平和外交研究所

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2016.10.24

(短評)台湾の脱原発方針決定

 台湾の政府は10月20日、2025年までに原発をゼロにすることを決定した。そのために台湾の電気事業法の改正が必要だが、与党民進党が多数を占める立法院では年内にも可決する可能性が高いそうだ。台湾で脱原発を求める声が強くなったのは福島原発の事故からだ。
 蔡英文総統は脱原発を公約に大統領選を戦ったが、脱原発を実際に実行するのは台湾経済にとって大きな負担となる。台湾だけでないが、経済状況は決してよくない。エネルギーの安定供給が重要であることは日本などと変わらないはずだ。その中での決定であり、反対論は当然強い。
 しかも、蔡英文総統は中国との関係で厳しい世論にさらされている。もっとも、この点で声高に蔡英文総統を批判しているのは中国と、台湾内の新中国派であり、全体の状況は違うかもしれないが、中国との関係は台湾にとって鬼門であり総統として精力を注がなければならないことに変わりはない。
 そのようなときに脱原発という新たな難題を背負い込むわけである。公約とは言え、どうしてそんなことが可能か不思議な気もするが、賢明な判断を果断に下しているようにも思える。ともかく今回の決定は、台湾がどのような国家であるかを知るためにも、また、蔡英文総統の指導力を測るためにも実に興味深い。
 蔡英文総統は政治の観点から論じられることが多いが、経済についても並々ならぬ関心を抱いている。『蔡英文 新時代の台湾へ』という自叙伝は3分の1が経済問題にあてられている。経済といっても大企業ではなく、中小企業を重視しており、女性らしい細やかさで企業や工場を観察し、論じている。蔡英文総統が経済を軽視しているとはとても思えない。。
 
 福島原発事故以来、かなりの年月が経ち、わが国では安全を確保する手立てができているような感じがあるが、肝心のところはあまり変わっていないと思う。とくに、事故は人間のミスで起こることと、地震は、研究が進んでいるが、分からないことがまだ多いことだ。放射能で我々の子孫を幾世代にもわたって苦しめる危険がある原発は完全にやめるべきだという気持ちは拭い去れない。

2016.10.21

習近平の言論統制強化

 習近平政権の言論統制は改革開放以来どの政権よりも強力になっているが、さらに強める傾向にある。国内では従来の統制の中心であった党中央宣伝部のあり方にも不満で、その上にさらに強力な組織を作り、習近平自らその長となって采配を振るっている。習近平よりも先輩格の元老も締め付けている。香港の言論界にも統制強化を及ぼしている。
 習近平は、巨大な国家を動かすには、既存の組織、既存の方法ではどうにもならないので強力な鞭を振るっているのだろう。
 中国は巨大であり、懐は深い。日本では100度で沸点に達しても、中国では1000度くらいかもしれないが、言論統制の強化は中国政治の危うさの反映ではないか。

 このような一文を東洋経済オンラインに寄稿した。「習近平が危ない!「言論統制」がもたらすワナ‐メディアへの締め付けはいつか反動で爆発も」である。

2016.10.18

北朝鮮による5回目の核実験

北朝鮮が9月9日に行った第5回目の核実験の後で共同通信の「識者評論」に寄稿した一文です。

「北朝鮮が今年に入り2回目の核実験を行った。ミサイルは今年だけで既に20発超発射している。いずれも国連安全保障理事会決議に違反する重大な行為だが、今後さらに計6回目となる核実験を行う可能性もあると報じられている。
 北朝鮮のこのような行動は日本など周辺の国にとって危険極まりない。日本の排他的経済水域(EEZ)へ落下したミサイルもあるという。かつては、日本上空を飛び越えて太平洋に向かっていったミサイルもあった。
 安倍晋三首相、オバマ米大統領および韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は今回の核実験を受け、緊急に連絡を取り合い、北朝鮮を「最大限強く非難」した。国連安保理では新しい制裁決議の採択を目指した協議が続いている。
 今年3月に採択された安保理決議は「史上最強」と言われるほど強い内容だったが、全ての関係国が忠実に実行することが前提だった。
 しかし、北朝鮮に対し強い影響力のある中国は今も北朝鮮と取引を続けていると伝えられており、決議の履行には問題がある。最近訪朝した人も北朝鮮は一向に困窮している様子ではないと語っていた。
 新しい決議には、強力な追加制裁とその実効性を担保するメカニズムを盛り込むことが肝要だ。米国は単独でも強い措置を取れる。例えば、北朝鮮と取引する企業を米国で活動できなくする単独制裁が挙げられる。オバマ大統領は北朝鮮に重大な代償を払わせると主張しており、それを裏書きする行為となる。
 並行して、中国が安保理決議を本気で実行することが絶対的に必要だ。今回の核実験後、中国は北朝鮮に抗議したが、口先だけでなく本心から北朝鮮への働き掛けを強めてもらいたい。
 しかし、私はそれでもまだ足りないと思っている。これらの措置では北朝鮮問題の核心に迫ることができないからだ。
 北朝鮮には、国家の安全を確保しなければならないという究極の問題がある。そんな国は他にはまずないだろう。各国から見れば北朝鮮が各国に脅威を与えており、まるで正反対の状況に見えるだろうが、北朝鮮が安全を確保できていないと感じているのは事実だ。
 この問題を解決できるのは、米国だけだ。中国は既に北朝鮮という国を承認している。
 米国はグローバルパワーとして世界各地で多大な犠牲と負担を強いられており、各国の十分な理解と協力が必要だ。だが、北朝鮮の安全保障問題は米国以外、他のどの国にも解決できない。
 米国は中国が真剣に決議を履行すれば北朝鮮の核・ミサイル問題を解決できるとの立場だが、中国が米国に代わって北朝鮮を認めることはできないのは自明の理である。
 北朝鮮の核と弾道ミサイルはいかなる理由でも認められないが、北朝鮮に核兵器を放棄させるには安全保障問題の根本的な解決が不可欠だ。
 米国は嫌がるかもしれないが、真の問題解決には米国が北朝鮮と平和条約交渉を行い、核兵器を放棄させるしかない。日朝平壌宣言の調印から14年が過ぎた。核・ミサイルに加え、拉致の問題を抱える日本も米国を説得するべきだ。」

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