オピニオン
2013.07.31
「日中ガス田問題の解決は寧波にあり
1.「春暁フェース2計画」スタート
中国の国有石油会社が、東シナ海で新たに7カ所のガス田の開発の準備を始めたと、ロイター通信(7月17日)が報じた。7カ所のガス田のうち、2カ所は日中中間線に近いとされ、天然ガスの埋蔵域が日本側に広がっている可能性もある。
翌18日、菅義偉官房長官は(中国の活動に対して)「重大な懸念をもっている。現在、中国側に確認中だが、中国側が一方的に開発を進めるようなことは認められない」と記者会見で述べた。
これに対して、中国網日本語版(チャイナネット)は「東シナ海でのガス田開発は正当だ」と主張した。
さて、日中両国政府は、こじれている尖閣諸島領有権と中間線付近のガス田開発権の問題を分離して、それぞれ妥協解決する方策を模索しているが、双方とも先鋭化する領土ナショナリズムの圧力の前に身動きが出来ない状況が続いている。
採掘準備中の鉱区名について報じられていないが、平北・黄岩ガス田をさし、春暁(日本名;白樺)ガス田開発フェース2の一部」とみなされている。
日本の専門家によれば、写真のガス田は日本が設定した中間線から26km西方に位置し、かなり離れている。さらに、中国側は中間線付近に位置する断橋(楠)についてはあえて同フェース2計画から除外している、と述べた。
(筆者=日中間のわだかまりをなんとか収束させ信頼醸成につなげたいという、中国側からのメッセージであると理解してよいと思われる)
ところで、「春暁天然ガス開発利用プロジェクト」(フェース2)は2012年12月決定され、2014年にスピード生産開始の予定である 。
中国側は、「もっと早く開発着手する予定だったが、中間線を主張する日本とのあつれきのため生産計画が遅れた」と言っている。しかし、真相は、2004年から始まった同計画フェース1の商業生産量は約4千BD(全国比1%未満、原油換算)と少量のまま早期減退し、期待外れだったという理由のためといわれる。
このフェース1計画未達量を補完するために急いでフェース2計画の前倒しになった、と関係者は証言している。
2.ガス不足が深刻な寧波(浙江省)
「春暁天然ガス開発利用プロジェクト」(フェース1と2)は、浙江省・寧波(ニンポー)の陸上受入ターミナルの天然ガス処理施設、鎮海発電所や寧波都市ガス配管網などの付帯施設を含むパッケージ契約であり、国家発展計画委員会の支援のナショナル・プロジェクトである。
寧波・舟山コンビナートは中国東部沿海地区における中心的な地位を占めているので、フェース2のガス安定供給の確保は重要課題である。
ところが、2009年に寒波のため寧波をはじめ東部沿海地区では深刻なガス供給不足が起こり、上海市党委員会などは憂慮した。このため、春暁ガス田開発など近海を含む海洋ガス田開発は早期優先プロジェクトになった。
他方、春暁ガス田開発計画フェース1と2の鉱区付近の油ガス構造は、第三紀層の砂岩堆積が1万㍍の層厚であるものの、商業生産量のうち90%が既に発見済みであるといわれ、条件は必ずしも良くない 。
この結果、フェース1計画は予定の契約満了を待たずに商業生産量は減退傾向を強めているといわれる。
もしフェース2計画の2014年早期スタートが間に合わなければ寧波都市ガス配給計画に支障が出ると懸念される。
3.もっとコマーシャルな柔軟発想で
2008年の日中首脳合意によって、一つは、東シナ海の北部海域では龍井(翌檜)ガス田の南側に共同開発区域を設定した。
二つは、南部の白樺(春暁)については、日本法人が中国法に従い、中間線の中国側にある中国現有のガス田開発に参加することで合意した。
これら二つの合意原則は、「日中戦略的互恵関係」のランドマークであり、中国漁船衝突事件(2010年)と尖閣国有化宣言(2012年)の試練を経てもなお、双方でサステインされている。
同時に、これらの合意内容は、ぎすぎすした日中関係をときほぐし、柔軟で有用なコマーシャルな方向転換を示唆しているので、シミュレーションしてみよう。
まず、原則合意された日中共同開発の区域について、わずか琵琶湖の4倍の面積(約2千700km2)と狭いので、日本側の専門家のほとんどは、ガス埋蔵量の規模からみて対日受取りのコマーシャルな魅力は乏しいと評価している。
一方、中国側はなおこの海底資源に魅力を感じているので、双方の間で認識ギャップがある。従って開発意欲のある中国側のイニシアティブが発揮されれば発展する可能性はある。
さらに考えを広げて、日中が中間線付近の共同開発区域を他の海域にもっと増やしていくオプションも十分考えられる。ガス不足に悩む浙江省や東部沿海地区に対して日本側が援助協力するというアイデアである。
二つは、合意された春暁ガス田開発共同事業の内容について、既にJV(合弁)などの方法がとりざたされているので、日本企業の参加方法を検討する必要がある。
もし過去例を検証すれば、2003年にフェース1計画におけるユノカルやシェルなど外資参加の経験があるので参考になるだろう 。
付言すればさらに、1996年日本輸出入銀行(現在の国際協力銀行)が、平湖ガス・パイプライン敷設事業に融資していた実績もある。
1982年以来、日中両国は渤海湾や珠江口沖における石油開発の分野で協力を行った実績がある。
中国は海洋資源開発の部門で外資参加を熱心に誘致している。
中国政府は早くから「議論を棚上げし、共同開発」(擱置争議、共同開発)を提起している。海底採掘には巨額の資金と高い技術力が必要であり、大きなリスクも存在する。中日両国が一日も早く協力することこそ、賢明な選択だ。(人民中国・日本語版、「釣魚島問題の歴史的由来」禾念、2010年10月号)
東シナ海における日中共同開発事業のポートフォリオを増やすことができれば日中双方の互恵関係は深化するはずである。
4.おわりに
日中双方は、東シナ海のガス田の共同開発やJVを進める方針に変わりない。
半面、東シナ海の海底資源開発を急がねばならない中国(浙江省)の状況にかんがみ、日中中間線付近の境界線問題がこじれれば、中国に資源ナショナリズムの大義を与えかねない。
したがって、日本は春暁ガス田に加え、複数のJV(合弁事業)や共同開発区域を提案する時期がきている。
ところが、現実には、領土ナショナリズムという火炎に資源ナショナリズムのアブラをそそぐように、20世紀の戦争時代と錯覚するような好戦的な論調が日本の月刊誌などでエスカレートしている。
一部の論者は「(前掲の通り)中国側のねらいは、資源の確保に加えて、中間線付近の海域に構造物を造って海軍がそれを守ることで、この海域の実効支配を拡大していくことにあるとみられる」と警告し対中脅威論を煽っている。
前掲のとおり、東シナ海における軍事的な衝突リスクは日中互恵関係のバロメーターでは決してないし、かつ、あってはならない。
まず、日中双方で尖閣領土をめぐる利害を相対化し、領土問題を資源問題と切り離すための努力が求められている。
さらに、日中双方の東アジア周辺諸国、ASEANも含め、東アジアの地域主義(地域共同体)という知的労働も必要だ。
この地域協力の関連で、故森嶋通夫教授は著作『何故日本は没落するのか』(岩波書店、1999年初版)の中で、「東北アジア共同体」は『まず(エネルギー・インフラなど)建設共同体を行うことから始めよ』と提唱した。
早稲田大学元総長の奥島孝康氏は、「アジアの資源開発を共同体で行うこと、即ち、各国の利害が共有できることからはじめ、それを発展させ、経済統合、通貨統合、さらに政治統合、という段階を進んでいけば良い」というEUモデル(欧州石炭鉄鋼共同体)の発想を推奨した。
最後に、まず、東シナ海の日中ガス田共同開発を進めるため、日本側の協力を得て人口200万人超の寧波市民に供給する発電燃料と都市ガス確保問題の解決の貢献策を提案したらどうだろう。
日中関係の大局からみて、これはさほど困難な仕事ではないはずだ。」
日中ガス田開発
渋谷祐エナジー・ジオポリティクス代表取締役発行の「ジオポリ第120号13年7月号」から転載です。大変参考になります。「日中ガス田問題の解決は寧波にあり
1.「春暁フェース2計画」スタート
中国の国有石油会社が、東シナ海で新たに7カ所のガス田の開発の準備を始めたと、ロイター通信(7月17日)が報じた。7カ所のガス田のうち、2カ所は日中中間線に近いとされ、天然ガスの埋蔵域が日本側に広がっている可能性もある。
翌18日、菅義偉官房長官は(中国の活動に対して)「重大な懸念をもっている。現在、中国側に確認中だが、中国側が一方的に開発を進めるようなことは認められない」と記者会見で述べた。
これに対して、中国網日本語版(チャイナネット)は「東シナ海でのガス田開発は正当だ」と主張した。
さて、日中両国政府は、こじれている尖閣諸島領有権と中間線付近のガス田開発権の問題を分離して、それぞれ妥協解決する方策を模索しているが、双方とも先鋭化する領土ナショナリズムの圧力の前に身動きが出来ない状況が続いている。
採掘準備中の鉱区名について報じられていないが、平北・黄岩ガス田をさし、春暁(日本名;白樺)ガス田開発フェース2の一部」とみなされている。
日本の専門家によれば、写真のガス田は日本が設定した中間線から26km西方に位置し、かなり離れている。さらに、中国側は中間線付近に位置する断橋(楠)についてはあえて同フェース2計画から除外している、と述べた。
(筆者=日中間のわだかまりをなんとか収束させ信頼醸成につなげたいという、中国側からのメッセージであると理解してよいと思われる)
ところで、「春暁天然ガス開発利用プロジェクト」(フェース2)は2012年12月決定され、2014年にスピード生産開始の予定である 。
中国側は、「もっと早く開発着手する予定だったが、中間線を主張する日本とのあつれきのため生産計画が遅れた」と言っている。しかし、真相は、2004年から始まった同計画フェース1の商業生産量は約4千BD(全国比1%未満、原油換算)と少量のまま早期減退し、期待外れだったという理由のためといわれる。
このフェース1計画未達量を補完するために急いでフェース2計画の前倒しになった、と関係者は証言している。
2.ガス不足が深刻な寧波(浙江省)
「春暁天然ガス開発利用プロジェクト」(フェース1と2)は、浙江省・寧波(ニンポー)の陸上受入ターミナルの天然ガス処理施設、鎮海発電所や寧波都市ガス配管網などの付帯施設を含むパッケージ契約であり、国家発展計画委員会の支援のナショナル・プロジェクトである。
寧波・舟山コンビナートは中国東部沿海地区における中心的な地位を占めているので、フェース2のガス安定供給の確保は重要課題である。
ところが、2009年に寒波のため寧波をはじめ東部沿海地区では深刻なガス供給不足が起こり、上海市党委員会などは憂慮した。このため、春暁ガス田開発など近海を含む海洋ガス田開発は早期優先プロジェクトになった。
他方、春暁ガス田開発計画フェース1と2の鉱区付近の油ガス構造は、第三紀層の砂岩堆積が1万㍍の層厚であるものの、商業生産量のうち90%が既に発見済みであるといわれ、条件は必ずしも良くない 。
この結果、フェース1計画は予定の契約満了を待たずに商業生産量は減退傾向を強めているといわれる。
もしフェース2計画の2014年早期スタートが間に合わなければ寧波都市ガス配給計画に支障が出ると懸念される。
3.もっとコマーシャルな柔軟発想で
2008年の日中首脳合意によって、一つは、東シナ海の北部海域では龍井(翌檜)ガス田の南側に共同開発区域を設定した。
二つは、南部の白樺(春暁)については、日本法人が中国法に従い、中間線の中国側にある中国現有のガス田開発に参加することで合意した。
これら二つの合意原則は、「日中戦略的互恵関係」のランドマークであり、中国漁船衝突事件(2010年)と尖閣国有化宣言(2012年)の試練を経てもなお、双方でサステインされている。
同時に、これらの合意内容は、ぎすぎすした日中関係をときほぐし、柔軟で有用なコマーシャルな方向転換を示唆しているので、シミュレーションしてみよう。
まず、原則合意された日中共同開発の区域について、わずか琵琶湖の4倍の面積(約2千700km2)と狭いので、日本側の専門家のほとんどは、ガス埋蔵量の規模からみて対日受取りのコマーシャルな魅力は乏しいと評価している。
一方、中国側はなおこの海底資源に魅力を感じているので、双方の間で認識ギャップがある。従って開発意欲のある中国側のイニシアティブが発揮されれば発展する可能性はある。
さらに考えを広げて、日中が中間線付近の共同開発区域を他の海域にもっと増やしていくオプションも十分考えられる。ガス不足に悩む浙江省や東部沿海地区に対して日本側が援助協力するというアイデアである。
二つは、合意された春暁ガス田開発共同事業の内容について、既にJV(合弁)などの方法がとりざたされているので、日本企業の参加方法を検討する必要がある。
もし過去例を検証すれば、2003年にフェース1計画におけるユノカルやシェルなど外資参加の経験があるので参考になるだろう 。
付言すればさらに、1996年日本輸出入銀行(現在の国際協力銀行)が、平湖ガス・パイプライン敷設事業に融資していた実績もある。
1982年以来、日中両国は渤海湾や珠江口沖における石油開発の分野で協力を行った実績がある。
中国は海洋資源開発の部門で外資参加を熱心に誘致している。
中国政府は早くから「議論を棚上げし、共同開発」(擱置争議、共同開発)を提起している。海底採掘には巨額の資金と高い技術力が必要であり、大きなリスクも存在する。中日両国が一日も早く協力することこそ、賢明な選択だ。(人民中国・日本語版、「釣魚島問題の歴史的由来」禾念、2010年10月号)
東シナ海における日中共同開発事業のポートフォリオを増やすことができれば日中双方の互恵関係は深化するはずである。
4.おわりに
日中双方は、東シナ海のガス田の共同開発やJVを進める方針に変わりない。
半面、東シナ海の海底資源開発を急がねばならない中国(浙江省)の状況にかんがみ、日中中間線付近の境界線問題がこじれれば、中国に資源ナショナリズムの大義を与えかねない。
したがって、日本は春暁ガス田に加え、複数のJV(合弁事業)や共同開発区域を提案する時期がきている。
ところが、現実には、領土ナショナリズムという火炎に資源ナショナリズムのアブラをそそぐように、20世紀の戦争時代と錯覚するような好戦的な論調が日本の月刊誌などでエスカレートしている。
一部の論者は「(前掲の通り)中国側のねらいは、資源の確保に加えて、中間線付近の海域に構造物を造って海軍がそれを守ることで、この海域の実効支配を拡大していくことにあるとみられる」と警告し対中脅威論を煽っている。
前掲のとおり、東シナ海における軍事的な衝突リスクは日中互恵関係のバロメーターでは決してないし、かつ、あってはならない。
まず、日中双方で尖閣領土をめぐる利害を相対化し、領土問題を資源問題と切り離すための努力が求められている。
さらに、日中双方の東アジア周辺諸国、ASEANも含め、東アジアの地域主義(地域共同体)という知的労働も必要だ。
この地域協力の関連で、故森嶋通夫教授は著作『何故日本は没落するのか』(岩波書店、1999年初版)の中で、「東北アジア共同体」は『まず(エネルギー・インフラなど)建設共同体を行うことから始めよ』と提唱した。
早稲田大学元総長の奥島孝康氏は、「アジアの資源開発を共同体で行うこと、即ち、各国の利害が共有できることからはじめ、それを発展させ、経済統合、通貨統合、さらに政治統合、という段階を進んでいけば良い」というEUモデル(欧州石炭鉄鋼共同体)の発想を推奨した。
最後に、まず、東シナ海の日中ガス田共同開発を進めるため、日本側の協力を得て人口200万人超の寧波市民に供給する発電燃料と都市ガス確保問題の解決の貢献策を提案したらどうだろう。
日中関係の大局からみて、これはさほど困難な仕事ではないはずだ。」
2013.07.10
2002年にインドとパキスタンの間で緊張が高まり、核戦争に発展する恐れさえ生じたときに、パウエル米国務長官はパキスタン首脳に電話し「あなたも私も核など使えないことはわかっているはずだ」と自重を促し、さらに「1945年8月の後、初めてこんな兵器を使う国になるつもりなのか。もう一度、広島、長崎の写真を見てはどうか。こんなことをするのか、しようと思っているのか」と迫ると、パキスタン側は明確に「ノー」と答えたそうである。その後、パウエル長官からインド側への働きかけでも同様な反応であり、こうした説得の結果、危機は去ったというのがパウエル氏の証言である。
パウエル氏は、かねて核兵器は不必要との考えを示しており、今回のインタビューでその理由を詳しく問うと「極めてむごい兵器だからだ」と明言し、「まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えたいとは決して思わない。使わないのであれば基本的には無用だ」と強調したそうである。
パウエル氏の発言が強烈なインパクトとなって響いてくる最大の理由は、核兵器の非人道性をズバリと指摘していることであり、これほど簡明に本質をついている証言はめずらしい。私は初めて聞いた。広島と長崎の被爆者が懸命に語り続けてきたことを、パウエル氏は違った立場からであるが、やはり直視していることがよく伝わってくる。
次に印象的なのは、核兵器は使えないと明言していることであり、このようなことは核兵器が非人道的であることを本当に理解していればこそ言えることである。
第三に、米国のトップレベルの軍人あるいは指導者から核兵器の非人道性を率直に認める発言を聞くことは皆無であるだけに、パウエル氏の発言は貴重であり、重みがある。パウエル氏の発言は今後の核廃絶運動においても長く記憶されるであろう。
パウエル元国務長官の核否定発言
7月10日付の朝日新聞に掲載されている、コリン・パウエル元米国務長官のインタビュー記事はすばらしい。インタビューをした記者の一人が核問題に造詣の深い吉田文彦氏だからこそ書けたものだと思われる。2002年にインドとパキスタンの間で緊張が高まり、核戦争に発展する恐れさえ生じたときに、パウエル米国務長官はパキスタン首脳に電話し「あなたも私も核など使えないことはわかっているはずだ」と自重を促し、さらに「1945年8月の後、初めてこんな兵器を使う国になるつもりなのか。もう一度、広島、長崎の写真を見てはどうか。こんなことをするのか、しようと思っているのか」と迫ると、パキスタン側は明確に「ノー」と答えたそうである。その後、パウエル長官からインド側への働きかけでも同様な反応であり、こうした説得の結果、危機は去ったというのがパウエル氏の証言である。
パウエル氏は、かねて核兵器は不必要との考えを示しており、今回のインタビューでその理由を詳しく問うと「極めてむごい兵器だからだ」と明言し、「まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えたいとは決して思わない。使わないのであれば基本的には無用だ」と強調したそうである。
パウエル氏の発言が強烈なインパクトとなって響いてくる最大の理由は、核兵器の非人道性をズバリと指摘していることであり、これほど簡明に本質をついている証言はめずらしい。私は初めて聞いた。広島と長崎の被爆者が懸命に語り続けてきたことを、パウエル氏は違った立場からであるが、やはり直視していることがよく伝わってくる。
次に印象的なのは、核兵器は使えないと明言していることであり、このようなことは核兵器が非人道的であることを本当に理解していればこそ言えることである。
第三に、米国のトップレベルの軍人あるいは指導者から核兵器の非人道性を率直に認める発言を聞くことは皆無であるだけに、パウエル氏の発言は貴重であり、重みがある。パウエル氏の発言は今後の核廃絶運動においても長く記憶されるであろう。
2013.06.29
原文は、http://facta.co.jp/article/201307040.html
竹島に関する太政官決定
竹島は、サンフランシスコ平和条約で日本に帰属していることが明確になっているが、歴史的には注意を払う必要があり、「竹島は日本の領土でない」とした太政官決定(今日の閣議決定以上に重要)が明治10年(1877年)に発出されている。このことを外務省は無視すべきでないと論じる一文をFACTA誌へ寄稿した。原文は、http://facta.co.jp/article/201307040.html
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