考えを明確にしている」と記載している。
 しかし、「日本からの歩みよりがなければ二国間関係を前進させない考えを明確にしている」のは事実でないだろう。同大統領は日本の指導者が歴史問題を直視することを求めており、そうでないかぎり首脳会談に応じないという態度であり、それは私もかたくなだと思うが、「日本側からの歩みよりがなければ二国間関係を前進させない」と言っていないし、そのような考えでもない。たとえば、安倍首相が日韓の首脳会談で歴史問題についても話し合おうという態度を表明すれば、朴槿恵大統領は会談に応じるだろう。かりに応じなければ、「日本側は歴史問題を直視している。話し合いを拒否しているのは韓国側だ」と堂々主張できる。
 報告書には金大中大統領に対する積極的な見方が示されているが、同大統領が前向きの姿勢を取れたのは小渕首相が率直に歴史問題を語り、「我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのおわびを述べた」からである。このように物事は両面から見ていくことが重要であるが、朴槿恵大統領の描写についてはこの視点が全く欠けている。
 朴槿恵大統領は、「心情を前面に出し、これまでになく厳しい対日姿勢を持つ」と言うのも皮相的な見方だ。彼女は「心情」で歴史問題を語っているのではない。それは彼女の「信念」だからだ。彼女は原理主義に近いと思うことがあるが、そのような姿勢は彼女の生きざまであり、日本との関係に限ったことでない。たとえば、朴槿恵大統領は盧武鉉大統領についても実に厳しい態度で接したことが彼女の自叙伝に出てくる。そのような姿勢の人物が大統領にふさわしいか議論はありうる。しかし、朴槿恵氏を選んだのは韓国人だ。日本人は、強い信念を持つ朴槿恵大統領を冷静に観察・分析すべきだ。
 懇談会の報告書には、他にも、「韓国人が、日韓基本条約を平然と覆そうと試みる」「いかに日本側が努力し、その時の韓国政府がこれを評価しても、将来の韓国政府が日本側の過去の取組を否定するという歴史が繰り返されるのではないかという指摘が出るのも当然である」「韓国政府が歴史認識問題において「ゴールポスト」を動かしてきた」などの不適切表現がある。
 最後の引用は取り上げるほどのことはない、表現だけの問題かもしれないが、米国でも条約を署名しながら批准しないことがあり、それは米国としての「ゴールポスト」を動かしたのではないか。それと韓国の場合とはどう違うのか明確にできるだろうか。
 総じて、韓国関係の記述は一方的だと思う。

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